アラバマ物語のレビュー・感想・評価
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考えの違いから生じる相克
Blu-rayで2回目の鑑賞(吹替)。
原作は未読です。
家族のドラマであり、法廷ドラマでもあった本作。フィンチの娘スカウトの回想の形を取った物語は、どこか懐かしさを覚えるノスタルジックな描写と、少年少女の目線から見た大人社会の描写が絡み合って、ほろ苦さを感じました。
中盤から黒人青年の裁判が始まり、重い展開が続く。法廷で青年の無実を訴えるフィンチの演説に涙が溢れました。
しかし、個の想いが大勢の考えを覆すまでには時代の雰囲気が成熟しておらず、裁判は悲しい結末を迎えることに…
退廷するフィンチを見送る人々の多くは黒人。裁判に破れたものの、差別に真っ向から対立し、青年の尊厳のために戦ったフィンチへの敬意が、その視線から滲み出ていました。
その背中は、子供たちの目に誇らしく映ったことでしょう。視線に気づかず行くフィンチの姿にも、称賛のためでは無く、信念に従って戦っただけであると云う真の強さがありました。
いつの時代も、信念を貫くことの難しさは変わらない。個と大勢の違いから生じる相克ほど厄介なものは無く、従来通りの考えに縛られた人々からすれば、それに反する者は異質な存在でしかないわけで、戸惑いながら排除し、否定したくなる。
フィンチ弁護士たちも理不尽な目に合いました。それでも信念を曲げない父親の姿を通して成長した子供たち。真実だけが人を幸せにするわけではないけれど、どんなことがあろうと捨ててはいけないものがある。尊い勇気に感動しました。
※修正(2023/08/24)
渋すぎる
一言「これは見ておいて損はしない」。
◎よかった点◎
・グレゴリーペックの裁判物と思って見始めたら。
半分以上は子供目線の話だったのが、意外性あり。
・その裁判物としても、斬新な展開があり。
黒人が裁判を傍聴しようとしても2階だけ。
「弁護うまいよな」と思った裁判結果も、1930年代という世相を写していて。
ちょっとビックリ。そうきたか。
・なぜ子供目線だったのだろう?。
それはどんな時代であれ、子供はやんちゃだし、父親は子を愛する。
悲しい時代を語るためには、その目線が必要だったのかも。
△いまいちな点△
・130分ちょっとの尺、もうちょっと考えれば100分くらいにコンパクトにできたかな。
若干だらっとした感はあり。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
(なぜ黒人を弁護するの?の娘の問いに)「弁護しなくては、心に誇りが持てないからさ」by父。
アメリカにいまだはびこる黒人差別がテーマ。本作が秀逸なのはそこに子...
ものまね鳥を殺すには
正義とは何か?という永遠の問いに対し、ある解答を含んだエピソードとして作られたような映画だった。男勝りの少女とその兄の目を通して語られる弁護士たる父親の姿は威厳があり、これぞ正義の人と感じさせる。同時に、ブーの正体が謎のまま、サスペンスドラマよろしくドキドキさせる演出も素晴らしい。根強い黒人差別と、司法制度によってどのように合法的に無実の人が殺されるかを端的に描いていて、そのメッセージ性は凄まじいものがある。現代でも、多くの場面でこの映画の意図するところを伝える必要があるように思う。
このレビュー、開封禁止
ブーが初めて姿を表したとき
「あーっ、こ、これは、
この映画は《となりのトトロ》だー!」と気づいた。
これはすでにどこかで語られているのだろうか?
宮崎駿氏はこの事を明かしておられるのだろうか?
1963年のアラバマ物語はトトロの下敷きですね、まぎれもなく。
舞台は、
学者肌の父と暮らす母親を亡くした幼い兄と妹の物語。
「お母さんきれいだった?」
「うん」
「お母さんに会いたい?」
「うん」
寂しさに誘われて森をさまようこの二人に森の精「ブー」が現れて静かに手を繋ぎ、子らを抱き上げて危機から救うファンタジー。
ドアの影に隠れてまっすぐ立つブーの立ち姿や、
手をつなぐブーと妹はトトロの絵コンテそのものでしたよ♪
そして、亡くなった妻の写真がいつも画面の片隅に映っています。
父グレゴリー・ペックは、最愛の妻を失った悲しみを救うためにトトロがこの家に来てくれたことを理解している。
だからブーを拒絶せずに受け入れたんだなー
映画の構成としては裁判のチャプターが重いけれど、あくまで主題は幼い兄妹のこころに宿ったトトロ=ブーの物語でした。
この大発見を誰かに伝えたくて仕方ないです(笑)
前半、フィンチの子供たちの目を通して謎の隣人ブーの存在を描いてい...
前半、フィンチの子供たちの目を通して謎の隣人ブーの存在を描いていて、少年たちの夏の日の思い出、ノスタルジックな雰囲気を醸し出し、大人たちへの感情を純粋な心で判断していたところが心地よい。
中盤の裁判は一転して社会派法廷もの映画であるが、ここで子供の目線と大人の目線の対比が上手く絡み合って物語全体の構成を重厚なものにしたという点で素晴らしい作品と仕上がっています。中盤だけを取ってみると重苦しくやりきれないものとなるところを、子供の目線のおかげで父親の正義感と尊厳への憧憬というテーマにしています。
父親をパパと呼ばないでアティカスと名前で呼ぶところにも親近感を与えてくれ、子供時代への回顧を爽やかにさせてくれます。もちろんブーの存在も大きく、劇中に説教じみたものがないのに自然と子供たちに正しい事は何なのかと教えてくれる重要人物となっていました。
子供たちの将来を考えると、正義を追求する弁護士へと進むのではないでしょうか・・・
学校で見せるべき映画
無実の黒人青年が裁判を受けるシーンがある
本作の数年後、ユニフィクスというソウルコーラスグループがCoaut Of Loveと言うヒット曲を出します
邦題を付けるなら愛の裁判所というところでしょうか
ひそひそ声、木槌の音、裁判官の開廷の言葉が入り曲が始まります
彼女がつれない、どうでも良いような3つの罪を歌った曲で、最後に陪審員が彼女は有罪を宣告する、一見愉快な曲
しかし、本作のアラバマ物語は数年前といえど全米の大ヒット映画でアカデミー賞まで取っている作品です
つまりこの曲を作った作家、歌う本人達
、ラジオでかけるDJ達、リクエストしレコードを買った一般大衆
皆がこ本作の裁判のシーンとその結末を知っての上でのヒットだったのです
それを知った上で、その曲を聴くと見えてくる光景は全く違った物になるのです
ぜひその曲も聴いて見て下さい
子供に見せたい
邦題に疑問は覚えたが観てみると後世に語り継ぎたい素晴らしい映画だと気づきます。
グレゴリーペックは私が大好きな俳優さんであり、この役は本当に板についていた。
父親として、弁護士として、射撃王として何より人として素晴らしい真似すべき大人。
出てくる子供たちはおてんばで観た人が皆何かしら自分の子供時代を思い出して重ねられるシーン満載。
大人も子供もドキドキハラハラさせられる映画です。
貧困、階層、ご近所づきあい、友達、学校、喧嘩、銃、ご飯のシーン、法廷でのシーン、全て心温まる映画です。
グレゴリーペック生きてたらなぁ…
公正誠実信念の父親
グレゴリー・ペック演じる主人公の弁護士は、長くアメリカ人の間で理想のヒーロー像、理想の父親像と言われた。
本作のクライマックスは裁判での主人公の弁論シーンだが、右利きか左利きかを証明するところ以外は事実の証明はなく、彼によって語られる状況証拠は布石もない唐突なものだ。
被害者女性への質問は、攻撃的にさえ見える。
要するに、黒人被告人は不等な嫌疑をかけられている前提の物語であり、事実を追求するサスペンスではない。
この映画は、この裁判をとおして父親がいかに立派な人物であるかを子供たちが知る成長の物語だ。
並行して怪奇屋敷の冒険も描かれ、それが大団円に繋がる。
現代感覚で観るとリアリティに欠ける物語進行ではあるが、公正を貫くことの美しさを表現している。
黒人牧師が子供ちに「さあ、お父様が退廷される」と言って、破れたものの立派に戦った父の背中を見せる名場面は感動的だ。
すごくよかった
子どもがすごく活き活きとしていて、うちの子ももうちょっとしたらあんな感じで腕白になるのかなと思うと楽しくなった。誰かが死ぬのではないかとずっとハラハラしていた。
シングル・ファーザーのグレゴリー・ペックがとてもかっこよくて、特に、狂犬をライフルで撃ち殺す時にメガネを外した時のイケメン振りが尋常じゃなかった。法廷でもかっこよかった。子どもがなつくのも当然なほど、正義感にあふれ、勇敢であった。
白人女性が黒人に対して欲情していることを描くなど、攻めの姿勢がすばらしかった。
良い作品
アメリカのリアルと良心
小説の前にこちらを
小説を読んで想像していたのは、グレゴリー・ペックからはだいぶ
かけ離れたアティカスでしたが、見進めるうちにしっくりきました。
子どもたちが嫌な顔をする通り、あの年頃の子供をもつにはいささか
歳のいった、そのための円熟味、寛容さ、常に公平であろうと
するがために時に見せる頑固な一面…そんなアティカスを完璧に
演じていたと思います。
子どもたちはまるっきりイメージ通りでした。
無邪気で傷つきやすくて好奇心旺盛…子供らしい子供達が
理不尽な出来事やヒヤッとするような経験を通して、
子どもたちの手を優しく引いてくれるアティカスのもとで
すくすくと成長していく様子が、よく描かれてました。
小説は後に読むことをオススメします。
近所の住民たちとの交流や、アティカスがいかに子どもたちに対しても
公明正大であったかというエピソード、一筋縄ではいかない
絡まりまくった「人種」問題についてなど、深く味わえます。
いい映画
これぞ完璧な映画。
高潔さと勇気
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 65
音楽: 65
今では差別問題を扱うことは当たり前になっているし他にも差別問題を扱った映画はあるが、それでもこの時期に原作が書かれこの映画が作られ当時から評価されていることは意義がある。原作者の子供のころの体験を基に作られた映画であるため、子供の視点から見た社会というのも悪くない。黒人の弁護をするというだけで自分や家族にまで危害が加えられるかもしれないという覚悟を決めて仕事に取り組むグレゴリー・ペック演じるアティカスの高潔さと勇気に感服する。
だがそのためにあくまでも正義を重んじる白人の立場から見た差別と社会ということになっており、黒人の立場から見た社会や差別というのが描ききれていないことは残念である。黒人は南部で白人に差別される弱くて可哀想な被害者でしかなくて、ここで被害者である黒人のトムの人格も人生も詳しく紹介されることはない。トムの家族とかが黒人の身でありながら白人に危害を加えた容疑をかけられたという理由でそのような目にあったかどうか、あるいはそもそも彼はどんな家族構成なのかすらはっきりと知らされない。黒人差別のことを描きながら、トムのことはちょっと外から見た他人事のような気にさせられる。あくまで主役は黒人を助ける勇気ある高潔な白人なのだ。
それでも作者の幼き時代の体験からきた物語であるし、そこまで踏み込んだことを描く時代ではなかったのかもしれない。製作された時代を考えれば充分評価できる映画ではある。
のどかな田舎の雰囲気は良かったので、白黒映像で美しさが削がれているのは残念。60年代ならばそろそろ天然色で撮影して欲しかった。
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