おかしなおかしな大冒険

劇場公開日:

おかしなおかしな大冒険

解説

「リオの男」「カトマンズの男」の監督フィリップ・ド・ブロカと主演ジャン=ポール・ベルモンドが4度目のタッグを組み、冒険小説家が自分の作品の主人公となって大暴れする姿を活写したスパイコメディ。

秘密諜報員ボブ・セント・クレアを主人公にしたシリーズで人気を集める小説家フランソワ・メルランは、メキシコ・アカプルコを舞台にした新作を執筆している。自分が主人公になって活躍するのを妄想しながら執筆する彼は、今作では同じアパートに住む女子大生クリスティーヌをヒロインのモデルにし、スパイのタチアナとして登場させることに。ある日、フランソワはクリスティーヌに自分の小説を読んでもらうことになり、彼女がそれを気に入ったことから2人の仲は親密になっていくが……。

ベルモンドが小説家と彼の作品の主人公である凄腕スパイの2役を演じ、「映画に愛をこめて アメリカの夜」のジャクリーン・ビセットがヒロインを務めた。2024年、ベルモンド主演作をリマスター版で上映する「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ」(24年6月28日~、東京・新宿武蔵野館ほか)にて51年ぶりに劇場公開。

1974年製作/93分/G/フランス・イタリア合作
原題:Le Magnifique
配給:エデン
劇場公開日:2024年6月28日

その他の公開日:1974年6月22日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

3.0ウォルター・ミティ再臨

2024年7月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

大昔TVで一度見て以来、随分と久しぶりの再会である。フィリップ・ド・ブロカ監督とジャン=ポール・ベルモンドのタッグは都合6本あるが、全部見ている。この映画だけなかなか再見できないまま、ずっと大傑作との印象を持ち続けていたのだが、「カトマンズの男」ほどではないかな。
謎のエージェントが超人的な大活躍をするシーンで始まるが、ほどなく実はうらぶれた作家が執筆する作中作であるというネタばらしが…。自らを投影した人物を作品の中でヒーロー化するというのは、ジェイムズ・サーバーの「虹をつかむ男」のウォルター・ミティ氏の妄想癖と同根である。実生活で不愉快な思いをした電気屋や配管工を作中で殺したり、好感を持つ女の子が他の男と仲良くすると、小説でズタボロの目に合わせたりする(ちょっと情けない…)。
ジャクリーン・ビセットはいつになくセクシーな役回り(フィクションでも現実世界でも)。この時既に30歳だが。
原題は“Le Magnifique”で、“すごい”ぐらいの意味だ。“おかしなおかしな”というフレーズがつく邦題の映画は何本かあるが、ピーター・ボグダノヴィッチの傑作「おかしなおかしな大追跡」(1972)の原題は“What's up Doc?”だし、「おかしなおかしな石器人」(1981)の原題は“Caveman”だ。どうやら1963年の「おかしな、おかしな、おかしな世界」が発端と思われる。こちらは原題も“It's a mad,mad,mad,mad world”で、madが四つも付いている。

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梨剥く侍

3.5ヴィーヴ・ベベル! 底抜けにくだらない、くだらないがゆえに愛おしい007パスティーシュ。

2024年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

くっ…くっだらねえ……(笑)
ウルトラくっだらねえ……。
でも……、そこがいい!!!

個人的にはすっげえ楽しめたけど、
それはジャン=ポール・ベルモンド主演、
フィリップ・ド・ブロカ監督の
1973年作品だから許せているだけであって、
もしかしたら現代を舞台に、
鈴木亮平と綾瀬はるかとで全く同じ話を福田雄一が撮ったら、
俺は観て、激昂するかもしれない。
「はるか様になにクソくだらないことやらせてるんだ!?」って。

その可能性はわれながら捨てきれないので、いちおう☆評価は3.5くらいにしておいたのだが、最初から底抜けにバカな映画だとしっかりわかってて、それをリバイバル上映という枠組みで、理解のある有志たちとともに、愛情をもって心穏やかに鑑賞するぶんには、こんな最高にバカバカしくて面白い映画もなかった。

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選グランドフィナーレ、三本目。
同じ監督&主演コンビで撮られた『リオの男』や『カトマンズの男』と比べても、段違いにくだらない内容(笑)。スパイ映画の徹底したパスティーシュなのだが、ほぼめちゃくちゃといっていいくらいにおちゃらけていて、しかも一応のエクスキューズが用意してある。
要するに、本作のスパイ・パートはすべて、現実世界の小説家がまさにいま執筆中のパルプフィクション内で展開している、架空のドタバタ冒険活劇という設定なのだ。

流行作家が適当に書き散らしているおバカスパイもののストーリーだから、リミットをはずれた、好き放題のハチャメチャな展開でも許容されるよね、というわけだ。
祖型となるのは当然、デイヴィッド・ニーヴン版の『007カジノ・ロワイヤル』(1967)になるのだろうが、ノリでいうと、どちらかというと『ピンクパンサー3』(1976)に近い感じのブラックさとエグみ、ド外れたおふざけが見られる(『ピンクパンサー3』のほうが、2年前に封切られた本作の影響を受けている可能性は多分にある)。
当然、悪ノリが過ぎる面もあるが、比較的穏当でノスタルジックな現実篇(もてない流行作家とおきゃんな女子大生のラブコメ)が対比としてあるおかげで、それなりにおバカパートも客体化され、悪ふざけを悪ふざけとして割り切って楽しむことが十分に可能だ。

とにかく、かっこつけまくっているわりに、まるでかっこうのつかないジャン=ポール・ベルモンドが最高に愛おしい。
それから、これぞ美女中の美女と呼びたくなるような、ジャクリーン・ビセットの妖艶&清楚両面の美貌がゴージャスだ。

魅力的な男と女が、延々とくだらないネタをやらされつつ、楽し気にわきゃわきゃしている様子は、アイドルがいじられまくるコント番組にも少し似て、観ていてほっこりした気持ちになる。そして、それを下支えするのが、『ボルサリーノ』の映画音楽でも知られるクロード・ボランのご機嫌なラテン・ミュージックだ(基本、スパイ小説パートでしかかからず、現実パートはBGMなしに淡々と進む。世界観を分けるには、賢いやり方だと思う)。
あと、スパイ・パートはカラフルな白と原色の世界。現実パートは地味なモノトーンベースの世界で切り換えられている。

以下、箇条書きで。

●ジャン=ポール・ベルモンド演じる凄腕スパイ、サンクレールのいきったアホファッションとか、ピンクのスーツとか、胸板の厚さとか、奇妙なポージングとか、裸で筋肉を誇示する傾向など、なんかデジャヴがあるなあと思ったら、ちょっとオードリーの春日みたいなのな(笑)。

●学生のころ、ジャクリーン・ビセットの『料理長殿、ご用心』(78)を観て一瞬で恋に落ちたが、やっぱりこういう美人は動いてるだけでいいねえ。スパイ・パートか学生パートかでいうと、断然後者が好みで、俺もこんな女子大学生に付きまとわれてみたい……。てか、作家と堅物の女子大生の恋のさや当てって、他にも観たか読んだかした記憶があるんだけど、出て来ない。

●「おかしなおかしな」という邦題の由来を考えると、おそらくなら同じ1973年に米日で封切られたジャクリーン・ビセットがヒロイン役として出ている『おかしなおかしな大泥棒』(主演はライアン・オニール)と関連づけたのでは、と想像される(『~大追跡』の日本公開は1974年)。
なお「おかしなおかしな」の元祖となるのは、1972年の『おかしなおかしな大追跡』(バーブラ・ストライザント&ライアン・オニール)で、こちらはライアン・オニールつながり。
ちなみにジャクリーン・ビセットは前出の『カジノ・ロワイヤル』にも新人時代にちょい役(ミス・フトモモ)で出ている)。

●冒頭の電話ボックス吊り上げは、石井輝男の『直撃地獄拳 大逆転』(74)にでも出てきそうなバカネタで、のほほんとした感じが良い。そのあとのサメに襲われるところは『ジョーズ』(75)の先取りだね!

●暗殺を狙ったアルバニア人の死に際の、通訳コントもなかなか味がある。

●前半のネタの多くは、大量殺りく系(笑)。ショッカーのような敵軍団を、ひらりひらりとかわして、次々やっつけていく様が、過剰かつコミカルに描かれる。

●終盤、作家が暴走して小説の内容が荒れ始めて、乱痴気騒ぎが増えてくると、スプラッタっぽいアホネタがやたら出てきはじめるのは、好みの分かれるところかも。

●作家が作品を提供している出版社の編集長(作中劇ではアルバニア諜報機関の幹部)役のビットリオ・カプリオーリが良い味を出している。アメリカでならダニー・デヴィートあたりがやりそうな役だが、ちょっとレイモンド・バーみたいな渋味もあって、パリピの中核にいてもうまくおさまっている。ちなみに、このパリピ軍団ってのも、なにかのパロディなんだろうね。

●最後はありきたりといえばありきたりだが、きれいに終わっているのではないでしょうか。館内でもときどき笑い声がもれて、とても和やかな雰囲気だった。まずはこの一連のジャン=ポール・ベルモンド傑作選を企画した江戸木純氏に心からの敬意を表したい。

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じゃい

3.0残念

2024年6月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

時代を超えた名作っていうのがある。いつ観ても古びておらず誰が観ても楽しめる。もちろん倫理的にだったり風俗的にだったりアップデートが必要なんだとしても、面白いことには変わりない。例えは、「七人の侍」、「ゴッドファーザー」。
しかし残念ながら本作がそうした作品だとはついぞ思えなかった…
コメディだということを差し引いても、フィクションの方の主人公も作家の方の主人公もあまりにも薄っぺら…というかすべての登場人物が薄っぺら。
アクションに見るべきところがあるのだとしても、映画としての魅力を感じなかった。残念…
ジャクリーン・ビセットは美しく、考え行動する女性として魅力的、と思った途端に「尽くす女」になってしまいそこも残念だった…

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ぱんちょ

4.5転換期のベルモンド映画~原稿が空を舞う~

2024年6月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

江戸木純さん企画の傑作選をきっかけにベルモンド映画を知り、自分が見たベルモンド作品の制作(公開)年と彼の(推測)年齢順に並べたリストを作ってそれを眺めては幸福感に浸っていました。そのリストを見ると、あくまで自分の趣味の観点ですが、この映画はベルモンドにとって何回目かの転換地点にあると思いました。

ゴダールと決別し、ベルモンドの高度なドライブテクニック、アクション、ボクシング、身体能力を生かし、美しく魅力的なヒロインと活躍する娯楽に徹した30代から40代になりたてまでのベルモンド。その時期の締めにこの映画が来ます。そしてその後に「恐怖に襲われた街」(1975; 42歳)、「危険を買う男」(1976; 43歳)、「ムッシュとマドモアゼル」(1977; 44歳)、「警部」(1979; 46歳)、「プロフェッショナル」(1981; 48歳)、「エースの中のエース」(1982; 49歳)と私の大好きな作品が続きます。

「おかしなおかしな大冒険」は邦題通り最初から「おかしく」て、大袈裟で極端で今までのベルモンドとはかなり様相が異なります。読者が求める「大衆小説」を書く売れっ子作家の頭の中の世界で、007のパロディでもあるからだと思います。都合よく何でもありの荒唐無稽なアクション&ヒロイン映画を皮肉に第三者的に見つめる作家役のベルモンドに味わいがありました。この作品後の上に挙げた一連の映画ではヒロインが居るとは限らず、社会に対するクリティカルな視点、深みのある人生観と若い世代への愛が織り込まれます。

見ていないベルモンド作品はまだまだ沢山あります。ベルモンドという素晴らしい俳優を知ることができて、江戸木さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

おまけ
ジャクリーン・ビセットがとても良かった。社会学を専攻している学生クリスティーヌとドレス姿の大人のタチアナ、どう見ても同一人物に見えませんでした!

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talisman