劇場公開日 1995年10月10日

「文句無しの傑作! 潜水艦ものに外れ無しと良くいわれますが、本作は本物の傑作です」クリムゾン・タイド あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0文句無しの傑作! 潜水艦ものに外れ無しと良くいわれますが、本作は本物の傑作です

2020年9月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

重層化したテーマがミルフィーユのように幾重にも積み重ねられており見応え十分

艦長の指揮権剥奪はあの名作のケイン号の反乱をベースにしています

艦長を白人、副長を黒人、艦名は南部の人種差別の強いアラバマに設定して、人種対立の緊張感を重奏音にしています
白馬が黒毛で産まれてくる話は際どい
電気棒を尻に突っ込めば言うことを何でもきくと白人の艦長がニヤリと笑って黒人の副長を侮辱する台詞まであってヒヤヒヤします

しかし人種対立はあくまで水面下です
黒人でも艦長につく部下もいれば、白人でも副長につく部下もいます

メインはトップとナンバー2の在り方です
叩き上げとエリートの対立、ベテランと若手の対立でもあります
それをジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンという分かり易い配役で表現されています

本作は潜水艦ものですから冒頭と終盤を除けば、密閉された狭い戦略原潜艦内の密室劇です

地方の小さな支店、営業所とかでナンバー2の役職として働いたことのある人もいると思います
そこはまるで本作の潜水艦のようなものです
本社からは遠く離れ、支店長なり営業所長なりが君臨して全ての判断を下すところです
そんなところでもトラブルは起こります
それもよりによってというタイミングに
そしてそのトラブル対応中でいっぱいいっぱいの時に、さらに大きな別のトラブルが起こるものです

ナンバー2あるあるのオンパレードのシーンがてんこ盛りで、辛かったその頃にフラッシュバックして胃が痛くなりました

そしてまた、支店長や営業所長だって、その判断が正しいのか自問自答しながら、孤独に自分なりの判断を下しているのです

戦略原潜での核戦争一歩手前という、人類の存亡がかかっている物語でありながら、ごく普通の人間や、どこにでもある会社の物語としても共感を持つことができる、普遍的なテーマに通ずるようになっている脚本が秀逸な出来映えです

軍事オタクの目で観てても、白けてしまうようなおかしな部分は皆無で、その面でも大満足
特撮のレベルも高く、潜水艦の巨大さ重々しさ、深海の暗く重い海水の圧力の表現も見事でした
潜水艦のセットも実物感が素晴らしい
その内部を照らす巧みな色彩の照明、緊張感を盛り上げるハンス・ジマーの音楽
どれもこれも圧倒的な出来映え

ハリウッドの底力恐るべしと思いました

あき240