エル

劇場公開日:

解説

一人の男が強迫観念に捕われ、異常になっていく様を描く。製作はオスカル・ダンシヘルス、監督は「乱暴者」のルイス・ブニュエルで、メルセデス・ピントの原作をブニュエルとルイス・アルコリサが共同で脚色。撮影はガブリエル・フィゲロア、美術はエドワード・フィッツジェラルドとパブロ・ガルヴァン、編集はカルロス・サヴァヘ、音楽はルイス・ヘルナンデス・ブレトンがそれぞれ担当。出演はアルトゥーロ・デ・コルドヴァほか。

1952年製作/メキシコ
原題:El
配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
劇場公開日:1987年8月29日

ストーリー

フランシスコ(アルトゥーロ・デ・コルドヴァ)は、敬虔なカトリック信者で、四十過ぎても童貞のままメキシコ市の広大な邸宅に独りで暮らしていたが、ある日教会で素晴らしい足の持ち主、グロリア(デリア・ガルセス)に一目惚れしてしまう。婚約者、ラウル(ルイス・ベリスタイン)がいた彼女だが、彼の強引な求愛に負け、二人は結婚する。その後街でグロリアと会ったラウルは、夫の凄まじい嫉妬ぶりについて聞かされる。新婚旅行へ出掛けた夜の列車の中で、早くも彼の嫉妬が始まり、ホテルでは彼女の友人に殴りかかる。生活が続くうちにたまらなくなった彼女は母(アウローラ・ワルケル)に相談するが相手にされない。彼の嫉妬心は募り、彼女と訴訟のために雇った弁護士との仲を疑った上、暴力も振い、空のピストルで脅したり、寝ている彼女にロープやハサミを使って拷問を加えようとしたり、大聖堂の塔から突き落とそうとしたりする。彼と親しい神父も頼りにならないことが分かった彼女は、ある朝ついに家出する。それを知った彼は半狂乱になり、ピストルを持って入った教会で幻覚に襲われ、神父に飛びかかる。時が過ぎ、彼女はラウルと再婚し、彼と息子と共に修道院を訪れる。そこには精神病院から出たフランシスコがおり、彼が元気なことを知ると、一家は面会せずに帰っていく。この訪問をちゃんと見ていた彼は、取り乱すこともなく、院長に自分が正気であることを告げると、庭をジグザグに歩き出す。

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映画レビュー

4.0やっぱり女の足か…

2023年8月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の徹底したパラノイアぶりには、途中で何度も笑ってしまうのだが、ラストのアノ展開に迄なってしまうと、もう不憫以外の何物でもない。
やはり、アルトゥーロ・デ・コルドバの演技が素晴らしい。
あの極端で異常な行動ぶりには、本当に思わず笑ってしまうほどに、あり得なさそうでいて、しかし現実には居ても全くおかしくはない、という、そんな危うい人格を完璧に演じている。
ラカンが自分の講義のレファレンスに使用したのも納得の恐るべきリアリティ。

教会の鐘のシーンはヒッチコックの『めまい』を思い出したが、間違いなく本作の影響は受けているのだろう。
そんなヒッチコックみたく、もっとサスペンスやスリラーな展開へ舵を切っても面白かったと思うが、原作に忠実だったということか?
というか、題材が題材ゆえ、己に真摯に向きあったということか。
というのも、あの不条理な主人公はブニュエル自身を投影していたらしい。
あの狂気に翻弄された主人公の一体どこまでが本当にブニュエルの分身なのかは分からないが。

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osmt

5.0やっと見られた。期待に違わぬ出来。全編凄まじい迫力で、私は男性なの...

2023年8月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

やっと見られた。期待に違わぬ出来。全編凄まじい迫力で、私は男性なのでフランシスコが真に迫りました。奥様が正常なのはわかっていながら飲み込まれてしまった。ブニュエルも彼に自己投影したとチラシにあったけど、自分の投影の、その重みを作品に乗せるというのはどうやるのだろう。わかってりゃ世話ないか。

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kazuyuki chatani
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