アルファヴィル

劇場公開日:2014年12月27日

解説・あらすじ

初長編作「勝手にしやがれ」以降、ヌーベルバーグの旗手として世界的に知られる名匠ジャン=リュック・ゴダールが1965年に手がけたSF作品。同年の第15回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。英国のハードボイルド作家ピーター・チェイニーが生み出したキャラクターで、エディ・コンスタンティーヌが演じる探偵レミー・コーションを主人公に、人工知能によって支配される都市を舞台に、感情を失った独裁者の娘の人間性を回復させようと奮闘するレミーの孤独な戦いを描いた。2014年12月、「ヌーヴェル・バーグSF映画対決!トリュフォー×ゴダール」と題し、フランソワ・トリュフォーの「華氏911」とともにデジタルリマスター版上映。

1965年製作/99分/フランス・イタリア合作
原題または英題:Alphaville
配給:マーメイドフィルム
劇場公開日:2014年12月27日

その他の公開日:1970年5月30日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

3.5 異星パリ

2025年9月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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ordinal

4.5 言葉を奪われた街

2025年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

本作は、一見するとスパイが人工知能に支配された都市に潜入し、アルファ60を破壊して女性と脱出する物語です。しかし、その本質は合理主義を極限まで徹底した社会がもたらすディストピア的寓話にあります。

この都市では「辞書」が聖典として扱われ、そこから言葉が次々と削除されていきます。「意識」や「なぜ」といった言葉が消えると、人間は哲学や詩や感情を表す回路を失い、自分で考えることすらできなくなる。言葉の喪失はそのまま思考の縮小と感情の浅薄化につながるのです。これは単なる未来都市の物語ではなく、合理化が進む現代社会への鋭い警告とも言えるでしょう。

映像的にも特徴的で、未来的なセットを使わず、当時のパリの新しい建物やホテルをそのまま撮ることで「未来はすでに今ここにある」という異化効果を作り出しています。また、正面からの顔のアップや壁を背にしたシャロースペースの多用は、人物の内面を掘り下げるのではなく、「言葉を発する顔」として人間を突き出します。さらにセリフの洪水と余白の少なさは、論理に支配された息苦しい世界そのものを観客に体感させる仕掛けでした。

一方で、本作を観ていると「夢の断片」を連想させます。ひとつひとつのシーン自体には整合性がありますが、それが繋がるとバラバラに感じられ、物語の全体像は霧のように掴みどころがない。これこそがゴダールの特徴であり、彼の映画的魅力であると同時に、彼がハリウッド的因果性の物語を組み立てられないという限界でもあると感じました。

そして最後にナターシャが「愛している」という言葉を取り戻す瞬間が、この映画の核心です。辞書的に閉じられた言葉ではなく、経験や思想と結びついた言葉が人間を救う。ゴダールが描きたかったのは、合理主義を超えてなお人間が人間であるために必要な「愛」と「詩」の力であり、そのメッセージは今見ても私の胸に鮮烈に響きました。

鑑賞方法: U-NEXT (HD画質)

評価: 90点

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neonrg

5.0 現代の落語者の末路

2025年1月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

自ら知る苦しみと悦びを放棄した人間の末路

ハリウッド映画だった……
ゴダールがまさかハリウッド映画を作るとは
勿論彼がヤワな映画を作るはずもなくかなり誇大妄想的な映画に仕上がっていた

低予算SF映画のお手本みたいな作品に感じた(ゴダールにしては予算がかかってる
直線とガラスの建築、人間味のない役者、途方もない大袈裟な設定、意味有りげな台詞

『時計じかけのオレンジ』が参考にしたそう
洗脳によって人間を改造する点は共通している
多分『2001年宇宙の旅』も影響を受けている

意外とアクションがしっかりしてた
カーチェイスのシーンはゴダール史上最もマトモなアクションシーンだったかな

追記:マルケルの『ラ・ジュテ』の影響ありそう

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悠

4.0 人間のぬくもりについて

2024年5月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2度目の鑑賞。
1度目のときは、プールでの処刑場面がとても印象に残った。当時はかなり斬新な映画だったのだろうなと思った。

今回は、パリの街で撮影していること、それがすごいと思った。特別なものを使わずに現実にある街をそっくりそのまま異質なものに見せるなんて。どこをどう変えれば異質なものと見てもらえるかがポイントであるわけで、そのへんの作り方というか、本質の捉え方がうまいなと。

ストーリー自体はシリアスで、コンピュータが発する言葉も私にはなかなか疲れる。でも、主人公がスマートに敵をポンポン殺すところや、キャラの設定などは、なかなか軽快でおもしろい。

舞台が現実的なパリの街だということは、制作費が低コストだっただろうということがまず頭によぎってしまうが、よく考えてみれば意味が深い。
一見、合理的に人の生活が営まれ、社会が機能しているふつうの街。だから何も問題はないと錯覚するし、させられる。ふつうに機能しているのだから誰も文句は言えない。間違っていることがあっても、彼らはそのことに気が付かない。気が付かされないよう仕組まれている。
当たり前だと思っている、ということの恐ろしさ。
自分たちがゆがんでいくとき、素早くキャッチし軌道修正していけるだけの敏感さや賢さをもっていなくてはこうなってしまう、ということだ。

この映画では、また、味気ない世界と対比することで、芸術的感性、それを理解する人間の感度というものへの信頼、そのようなものが浮き彫りにされている。
人間のぬくもりを感じさせる、なかなかロマンチックな映画なのだなと思った。

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あまおと

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