おかしなおかしな大冒険のレビュー・感想・評価
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おかしなおかしな大冒険
久し振りにBlu-ray(4Kリマスター版)で観ました。監督フィリップ・ド・ブロカはやはり南国が舞台になると何故か活き活きとして来ます。この映画はイーストマンカラーでパナヴィジョンですが、メキシコ🇲🇽のシーンの鮮やかな色彩感覚が素晴らしい!そこに絶世の美女ジャクリーン・ビセットが現れるのでもうただただ眺めているだけで幸せな気分になれます。映画が始まってからの約20分間は007映画並のド派手なアクションが次から次へと展開!浜辺での銃撃戦の最中に、何故か家政婦のオバチャンが掃除機を押しながら現れるというシュールなシーンへと発展し、そこから一気に現実世界に引き戻されるというか、楽しい夢から急に叩き起こされます。「リオの男 ('64=仏伊)」かジェームズ・ボンドかというノリのアカプルコの浜辺から、イキナリ土砂降りのパリのオンボロアパートの一室へとシーンが変わって、冴えない髭面のベルモンドがモノクロかと思う程に色彩感の無い、まるでメルビル作品を思わす程の冷たい画調の中に現れます。このぶっ飛んだ展開に圧倒されてしまいます。タイプライターの"H"のキーが壊れていて単語が打てなくなり、水道工事やら配管工事の作業員が突然やって来たり、インクが溢れたりでアクション小説の執筆にまったく集中出来ず。この一人二役を楽しみながら易々と演じ分けるベルモンドが実に良い。しかも懐かしいTV放映時のあの山田康雄の吹き替えでも観れるという幸福感!愛車のオープンカーのドアを開けずに跳び乗るスローモーションのカットに言語版の台詞にはない山田康雄の『ヒラ〜リ!』という気の利いた絶妙なアドリブが加わり楽しさが倍増する。1970年代のTV洋画全盛時代の吹き替え版を収録したソフトとしては、やっぱりコメディ作品が一番欲しい。この映画の場合、TV放映の二時間枠にすっぽりと収まる95分という上映時間が幸いし、全編完全吹き替えで観れるのが良い。
原稿の締め切りを目前に控えたベルモンドがイライラしながらタイプライターを打っていると、そこに現実世界のジャクリーン・ビセットも一人二役で登場。同じアパートに住む女子大生という設定で。想像のシーンに出て来るボンドガールさながらの超グラマーな美女とは相反するかなり地味な役柄ながらやはり美しい。この映画でまったく異なるタイプの二人の女性役を演じたジャクリーン・ビセット、これに匹敵し得る有名女優による一人二役と言ったら映画史においてはアルフレッド・ヒッチコック監督の最高傑作「めまい ('58米=パラマウント)」のキム・ノヴァク以外には居ないと言ったら言い過ぎだろうか?(それはいくら何でも言い過ぎデス。)
それ以降の展開は、ベルモンドのみではなく、過去に彼が書いた他のアクション小説や執筆中の原稿を読んでいるジャクリーンの想像だったりで、頻繁に夢と現実のシーンを往復することになりますが、この辺りのシーンの切り換えが絶妙なアクション繋ぎと鮮やかな切れ味なので笑えます。
面白いのは、現実世界に居る二人の間の距離感が徐々に詰まっていくのに連れて、モノクロ調だった画面が徐々に艶やかな色調に変化していく点であり、最終的に小説の中の架空の二人と各々が決別し、現実世界の二人が主役に取って変わったことを示しながら映画は終わります。美術、衣装、巧みな照明を凝らした色彩設計が上手く機能していて心地よく、これこそが目で観て楽しむ映画の醍醐味、魅力であると言えます。
ウォルター・ミティ再臨
大昔TVで一度見て以来、随分と久しぶりの再会である。フィリップ・ド・ブロカ監督とジャン=ポール・ベルモンドのタッグは都合6本あるが、全部見ている。この映画だけなかなか再見できないまま、ずっと大傑作との印象を持ち続けていたのだが、「カトマンズの男」ほどではないかな。
謎のエージェントが超人的な大活躍をするシーンで始まるが、ほどなく実はうらぶれた作家が執筆する作中作であるというネタばらしが…。自らを投影した人物を作品の中でヒーロー化するというのは、ジェイムズ・サーバーの「虹をつかむ男」のウォルター・ミティ氏の妄想癖と同根である。実生活で不愉快な思いをした電気屋や配管工を作中で殺したり、好感を持つ女の子が他の男と仲良くすると、小説でズタボロの目に合わせたりする(ちょっと情けない…)。
ジャクリーン・ビセットはいつになくセクシーな役回り(フィクションでも現実世界でも)。この時既に30歳だが。
原題は“Le Magnifique”で、“すごい”ぐらいの意味だ。“おかしなおかしな”というフレーズがつく邦題の映画は何本かあるが、ピーター・ボグダノヴィッチの傑作「おかしなおかしな大追跡」(1972)の原題は“What's up Doc?”だし、「おかしなおかしな石器人」(1981)の原題は“Caveman”だ。どうやら1963年の「おかしな、おかしな、おかしな世界」が発端と思われる。こちらは原題も“It's a mad,mad,mad,mad world”で、madが四つも付いている。
ヴィーヴ・ベベル! 底抜けにくだらない、くだらないがゆえに愛おしい007パスティーシュ。
くっ…くっだらねえ……(笑)
ウルトラくっだらねえ……。
でも……、そこがいい!!!
個人的にはすっげえ楽しめたけど、
それはジャン=ポール・ベルモンド主演、
フィリップ・ド・ブロカ監督の
1973年作品だから許せているだけであって、
もしかしたら現代を舞台に、
鈴木亮平と綾瀬はるかとで全く同じ話を福田雄一が撮ったら、
俺は観て、激昂するかもしれない。
「はるか様になにクソくだらないことやらせてるんだ!?」って。
その可能性はわれながら捨てきれないので、いちおう☆評価は3.5くらいにしておいたのだが、最初から底抜けにバカな映画だとしっかりわかってて、それをリヴァイヴァル上映という枠組みで、理解のある有志たちとともに、愛情をもって心穏やかに鑑賞するぶんには、こんな最高にバカバカしくて面白い映画もなかった。
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ、三本目。
同じ監督&主演コンビで撮られた『リオの男』や『カトマンズの男』と比べても、段違いにくだらない内容(笑)。スパイ映画の徹底したパスティーシュなのだが、ほぼめちゃくちゃといっていいくらいにおちゃらけていて、しかも一応のエクスキューズが用意してある。
要するに、本作のスパイ・パートはすべて、現実世界の小説家がまさにいま執筆中のパルプフィクション内で展開している、架空のドタバタ冒険活劇という設定なのだ。
流行作家が適当に書き散らしているおバカスパイもののストーリーだから、リミットをはずれた、好き放題のハチャメチャな展開でも許容されるよね、というわけだ。
祖型となるのは当然、デイヴィッド・ニーヴン版の『007カジノ・ロワイヤル』(1967)になるのだろうが、ノリでいうと、どちらかというと『ピンクパンサー3』(1976)に近い感じのブラックさとエグみ、ド外れたおふざけが見られる(『ピンクパンサー3』のほうが、2年前に封切られた本作の影響を受けている可能性は多分にある)。
当然、悪ノリが過ぎる面もあるが、比較的穏当でノスタルジックな現実篇(もてない流行作家とおきゃんな女子大生のラブコメ)が対比としてあるおかげで、それなりにおバカパートも客体化され、悪ふざけを悪ふざけとして割り切って楽しむことが十分に可能だ。
とにかく、かっこつけまくっているわりに、まるでかっこうのつかないジャン=ポール・ベルモンドが最高に愛おしい。
それから、これぞ美女中の美女と呼びたくなるような、ジャクリーン・ビセットの妖艶&清楚両面の美貌がゴージャスだ。
魅力的な男と女が、延々とくだらないネタをやらされつつ、楽し気にわきゃわきゃしている様子は、アイドルがいじられまくるコント番組にも少し似て、観ていてほっこりした気持ちになる。そして、それを下支えするのが、『ボルサリーノ』の映画音楽でも知られるクロード・ボランのご機嫌なラテン・ミュージックだ(基本、スパイ小説パートでしかかからず、現実パートはBGMなしに淡々と進む。世界観を分けるには、賢いやり方だと思う)。
あと、スパイ・パートはカラフルな白と原色の世界。現実パートは地味なモノトーンベースの世界で切り換えられている。
以下、箇条書きで。
●ジャン=ポール・ベルモンド演じる凄腕スパイ、サンクレールのいきったアホファッションとか、ピンクのスーツとか、胸板の厚さとか、奇妙なポージングとか、裸で筋肉を誇示する傾向など、なんかデジャヴがあるなあと思ったら、ちょっとオードリーの春日みたいなのな(笑)。
●学生のころ、ジャクリーン・ビセットの『料理長殿、ご用心』(78)を観て一瞬で恋に落ちたが、やっぱりこういう美人は動いてるだけでいいねえ。スパイ・パートか学生パートかでいうと、断然後者が好みで、俺もこんな女子大学生に付きまとわれてみたい……。てか、作家と堅物の女子大生の恋のさや当てって、他にも観たか読んだかした記憶があるんだけど、出て来ない。
●「おかしなおかしな」という邦題の由来を考えると、おそらくなら同じ1973年に米日で封切られたジャクリーン・ビセットがヒロイン役として出ている『おかしなおかしな大泥棒』(主演はライアン・オニール)と関連づけたのでは、と想像される(『~大追跡』の日本公開は1974年)。
なお「おかしなおかしな」の元祖となるのは、1972年の『おかしなおかしな大追跡』(バーブラ・ストライザント&ライアン・オニール)で、こちらはライアン・オニールつながり。
ちなみにジャクリーン・ビセットは前出の『カジノ・ロワイヤル』にも新人時代にちょい役(ミス・フトモモ)で出ている。
●冒頭の電話ボックス吊り上げは、石井輝男の『直撃地獄拳 大逆転』(74)にでも出てきそうなバカネタで、のほほんとした感じが良い。そのあとのサメに襲われるところは『ジョーズ』(75)の先取りだね!
●暗殺を狙ったアルバニア人の死に際の、通訳コントもなかなか味がある。
●前半のネタの多くは、大量殺りく系(笑)。ショッカーのような敵軍団を、ひらりひらりとかわして、次々やっつけていく様が、過剰かつコミカルに描かれる。
●終盤、作家が暴走して小説の内容が荒れ始めて、乱痴気騒ぎが増えてくると、スプラッタっぽいアホネタがやたら出てきはじめるのは、好みの分かれるところかも。
●作家が作品を提供している出版社の編集長(作中劇ではアルバニア諜報機関の幹部)役のビットリオ・カプリオーリが良い味を出している。アメリカでならダニー・デヴィートあたりがやりそうな役だが、ちょっとレイモンド・バーみたいな渋味もあって、パリピの中核にいてもうまくおさまっている。ちなみに、このパリピ軍団ってのも、なにかのパロディなんだろうね。
●最後はありきたりといえばありきたりだが、きれいに終わっているのではないでしょうか。館内でもときどき笑い声がもれて、とても和やかな雰囲気だった。まずはこの一連のジャン=ポール・ベルモンド傑作選を企画した江戸木純氏に心からの敬意を表したい。
残念
時代を超えた名作っていうのがある。いつ観ても古びておらず誰が観ても楽しめる。もちろん倫理的にだったり風俗的にだったりアップデートが必要なんだとしても、面白いことには変わりない。例えは、「七人の侍」、「ゴッドファーザー」。
しかし残念ながら本作がそうした作品だとはついぞ思えなかった…
コメディだということを差し引いても、フィクションの方の主人公も作家の方の主人公もあまりにも薄っぺら…というかすべての登場人物が薄っぺら。
アクションに見るべきところがあるのだとしても、映画としての魅力を感じなかった。残念…
ジャクリーン・ビセットは美しく、考え行動する女性として魅力的、と思った途端に「尽くす女」になってしまいそこも残念だった…
転換期のベルモンド映画~原稿が空を舞う~
江戸木純さん企画の傑作選をきっかけにベルモンド映画を知り、自分が見たベルモンド作品の制作(公開)年と彼の(推測)年齢順に並べたリストを作ってそれを眺めては幸福感に浸っていました。そのリストを見ると、あくまで自分の趣味の観点ですが、この映画はベルモンドにとって何回目かの転換地点にあると思いました。
ゴダールと決別し、ベルモンドの高度なドライブテクニック、アクション、ボクシング、身体能力を生かし、美しく魅力的なヒロインと活躍する娯楽に徹した30代から40代になりたてまでのベルモンド。その時期の締めにこの映画が来ます。そしてその後に「恐怖に襲われた街」(1975; 42歳)、「危険を買う男」(1976; 43歳)、「ムッシュとマドモアゼル」(1977; 44歳)、「警部」(1979; 46歳)、「プロフェッショナル」(1981; 48歳)、「エースの中のエース」(1982; 49歳)と私の大好きな作品が続きます。
「おかしなおかしな大冒険」は邦題通り最初から「おかしく」て、大袈裟で極端で今までのベルモンドとはかなり様相が異なります。読者が求める「大衆小説」を書く売れっ子作家の頭の中の世界で、007のパロディでもあるからだと思います。都合よく何でもありの荒唐無稽なアクション&ヒロイン映画を皮肉に第三者的に見つめる作家役のベルモンドに味わいがありました。この作品後の上に挙げた一連の映画ではヒロインが居るとは限らず、社会に対するクリティカルな視点、深みのある人生観と若い世代への愛が織り込まれます。
見ていないベルモンド作品はまだまだ沢山あります。ベルモンドという素晴らしい俳優を知ることができて、江戸木さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
おまけ
ジャクリーン・ビセットがとても良かった。社会学を専攻している学生クリスティーヌとドレス姿の大人のタチアナ、どう見ても同一人物に見えませんでした!
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