1950年代のニューヨーク、ブロードウェー。劇作家、ロイド・リチャーズの妻、カレンは、劇場の楽屋口で当代の人気舞台俳優、マーゴに憧れて田舎から出てきたという女性、イヴを見つけ、彼女の一途さに魅せられて迂闊にも友人であるマーゴに紹介する。イヴの純粋な熱意に絆され、マーゴも見ず知らずの相手に思わず心を許すのだった。
その後、イブが表ではその野望を隠しながら、手練手管を用いてスターダムをのし上がって行くかを描いたショービズ内幕劇は、ありそうでなさそうな、否、あるであろう芸能界の熾烈な競争原理を、我々の前に突き付ける。とは言え、総てとは言えないまでも割りと早くからイヴの胡散臭さを嗅ぎ取っている観客にとって、騙され、利用され、翻弄される舞台関係者たちがまるでピエロに見えてしまうのだ。タイトルの『イヴの総て』とはつまり、皆が見ているいるイヴの顔は太陽に照らされた月の半分でしかないというアイロニーなのだ。
そして、クライマックスに用意された受賞スピーチのシーンで用いられるのは、例えばアカデミー賞の壇上で幾度となく聞かされて来た決まり文句。その白々しさたるや、オスカーに向けて期待が膨らむこの時期に聞くと、痛烈過ぎて笑えない。そういう意味で今観ると余計に付加価値が付くハリウッドクラシックの名作である。