「とあるwiseguyの賢い生き方。これはもう一周まわって喜劇だわ…😅」グッドフェローズ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
とあるwiseguyの賢い生き方。これはもう一周まわって喜劇だわ…😅
実在したニューヨーク・マフィア、ヘンリー・ヒルの半生を映画化。
裏社会を生きるヘンリーが如何にして成り上がり、そして没落していったのを描いたギャング映画。
監督/脚本は『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』の、レジェンド監督マーティン・スコセッシ。
ヘンリーの兄貴分であるマフィア、ジミー・コンウェイを演じたのは『ゴッドファーザー PartⅡ』『タクシードライバー』の、スコセッシ作品に数多く出演するレジェンド名優ロバート・デ・ニーロ。
ジミーと一緒にルフトハンザ航空現金強奪事件を起こしたならず者、スタックスを演じたのは『星の王子 ニューヨークへ行く』『ドゥ・ザ・ライト・シング』の、名優サミュエル・L・ジャクソン。
また、無名時代のヴィンセント・ギャロがエキストラとして参加している。多分ジミーの仲間のマフィアの1人だと思う。
👑受賞歴👑
第63回 アカデミー賞…ヘンリーの相棒であるトミーを演じたジョー・ペシが助演男優賞を受賞!
第47回 ヴェネツィア国際映画祭…銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞!
第16回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…作品賞と撮影賞の2冠を達成❗️
第56回 ニューヨーク映画批評家協会賞…作品賞を受賞!
第44回 英国アカデミー賞…作品賞・監督賞・脚色賞の3冠を達成‼️
『ゴッドファーザー』などの華やかなマフィアの世界とは違う、末端の構成員たちの姿を描いた実録系の映画。
ヘンリー・ヒル本人のインタビューに曰く、「99%真実」の物語らしい。
本作の特徴として、綺麗な起承転結の四幕に分かれていることが挙げられる。
まずは第一幕として、ヘンリー少年がマフィアとして認められるまでを描く。
この第一幕目に描かれるあれやこれやが、最終的に全て伏線として活きてくる構成は天晴れ☀️
最後まで観ると、マフィアの大幹部ポーリーが何故電話を嫌ったのか、何故身内すらも信用しなかったのかがわかる。
そして、子供の頃は仲間を裏切らなかったヘンリーが…、という円環構造も見事の一言。
第二幕では、成長しマフィアとして成功を収めたヘンリーの絶頂期と、幹部殺しに関わってしまったことによりその絶頂に翳りが見え始めるまでが描かれる。
この第二幕でも気になるやり取りがある。
真夏に毛皮を掻っ攫ってきたヘンリーに対し、冷凍室で肉と一緒に吊り下げておくよと答える取引先。後半、ジミーの教えを破りミンクの毛皮を買った仲間の死に方が…。
ヘンリーの妻カレンが他のマフィアの妻たちをみて、自分はこうはならないと発言するが、最終的には…。
こういう何気ない描写が後々の展開を暗示しているという、フリとオチが本当に上手いなぁ…。惚れ惚れしちゃう。
クラブ「コパカバーナ」のコメディアンのジョークが「妻をお客さんにあげてもいつも帰ってくる」「半年の余命宣告を喰らったが、医師に金がないと告げるともう半年余命が伸びた」というものだったのも、なんとなくその後の物語を示唆しているような気がする。
第三幕では、逮捕されたことによりご法度である麻薬の取引に手を出すヘンリーから、ジミーの残虐な行い、幹部殺しがバレて始末される相棒トミーの姿が描かれる。
ここまで来ると、もはやこの物語には希望がないことは誰の目にも明らか。
一体ヘンリーとジミーはどのように身を滅ぼしてゆくのか?そのことが観客の興味をそそる。
正直、第三幕の途中までは割と退屈しながら観ていた。
今やクラシックとして映画史にその名を残す名作という扱いではあるが、今観てみると結構スロウリィなテンポで淡々と物語が進む。
幹部であるバッツを殺す件はドキドキしたし、その始末をしている途中でトミーのお母さんと仕方なくディナーを食べる件はかなり笑えたのだが、それ以外のところは事実の羅列と言った感じがしていまいちノレなかった。
しかも、歴史上最大の現金強奪事件であるルフトハンザ襲撃はまさかの全カット。えっ、そこ描かないのかよ!?とマジで驚いた、というか肩透かしをくらった。
しかししかし、一番大事なことはルフトハンザ襲撃事件ではなかったということがその後わかる。
真に大事なことはジミーとトミーが分け前をケチる為に仲間達を次々と殺していくところにあったわけだ!
ここに、自分のファミリー以外の人間にはどこまでも冷徹になれるマフィアという人種の異常さ、そしてこの異常さにもはやついてゆくことが出来なくなっているヘンリーの姿が浮かび上がる。
何故、組織に尽くしているジミーではなくトラブルメーカーであるトミーが幹部になれたのか?そしてそれをジミーも認めているのかが明かされるのもここ。
イタリア系じゃないとマフィアの中では成り上がれないという、絶対的な人種主義こそがマフィアの掟であることが観客に告げられる。
組織の中と外という決定的な差と、組織の中でもイタリア系とそれ以外とで決定的な差が存在しているということが並列的に描かれており、末端の構成員として存在し続けるしかないというヘンリーとジミーの悲哀が、ならず者たちの死屍累々の様によって表現されているようでもある。
そして結びとなる第四幕。
ラリっているヘンリーの視点を表すかのように、忙しなくカットが変わり、これまでとは打って変わったかのようにスピーディーでぐちゃぐちゃな出来事が怒涛のように展開される。
麻薬取引がポーリーにばれて破門され、命の危険も迫るヘンリーの状況はまさに最悪…💀
でも、もうここまで悪くなっちゃうと笑うしかない。そりゃヘンリー本人にとっては悲劇だろうが、観客からしてみればこれは完全に喜劇。
鑑賞中、にやにやした笑いが止まらなかった😆
そして、命を守るために兄貴分のジミーや恩人であるポーリーを軽々と売ったヘンリーの、その薄情っぷりと言ったら!
マフィアに憧れて、決して仲間を売らなかったかつての姿はここにはない。
「なんか悪いんか!?生き残る為じゃい!」とでも言わんばかりのカメラ目線での演説は強烈!
そのまま雪崩れ込むようなエンディングは痛快ですらある!!
起承転結の「結」で、これ程までにこれまで積み重ねてきたものをひっくり返した作品ってある!?
ダラっとしたこれまでの展開すら、最後のためのフリだったのかよ!
マフィア映画の傑作として、今に至るまでその名を残し続けている理由がわかった。
暴力の緊張の中に、カツラがズレたりとかライオンが出てきたりとか、そういう笑いの緩和があるところもポイントだと思う。暴力描写が苦手な人でもすごく観やすいバランスになっていると思った。
あと述べるべきなのはやっぱり音楽の使い方ですわな。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『ジョーカー』にも引き継がれた、音楽で物語るという手法は本作で確立されたとか。
残酷な死体の場面に、「いとしのレイラ」のメロディアスなサウンドを流すというのは本当に凄いインパクト。
個人的に好きなのはやはり第四幕での音楽の使い方。
カオスな展開の背後で流れるのはジョージ・ハリスンの「美しき人生」、そしてそこからクリームの「サンシャイン・ラブ」❤️
ロック好きにはたまらないコンボ!!
エンディングはシド・ヴィシャスの歌う「マイ・ウェイ」!
この映画にシナトラじゃダメなんだよなぁ。シナトラがマフィアと繋がりがあったということを加味しても、やっぱりここにはシドの破滅的な歌声でしょう。
「俺の人生終わったわ…」と嘆くヘンリーに対し、「これが俺の生きる道だ!」という歌詞をぶつけるこの破壊的パワー!花丸あげちゃう💮
巨匠の作品ということでもっと真面目なマフィア映画かと思ったら、凄くエネルギッシュな作品でした。
これはどれだけ時代が経とうが、クラシックとして語り継がれてゆくでしょう!