カラーパープル(1985)のレビュー・感想・評価
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逆境の中でも輝くようにな「生きること」への渇望を描いた一本
往時のアメリカ(特に農業地帯であった南部諸州)では、黒人は、被差別人種ー。
(令和の今でも人種的な偏見は拭いきれてはいないやにも聞き及びますけれども。)
もともとは、農園での労働に従事させるためにアフリカから(奴隷商品として)連れてこられた黒人たち。
彼・彼女らを、もし平等な人間としてみるならば、到底そんなことはできなかっただろうし、過酷な労働で使役することもできないー。
いわゆる「colored」として、自分たちとは別異なもの―「物」としてでも扱わなければ(いちおうは)キリスト教的博愛主義・人道主義を標榜するアメリカでは、社会的にも許容はできなかったという事情もあったことでしょう。
そして、そんなふうに白人に虐(しいた)げられていた黒人同士の間では、男性が女性を徹底的に差別する「男尊女卑」を顕著に行い、末端に位置づけられてしまった黒人女性を強烈に差別することで黒人社会(黒人男性)は白人たちからの強烈な差別に耐えるという、それ自体も明らかに不合理な構造を生み出してしまっていたのだろうとも思いました。評論子は。
そんななかでも、しつかりと自我を確立していたハーポの彼女・ソフィアや、歌手としての地歩を固めていたジュグは、セリーの「生き方」に、さぞかし大きな影響を及ぼしたことでしょう。
セリーが自分の妹や、伝道師とともにアフリカに渡っていた息子・娘の再会を果たすことができたという強運も、彼女のその「生き方」が引き寄せたものと断じたら、それは単なる憶測との批判を受けてしまうでしょうか。
いずれにしても、艶やかなネリーの肌ように、逆境の中でも輝くようにな「生きること」への渇望を描いた一本として、本作の佳作としての評は、揺るぎないものと思います。
本作は、TSUTAYAの宅配レンタルで2003年版が送られてきたので、その鑑賞の前段として、地元のレンタル店から「緊急レンタル」してきた一本になります。
その意味では、リメイク作を鑑賞するために「にわか仕込み」「おっとり刀」で鑑賞することとなった作品になりましたけれども。
しかし、見ごたえのある重厚な作品だったことは、疑いがなかったものとも思います。
エンターテインメントの巨匠が挑んだ至極の人間ドラマ
ミュージカル版の新作鑑賞に向けて復習
高校生の時に劇場で観た初公開時以来、2度目の鑑賞
予想外に古さを感じず入り込めました
特に前半はエグい内容や描写がありますが、全般としてはこのテーマにしては見易い方だと思います
スティーブン・スピルバーグ監督ならではの優しい視点やユーモア描写もあるし、悲惨や残酷な方に振りきっていない作品づくりなので、多くの人に観てもらって、遡ること17世紀頃か始まり今でも実は根強く残る黒人差別や虐待の歴史を知ってもらいたいと思います
作品自体、アクションアドベンチャーやSFファンタジーもので名を馳せた監督が撮ったと思えない完成度の高い重厚な歴史劇の風格を備えた傑作であり、堂々ハリウッド映画史に残るべき不朽の名作だと思います
「ジョーズ」や「E・T」をはじめ数々の作品をハリウッド映画史に残すスティーブン・スピルバーグ監督が当時‘’本当に撮りたいのは人間ドラマ‘’として挑戦した作品で、第58回(1986)アカデミー賞の主要11部門にノミネートされるも、こんなに素晴らしい作品なのに1部門も受賞しなかったという曰く付きの作品
ヒットメーカーが次は賞レースを取りに来たか 、絶対にとらせてなるものか、と明らかに嫉妬や妬みがはたらいた結果と囁かれたのをよく覚えてますし、その時オスカーは決して本当に良い作品が選ばれるわけではないことを学びました
本テーマについては、40年近い前の作品なのに現代でも充分通じ、むしろ今の時代の方が多くの人々に受け入れられる土壌ができているであろうという状況なので、今こそ是非多くの人々に観てもらいたい作品だと思います
蟲毒の壺から解き放たれる優しき蝶の物語
黒人差別 × 女性差別 + 未成年近親相姦レイプ + 人身売買 + 家庭内暴力 + 虐待 + 強制労働 + 醜貌侮蔑 + 貧困 + 無教養。
そんな感じでストーリーが始まりました。
「蠱毒」ってあるじゃないですか。壺の中にヘビとかヒキガエルとかムカデとか蜘蛛とか蜂とか、ありとあらゆる毒属性の生き物を詰め込んで共喰いさせて生き残った最強毒生物をおまじないに使うっていうヤツ。
あれですよ、あれ。
毒、毒、さらに毒、また毒、もっと毒。毒虫が毒虫を食い殺して生き残る世界ですよ。地獄よりおぞましい環境で、いくらでも陰鬱・凄惨に描くことが可能な状況です。
でもこの映画、お花畑で戯れる幼い姉妹のシーンから始まるんです。天国みたいなシーンですよ。
美しい色彩、朗らかな音楽、あどけない仕草、無邪気な戯れ、コミカルなアクション…ありとあらゆる手段で極力マイルドに仕上げていますが、ストーリーを客観的に受け止めると、そのエグさは尋常じゃないですよ。
この物語は要するに主人公セリーと、ヒロインポジションの妹ネティ、準主役的な歌姫シャグと女傑のソフィアが登場し、今からおよそ100年前、20世紀前半の黒人女性解放の歴史を辿っていく話だと理解しました。
さらにモチーフとして同性愛も取り扱っており、もう凄まじくエッジを効かせやすい要素のオンパレード。
それから黒人音楽の変遷も取り扱っているというか、ブルース、ジャズ、ゴスペルといったジャンルの歌曲が次々と登場する音楽映画にもなってました。
これだけ険しいテーマてんこ盛りの作品なのに、スピルバーグはおよそ2時間半の煌めき映画に仕立てたことが凄いです。
そうでないと皆が見ないでしょ。
これだけのテーマを取り扱ってもこの映画、レイティングの制約ないんですよ?
あらためてスピルバーグって凄えな…って思いましたよ。
公開当時、色々やいのやいのとイチャモンが付いて、アカデミー賞も取れなかったとかなんとか、そういう話も伝え聞きますが、誰が何と言おうと良いものは良いってタイプの名作だと思います。
この映画、4人の女性たちの美しい魂が地獄の底から解放されていくお話だと理解しています。
主人公セリーの「優しい魂」、ヒロイン ネティの「信仰の魂」、歌姫シャグの「自由奔放の魂」、女傑ソフィアの「誇り高きファイターの魂」。4つの魂が蠱毒の壺の中から解き放たれてカタルシスをもたらすんです。まさに「魂の浄化」。
ミュージカル映画としてリメイクされると聞いて、何度か繰り返し見ましたが、重ねて見るたび、理解が深まるたびに涙の量が増えてます。
レビューを書くにあたって、良い機会なので基本情報を調べてみました。
監督:スティーヴン・スピルバーグ(1946年生、公開時39歳)
脚本:メノ・メイエス(1954年生、公開時31歳)
原作:アリス・ウォーカー(1944年生、公開時41歳)
原作小説:アリス・ウォーカー『カラーパープル』1982
製作:スティーヴン・スピルバーグ
キャスリーン・ケネディ(1953年生、公開時32歳)
クインシー・ジョーンズ(1933年生、公開時52歳)
フランク・マーシャル(1946年生、公開時39歳)
出演
・ウーピー・ゴールドバーグ(1955年生、公開時30歳):セリー(主人公)
・マーガレット・エイヴリー(1944年生、公開時41歳):シャグ・エブリー(歌姫)
・オプラ・ウィンフリー(1954年生、公開時31歳):ソフィア(女傑)
・アコーシア・ブシア:ネティ(妹)
・ダニー・グローバー(1946年生、公開時39歳):ミスター
・ウィラード・ピュー(1959年生、公開時26歳):ハーポ(ミスターの息子)
・レイ・ドーン・チョン(1961年生、公開時24歳):スクィーク(ハーポの新恋人)
・ダナ・アイヴィ(1941年生、公開時44歳):市長夫人
もう…凄い人ばっかり…。ため息が出ます。
プロデューサーのスピルバーグ、キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャルだけでも凄まじいヒット・メイカーのスペシャルチーム。
さらにもう1人のプロデューサー、兼音楽担当のクインシー・ジョーンズは元々ジャズのトランペッターで、その後アレンジャー、作曲家、音楽プロデューサーとして成功を重ね、一番わかりやすいところではマイケル・ジャクソンの「スリラー」をヒットさせた人であり、もうポピュラー音楽の世界では別格も別格、大御所中の大御所、伝説の音楽家ですよ。
原作者のアリス・ウォーカーという人は、もともと公民権運動の活動家で、やがて作家となり、フェミニストで、環境保護活動家でもある激しい人です。本作の原作小説でピューリッツァー賞を受賞してました。
ピューリッツァー賞というのは100年以上続くアメリカ文筆業界最高権威の賞で、コロンビア大学が主催したおり、報道・論説・批評・社説・速報写真・小説・詩・戯曲・伝記・音楽などの部門があるそうです。文芸・文学に関して、少なくともアメリカではノーベル文学賞に次ぐ格式の賞と言って良いと思います。
そしてキャストも、今となっては凄まじいメンツです。みんな若い!
主役のウーピー・ゴールドバーグは本作が映画初出演で出世作!『天使にラブソングを…』の人ですが、この人は渥美清みたいに他では絶対代えが効かない存在感がすでにありましたよ。
主人公の夫役ダニー・グローバーはこの後『リーサル・ウェポン』とか『プレデター2』で善い人になりますが、この頃はまだメチャクチャ悪役ですね〜。
日本ではほぼ無名のオプラ・ウィンフリー(女傑ソフィア役)。アメリカでは超絶有名人らしいです。役者として映画やTVドラマにも出ますが(本作ではアカデミー助演女優賞ノミネート!)、本業はTV司会者。スケールは百倍とか万倍違いますが、強引に日本で当てはめるとマツコ・デラックスみたいな人かと。要するにタレントとして大成功を収めた人なんですが、彼女の影響力は非常に大きく、昨今のLGBTへの偏見排除や環境整備みたいな動きはこの人から始まったらしいです。また政治的影響力も大きくてオバマ旋風の立役者の1人だそうです。
個人的にはレイ・ドーン・チョン(ハーポの恋人役)を見れたのが嬉しかった!この人、超絶可愛くないですか?シュワちゃん映画『コマンドー』のヒロイン役の人ですね。変わったお名前ですが、中国系の血筋があるそうです。ていうか、もちろん黒人の血も引いており、アメリカンインディアン、イギリス人、フランス人の血も引いているスーパーハイブリッドなんですよ。超絶可愛いはずです。そしてこの人、ハワイのホームレスだったクリス・プラット(ジュラシック・ワールドとかガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのシリーズで主役の人)を発掘した人でもあります。なんともドラマチックな星の下に生まれて来た人ですね。
とにかくこれだけアクの強い人たちが集まって、よくぞここまで美しい映画ができたと思いますよ。
本作が話題に上がる時しばしば、エンタメ志向のヒットメーカーだったスピルバーグが、今度はアカデミー賞を取りたくて作った作品だと噂された…とかなんとか、そんなエピソードが紹介されます。しかしこのスタッフ・出演者リスト見る限り、そんな浮ついた心持ちではこの名作を作り上げることはできなかったんじゃないかと思います。
もちろんスピルバーグにも野心があったかもしれないし、プロデューサーとしての苦労も多かったかもしれませんが、もっと強力なキーパーソンが要所要所を圧倒的なパワーやプレッシャー、人脈や手練手管を駆使して障害を捩じ伏せていたのではないかと思うんです。
この映画がブロードウェイのミュージカルとなったのが公開から20年後の2005年、舞台版ミュージカルが映画化されたのが更に18年後の2023年(米)。
何か壮大なパワーが背後にあるような気がしてきましたよ…。
本作も、リメイクされたミュージカル版も素晴らしい映画なので、制作背景を勝手に妄想するのはもうやめにします。
ウーピーとオプラ
残酷な展開にあっても多幸感のある音楽。幾度と挿入される Dear Godで始まる吐露。終盤の感動的なゴスペルや宗教感は欠かせないものではあるが、映画全体通すことで、この話が聖典のようにも思えてくる。
現代的にはもっと人間臭くて良いところ。シャグと性を論じるシーンがあったが重要なモチーフ。男性性から離れバーを始める息子もポイントになるキャラクター。要素は散らばっているが活きてはいない。
若きウーピーとオプラの共演は貴重。
薄紫の野原を笑いながら駆け回る姉妹
あまりに昔に見たので細部は忘却の彼方です。薄紫の花咲く明るい草原を笑顔で駆け回っている姉妹が優しくかわいらしく、その場面(あったかな?)が一番印象に残っています。音楽もよかった記憶があります。黒人社会だけでなくどんな社会でも女性が下で、性被害と暴力を受けて虐げられていることがすごく苦しかったです。監督がスピルバーグであることに驚きました。「シンドラーのリスト」に繋がるんでしょうか?
ーーー以下、カラーパープルと直接の関係ありません。すみません。ーー
「ショア」や「コリーニ事件」や「ハイゼ家」を見てしまったので「シンドラー」をこれから見る?と思いまだ見てません。ナチスやゲシュタポを映画で扱うことの意味と立ち位置を考えざるを得ません。史実や事実とされていても微妙で不確かなことも多いので、制作者側の意図や想像や美化も入り込みます。「イングロリアス・バスターズ」がいいと(私が)思うのは、明らかにフィクションでありながら、監督の映画愛・知識を駆使してナチスが映画を巧みにプロパガンダに使った事実から映画の危うさに批判的に光をあてているからだと思っています。タランティーノは同じく映画オタクのゲッベルスに映画人として挑んでます。目のつけどころが素晴らしい。だからイングロリアス・バスターズは好きです。勝手な思い込みかも知れません。でも単なる映画好きの一人としてそう思っています。
立派で面白い映画ではありますが
真面目な人間ドラマです。長時間ですが飽きることはありません。
あの時代に、白人同様のきちんとしたスーツやドレスを着た黒人だけで成り立っている生活圏なんてあったんでしょうか?黒人を描いていない、という批判はその辺りですかね?
スピル君って、テーマドラマになるとシンドラーのラストの墓参シーンとか妙に作為的になるような気がします。あと、基本娯楽監督なので、この作品なんかもっと重厚な仕上がりになりそうなのに、妙にエンタメ的で、重厚なというか圧倒的な感動を受け難いです。よくいえばサービス精神が旺盛すぎる。リーン君とかワイラー君ならもっと落ち着いた重みみたようなものが出るんじゃないかという気がしますね。オスカー無冠だったのはその辺りじゃないかな?
人間の独立を人種を超えて普遍化してみせた傑作
紫色の花が咲き乱れる草原から映画は始まる
二人の少女がじゃれあって遊んでいる
しばらくして、黒人の少女だとようやくわかる
この冒頭のシーンに本作のテーマが提示されている
人種は関係が無い
たまたま黒人なだけだ
人間の独立に焦点を当てた映画なのだ
戦前の南部の黒人社会の実相を描いた黒人が原作者のベストセラーを単に映画化したものではない
白人による黒人の抑圧差別社会
その下層にある黒人社会
しかしその黒人社会の中にも階層はあり、さらには女性はもっと強いたげられている
暴力に怯え、笑うことも出来なくなった隷属させられている一人の人間が、差別をものともしない強い人間に出会い、そして自由な人間に出会い、遂には人間としての独立を取り戻す
奴隷解放とは黒人の白人からの解放だけでは無い
人種、民族、性別、階級、地域……
人間による人間への差別、隷属強制は普遍的にある
過去のものだけでなく、今も現在進行形で在り、未来にも続いていく
決してなくなりはしない
それが人間の本性なのだから
だからこそ、戦わなければならない
それが本作のテーマだ
それにつけてもウーピーゴールドバーグは最高だ!アカデミー賞ノミネートは当然、受賞しなかったのがおかしい
彼女の顔を見ているだけで幸せ
世界一の可愛いブスだ!見ていてあきない
もっと見ていたいと思うほど
クインシージョーンズの手になる劇中歌も素晴らしい
セリーのブルースは口パクで実際の歌唱は、その筋では知る人ぞ知るソウル歌手タタ・ベガ
セットもジュークジョイントがでてきて感激
黒人音楽をルーツにもつ現代のポピュラー音楽の全てはこういう店から生まれたのだ
娯楽作品専門の監督だったスピルバーグが、シリアスなドラマの大作を初めて監督してみせた
クインシージョーンズが原作者に推薦したという
白人それもユダヤ人が黒人の物語を撮るなんてという批判はあたらない
この黒人女性の物語を人類普遍の問題に昇華し、まとめきれる力量を彼が持つことを見抜いたクインシーの慧眼や恐るべし
さすが当代一の偉大な音楽プロデューサーだ
スピルバーグは本作の成功を足掛かりに、シンドラーのリストの監督に至る路線を得たという事でも重要な作品
もっと早く観れば良かった
良かった。有名な作品過ぎて観てなかったけど、もっと早く観れば良かった。そういう意味でアカデミー賞は獲ってもらいたかったな。そういう理由で観る人もいるわけだし。あのウーピーがコメディエンヌじゃない演技をしてるのが新鮮だった。
黒人映画とは……?
「黒人の気持ちを理解していない黒人映画」と酷評されたこともある作品だそうだが、そもそもこれは"黒人映画"なのだろうか?
もちろん黒人が差別された歴史を無視することは出来ないが、この作品は不滅の愛と絆で繋がった姉妹の物語であり、弱者にある女性達が"自分"を持って立ち上がる成長の物語であると思う。
つまり、過酷な時代を生き抜いた女性達の物語だ。 そして、そこにスピルバーグの透徹した優しい眼差しが加わり観るものにもセリーやソフィアと同じように穏やかな感動をあたえる。
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