オール・アバウト・マイ・マザー

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが、最愛の息子を事故で失った母親を中心に、様々な人生を生きる女性たちの姿を力強く描いたヒューマンドラマ。マドリードで暮らすマヌエラは、1人息子エステバンを女手ひとつで育ててきた。エステバンの17歳の誕生日、マヌエラはこれまで隠してきた元夫の秘密を息子に打ち明けることを決意する。しかしそんな矢先、エステバンは大女優ウマにサインをもらおうと道路に飛び出し、車にはねられて帰らぬ人に。元夫に息子の死を知らせるため、かつて青春時代を過ごしたバルセロナを訪れたマヌエラは、ひょんなことからウマの付き人になる。キャストにはセシリア・ロス、ペネロペ・クルスらアルモドバル作品の常連俳優がそろった。第72回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞。

1999年製作/101分/スペイン
原題または英題:Todo sobre mi madre
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、東京テアトル
劇場公開日:2000年4月29日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第72回 アカデミー賞(2000年)

受賞

外国語映画賞  

第57回 ゴールデングローブ賞(2000年)

受賞

最優秀外国語映画賞  

第52回 カンヌ国際映画祭(1999年)

受賞

コンペティション部門
監督賞 ペドロ・アルモドバル

出品

コンペティション部門
出品作品 ペドロ・アルモドバル
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映画レビュー

5.0女であることを謳歌する

2024年2月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

観ていた時、「なんでこんなに知ってるの!」と驚いたし、女に生まれてきた幸せを感じた。
不思議なものだ。マヌエラもロサもウマも、アグラードもロラも、ニナもロサのお母さんも、みんな苦しみと寄り添って生きているのに。

冒頭、エステバンがウマのサインを貰おうとする。雨の中で。「イヴの総て」でイヴがマーゴを待っていた、あの映画の始まりを意識したオープニングだった。
「イヴの総て」が女に生まれた悲劇を描いているとするなら、「オール・アバウト・マイ・マザー」は女に生まれた歓びを描く映画なのだという。
それもまた不思議で、一見すると野心を糧にスターダムへと駆け上がったイヴの方が幸せに近い気がする。
息子を亡くしたマヌエラや、病と出産への不安を抱えたロサなど、この映画の女たちは深刻な問題の中で生きているのに。
なのに何だか楽しそうで、幸せそうなのだ。
辛くても、苦しくても、悲しくても、持って生まれた共感力と連帯感が、人生を一歩前に進める力をくれる。
「辛いわね」の一言と温かいハグが、哀しみの塊を溶かしてくれるように感じる。

男に逃げられたり、騙されたり、殴られたり、散々な目にあっているというのに、何も問題は解決していないのに、ケーキとワインと気心の知れた女友達に囲まれてはしゃぐ事が出来るのは、女に生まれた特権だ。
「何それ、酷い!」「わかるー、私も私も!」の繰り返しで、何故だか元気になれる。こればっかりは性分だから理由はわからない。
女って結構タフだ。

何だかよく分からない理由で元気になり、目の前の困難に挑めるようになる。何だかよく分からないけど、悲しみが癒えていく。何だかよく分からないまま、勇気を振り絞れる。
理由なんて分からなくてもいい。君たちはそれで良いんだよ。そんな君たちは最高だ!
監督の愛をモロに受けて、最高に自分の事が好きになれる映画。それが「オール・アバウト・マイ・マザー」だ。

監督の愛は、映画にも向けられている。「イヴの総て」や「欲望という名の電車」など、過去の名作も含めて、自分を形作った総てを「マザー」と呼んでいる気がした。
「イヴの総て(オール・アバウト・イヴ)」がイヴを通して女という存在を描いた作品なら、「オール・アバウト・マイ・マザー」は様々な女たちを描くことで、自分の「母」と呼べる存在を浮き彫りにする映画なのだろう。
そしてそこには「母への愛」が溢れている。

多分、この映画を観て「最高!」と感じたことを順序だてて論理的に説明しろ、と言われても無理だ。だって「何故だかよく分からない」から。
「何故だかよく分からない」ままでも、感じることは出来る。受けとることは出来る。
愚かかもしれないけれど、嫌いになれないこの人生を、とても愛しているということを。

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つとみ

4.0女は孤独を避けるためなら何でもするよ

2023年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

作家志望の一人息子が17歳の誕生日に不慮の事故で亡くなってしまう。
母親が息子に、母子家庭となった複雑な背景を説明しよとしていた矢先だった。

やや難解だが秀逸な映画。
主題は「女は何でできているか」だと、僕は思いました。
表層のストーリーをなぞるだけでは、リアリティに欠いたり、唐突過ぎたりで、
分かりづらい。

このテーマを際立たせるために、その周辺にある際っぽい要素、
例えば、長男を事故で失った主人公を筆頭に、ゲイで売女になった男、
修道女、レズビアンの女優、HIV感染と妊娠、
周囲の評判ばかりを気にする母親、年齢と身長だけを尋ねるボケ老人、
など、個性的すぎる面々が次々と登場するが、
それらは全てこの「女は何でできているか」に帰結する。

手塚治虫は、限りある命を表現するために、絶対に死なない「火の鳥」や、
医療の意味を問うために医師免許のない「ブラック・ジャック」など、
主題となるテーマの真逆を扱うことで、その本質と格闘してきたが、
本作でも、近似する監督の思惑が伝わってきた。

女は何でできているのか。
「女は寛大」と話す妊娠修道女に対して、
「女は孤独を避けるためなら何でもするよ」と言う主人公。
僕はこの科白の共通項に、主題に対する制作者の回答を見た気がしました。

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えすけん

3.5映画の中の劇を通して繋がる命の連鎖のようなものを感じた作品

2023年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

萌える

映画の中の劇を通して繋がる命の連鎖のようなものを感じた作品

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UPtwHmNNLjBjFuAF

5.0オール・アバウト・マイ・マザー

2022年12月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「たとえ嫌いでもあなたには母親がいるのよ」
「ママがいることを忘れたの?」
ロサに向かってマヌエラが言った言葉だ。
いいなぁ。

この映画を観ることにしたのは理由があって、この映画のポスターの「顔の絵」を自分のアイコンにしていた友人がいたので。
・・おそらく友人はこの映画を特別に大切にしているんだろうと僕はずっと想像していて、「いつか観るべき映画リスト」に入れてあった本作なのです。

で、
女芝居の虜になってしまう。
女たちの生き様に嫉妬してしまうほどだ。
立場や倫理観や社会的階層が違っても、何人もの女たちがゆきつ戻りつして言葉を交わし、視線を交わし、お互い訪ね合い、そうして関わりを紡いでいく。
僕も女になりたいと思うほどに(笑)、僕は女優たちのあの嘘のない演技力に目を見張り、のめり込んでしまった

スペインの女優たち、すごいです。

・・・・・・・・・・・・・

僕の母は画家を目指していた。
油彩の筆とは→ 画布にこねくり回していじり回しているうちにだんだん完成に近づけるのでばなく、
「この場所にこの一点」、
「この色を絵筆から真っ直ぐにキャンバスの一点に置く」、
「一点ずつ完成させる」。
というそのタッチなのだと言っていた

貧乏生活で絵筆を折り、作品のすべてを焼いてしまった一本気な彼女だが、
そんな母の遺言は3つ
・延命措置はしない
・献体の手続きの実行
・死に顔を誰にも見せないでほしい。

ああ、わかるよお母さん。
気丈に生きた母に、バレエのプリマドンナ マイヤ・プリセツカヤの「白鳥」の動画を見せた、古いほうの動画だ。
そうだ。これ分かる、と言っていた。

「瀕死の白鳥」は、解説が必要ないほど有名で、サン・サーンスの甘美なチェロに乗せて可憐に白鳥が舞う。
あれは小さな女の子たちが「いつかは私も踊りたい♡」と憧れるロマンチックな演目だ。

けれどプリセツカヤの白鳥は違う。まったく違う。
自分の老いた姿を他人の目に晒したくない、孤高の白鳥の「プライド」と壮絶な「絶命の瞬間」を踊る。
空から墜落して、ひとり深い森の奥、小さな池のほとりでもがく白鳥の悲しい姿は、それを目撃してしまった者(観客)を絶句させ、口外を許さない迫力がある。
油っ気が抜けてもはや まばらに荒れてしまった羽根を地べたにバサバサと擦りつけて、かつて自分のものであった大空を見上げるが、もう立ち上がることも飛び上がることも叶わず、膝も折れて、
とうとう小さな痙攣を経て事切れる彼女の有り様は、厳粛だ。
母は動画に共感したようだ。
母には「棺おけの蓋は開けないから心配するな」と約束した。

そんな僕の母を、陸の孤島だった田舎町の実家から、その間垣から解き放って、外の世界へと逃したのがその母親=僕の祖母だった。

「オール・アバウト・マイ・マザー」。
母は僕を育てたし、僕も母を語る。
事故死したエステバンの小さなメモ帳のように息子たち、娘たちは母親の人生を書き留めておきたいと思う。

“息子”アルモドバル監督が女存在に集中して、女への眼差しとリスペクトを尽くして成した、これは傑作だ。

死んだ息子、認知症の老夫、LGBTの恋人たち、生まれたばかりの孫・・、すべての出演者が白鳥をリスペクトしてその周りを囲んで踊る。
僕もそこで一緒に踊りたい。

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きりん

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