苺とチョコレート
劇場公開日:1994年9月3日
解説
同性愛者であるために祖国から追われる者と、彼に一方的に愛されて困惑する堅物の共産主義者。80年代のキューバはハバナを舞台に、偶然出会ったちぐはぐな2人の青年がやがて心を通わせ、真の友情に結ばれていく過程を描いたヒューマン・ドラマ。人種・男女・職業など、あらゆる面で差別撤廃が実施されているキューバだが、同性愛者だけは白眼視され、非難されるという。本作は若者たちの友情を通して、そうした社会の矛盾と不寛容に対する意義申し立ての主張も込められているが、ていねいにロケ撮影された普段着のハバナの町の光景と共に、作風は明るい。キューバ人作家セネル・パスの小説『森、狼そして新しい人間』(未訳)を彼自身が脚色し、92年の新ラテンアメリカ映画祭で最優秀未発表脚本賞を受賞した脚本を、キューバ映画の創始者で、現代キューバ映画界を代表する巨匠トマス・グティエレス・アレアが監督。体調を崩した彼の強い要請で、ファン・カルロス・タビオが共同監督に当たっている。エグゼクティヴ・プロデューサーはミゲル・メンドゥッサ、撮影はマリオ・ガルシア・ホヤ、音楽はホセ・マリア・ビティエル、美術はフェルナンド・オレリがそれぞれ担当。出演は舞台俳優で、初の映画出演となるホルヘ・ペルゴリア、ウラジミール・クルス、アレア監督夫人でもあるミルタ・イバラほか。94年ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員特別賞)、新ラテンアメリカ映画祭作品賞・監督賞・主演男優賞・助演女優賞・大衆賞・国際批評家連盟賞・国際カトリック映画賞を受賞。
1993年製作/キューバ・メキシコ・スペイン合作
原題または英題:Fresa Y Chocolate
配給:シネカノン
劇場公開日:1994年9月3日
ストーリー
失恋して傷心のハバナ大学生、ダビト(ウラジミール・クルス)が公園でチョコ・アイスクリームを食べていると、イチゴのアイスクリームを好んで食べる、ホモセクシュアルらしい青年ディエゴ(ホルヘ・ペルゴリア)が声をかけてきた。ダビドはディエゴにあれこれ言いくるめられて彼の部屋を訪ねる。ディエゴは文化センターで働く芸術愛好家で、民主思想の持ち主。一方、ダビドは共産主義青年同盟のメンバーで、政治科学を専攻している。結局、2人は平行線を辿って口論となり、ダビドは部屋を飛び出す。寄宿舎に帰った彼が友人のミゲル(フランシスコ・ガトルノ)にディエゴの話をすると、彼は「そいつは危険人物に違いないから身辺を見張れ」と言われる。再びディエゴの部屋を訪れたダビトは、真に芸術を愛する彼の本質に触れ、次第に彼を理解し始める。ディエゴもまた、その容姿にひかれて近づいたダビドの純粋さ、祖国を思い、未来を信じる若々しい精神に、心からの愛情を感じる。一方、ディエゴと同じアパートに住む女性ナンシー(ミルタ・イバラ)は自殺未遂でダビドに輸血してもらって以来、年下の彼に熱い眼差しを注いでいる。ディエゴは2人が恋に落ちたことを知っており、ダビドへの恋愛感情と友情の間で葛藤しながら、2人が結ばれるよう配慮してやる。ディエゴを親友として認めるダビドに業を煮やしたミゲルはディエゴの部屋に押しかけ、大乱闘となる。ミゲルに迷惑が及ぶことを案じたディエゴは、キューバを去る決意をする。別れの時が近づき、ハバナの町を歩く2人。ディエゴとの抱擁だけは拒んできたダビドは、友情と悲しみから別れを告げる彼を今初めて、しっかりと抱きしめた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- トマス・グティエレス・アレア
- フアン・カルロス・タビオ
- 脚本
- セネル・パス
- 原作
- セネル・パス
- 製作総指揮
- ミゲル・メンドゥッサ
- 撮影
- マリオ・ガルシア・ホヤ
- 美術
- フェルナンド・オレリ
- 音楽
- ホセ・マリア・ビティエル
- 録音
- ヘルミナル・エルナンデス
- 編集
- ミリアム・タラヴェラ
- オスワルド・ドナティエン
- 衣装デザイン
- ミリアム・ドゥエニャス
- 字幕
- 古田由紀子
受賞歴
第67回 アカデミー賞(1995年)
ノミネート
外国語映画賞 |
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第44回 ベルリン国際映画祭(1994年)
受賞
銀熊賞(審査員特別賞) | トマス・グティエレス・アレア フアン・カルロス・タビオ |
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