「博愛」E.T. toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
博愛
原題:E.T. the Extra-Terrestrial
未知との遭遇(1977年製作・原題:Close Encounters of the Third Kind)と
同様に宇宙人との接触を描いているが、こちらは大掛かりなものではない。
出会うのが10歳の男の子エリオットで、主なエピソードは彼を中心に
したものだ。SFというよりもおとぎ話のような、子供たちの秘密の世界を
描いたような作品だ。ピーターパンになぞらえた描写もある。
興味を引く掴みから驚かせたり笑わせたりするスティーブン・スピルバーグ
お得意の世界が展開する。突っ込みどころや疑問点がないわけではないし、
粗探しをしようと思えばいくらでもできる。それでもこの映画が愛すべき
作品なのは、根底にある博愛精神によるところが大きい。
エリオットをはじめとする子供たちが、出会った瞬間こそE.T.の姿に驚くが、
邪念がない彼らはすぐにE.T.を受け入れることができる。大人の世界では
肌の色や文化や思想の違い等を理由に差別したりいがみ合ったり、時には
殺し合いに発展したりするものだ。
子供たちは異形の存在を必要以上に恐れるでもなく忌み嫌うでもなく
友人として迎え入れ、困っているなら僕たちが助けなきゃと手を差し伸べる。
人々が大切にすべきなのはその気持ちだ。だから共感できる。
この映画を観て温かい気持ちになれるなら他人にもっと優しくしよう。
愛に包まれた世界になればいいのに、と思う。
「スティーヴン・スピルバーグ IMAX映画祭」第2弾。もちろん1982年製作で
普通にフィルムで撮影された作品だ。しかし意外にもアスペクト比が
IMAXのスクリーンにぴったりだった。画質も音も良くて、IMAX上映に
全く違和感がなかった。スティーブン・スピルバーグ作品に欠かせない
ジョン・ウィリアムズによる音楽も素晴らしかった。
ところで子役として成功した俳優の多くがその後鳴かず飛ばずで
次第に忘れ去られるのはよくあること。この作品で言えばエリオット役
ヘンリー・トーマスがその後大きな役で出演した作品を自分は知らない。
一方妹役のドリュー・バリモアは一時期私生活が乱れて大変だったようだが
立ち直り大人の役者として活躍しているのが嬉しい。E.T.出演時の彼女は
確かに愛くるしくて、でも見た目だけではなく何か人を惹きつけるものが
あった。本人の努力や周囲の支えによって才能を開花できて良かった。
子役と言えば小学校の場面でエリオットの同級生としてキー・ホイ・クァンが
出演していたのに今回気づいた。台詞がなくてただ画面に写っている
だけだったので記憶に残らなかったのも無理はない。その彼が1984年製作の
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(原題:Indiana Jones and the Temple
of Doom)では見事にオーディションに合格して主要な役で出演。
2022年製作のエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
(原題:Everything Everywhere All at Once)ではついにアカデミー賞
助演男優賞を受賞した。
40年以上を経て当時の子役の成長ぶりがうかがえるのが感慨深い。