明日に処刑を…

劇場公開日:

解説

30年代不況期のアメリカを舞台に、貨車(ボックス・カー)で渡り歩いたホーボーと呼ばれる浮浪者の1人である娘とアナーキストの青年が、列車強盗をくり広げる、という実話の映画化。製作はロジャー・コーマン、監督は「タクシー・ドライバー」のマーティン・スコセッシ、脚本はジョイス・フーパー・コリントンとジョン・ウィリアムス・コリントン、撮影はジョン・スティーブンス、音楽はギブ・グウィルボーとサド・マックスウェルが各々担当。出演はバーバラ・ハーシー、デイヴィッド・キャラダイン、バリー・プリマス、バーニー・ケーシー、ジョン・キャラディン、ヴィクター・アルゴ、デイヴィッド・R・オスターアウト、アン・モーレル、ハリー・ノーサップなど。

1972年製作/アメリカ
原題:Boxcar Bertha
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1976年11月20日

ストーリー

1930年代の不況期のアメリカ。アーカンサスの貧しい農夫の娘バーサ(バーバラ・ハーシー)は、父が事故死したために、家を出て貨車に乗って、町から町へと渡り歩いた。そんなある日、バーサはアナーキストのビル(デイヴィッド・キャラダイン)と知り合い、共に心惹かれた2人は結ばれる。だが、翌朝ビルは5ドル札を残して、どこへともなく去っていった。やがて、バーサは街頭博奕で知り合ったレーク(バリー・プリマス)とコンビを組んで、イカサマ博奕の旅を続けているうちに、ビルと再会する。しかしビルとレークが治安官に逮捕され、投獄される。監獄には黒人のヴォン(バーニー・ケーシー)が捕えられていたが、獄内での人種偏見は激しく、反抗的な囚人は次々と惨殺された。ヴォンとビルとレークは線路工事をしている時、バーサの助けで脱出に成功する。それからは、4人は組んで列車強盗をやり、富豪たちから宝石や金銭をまきあげる。この4人組の列車強盗に対して知事(ジョン・キャラディン)は、いかなる手段でも捕えろと部下に厳命する。ある日、4人はその知事の列車に乗り込み、知事を監禁して身代金を要求するが、護衛隊に包囲されてレークは射殺され、バーサはビルとヴォンと離れ離れになってしまう。ニューオーリンズに流れたバーサは、生きるために売春婦に身を堕とす。それから数カ月。バーサは思いもかけずヴォンと再会する。ヴォンは彼女にビルの隠れ家を教え、いまでも彼がバーサを愛していることを告げる。バーサはビルの隠れ家で彼の胸に顔を埋めるが、すでに隠れ家は知事と彼の部下に包囲され、ビルは激しい銃弾を浴びる。彼らはまだ虫の息があるビルを貨車の引き戸に磔にし、手には釘を打ちつける。その時、ヴォンがすさまじい勢いで銃を射ちながら突進し、知事たちを皆殺しにする。やがて、貨車は息絶えたビルの死体をつけたまま、静かに動き出す。バーサは泣きながら、貨車の後を追っていくのだった。

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映画レビュー

3.5史実のようで創作

2023年9月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

萌える

デビッド・キャラダインは数年後、本作と変わらない年代を舞台に『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』で似たようだとは言わないが、反体制的なフォーク歌手でホーボーでもある偉人を演じた、やはり『俺たちに明日はない』が代表的で他にはロバート・アルトマンの『ボウイ&キーチ』はニコラス・レイが撮った『夜の人々』と同じ原作でもあり、ジョン・デリンジャーの伝記映画をジョン・ミリアスが『デリンジャー』として、アメリカは世界恐慌時代のアウトローが登場する史実や創作もゴチャゴチャに傑作だらけの作品群、ロバート・アルドリッチの『北国の帝王』も忘れてはいけない。

ロジャー・コーマンの下で若きスコセッシが手腕を振るった本作での実験的に思える映像表現からラストの暴力描写が今観ても斬新でヌードが多目なのも珍しいがロジャー・コーマンだから納得、磔の場面は掌じゃなく手首に打ち込まれる釘が痛々しくて脈に直通、スコセッシはカサヴェテスから本当に自分の撮りたい映画を作れ、と軽く説教されたらしい!?

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万年 東一

3.5気骨のあるスコセッシ監督の演出が既に確立した初期の力作

2022年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「アリスの恋」「タクシードライバー」と優秀作品を手掛けたマーティン・スコセッシ監督の初期の1972年制作で、物語は実話に基づくと云う。1930年代の不況下のアメリカを舞台としていて、放浪する若者たちの傷だらけの生き様を克明に描写している。貨物列車を移動手段にする浮浪者ホーボーの存在を初めて知ったのはロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」(1973年)だったが、このスコセッシ作品が1年前に扱っていたことになる。その「北国の帝王」はアルドリッチ監督らしいアクション映画の醍醐味が勝る力作だった。また、30年代の不況下の強盗犯罪ではアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」を想起させるが、このスコセッシ監督の演出タッチは、そのどちらにも似ない独自のものを持っている。ホーボーの悲痛な感情を哀感込めて描かず、治安官との憎悪の激しい闘いを骨太なリアリズムで描き切っていた。それでいてユーモアも自然に感じられるほどに、人間味のある力強いドラマが創作されている。けして傑作とまでは高評価は出来ないが、スコセッシ監督の演出の個性は充分感じることが出来るし、それがこの作品の一番の見所であった。これで脚本がもっと練られたものであったら更に優れた映画になっていたと思う。
演技では、主人公のバーサ・トンプソンを演じるバーバラ・ハーシーが最もよく、彼女の名前を忘れないようにさせるくらいの熱演だった。アナーキストのビル・シェリーのデビット・キャラダインも持ち味を出して好演。その他主要俳優の演技面を観ても、スコセッシ監督の演出の巧さがある。ラストは、警察隊に捕まったビルが貨車の引き戸に貼り付けにされるという凄まじいシーンで圧巻だが、動き出した貨物列車を追うバーサを徐々に小さく捉えた演出は、意外に古典的なタッチ。こんなところにも映画愛が感じられて好感を持つ。制作費の少ない小品でも、スコセッシ監督の気骨ある演出を観るべき力作だった。

  1977年 2月8日  大塚名画座

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Gustav

4.0スコセッシ

2015年6月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

マーティン・スコセッシの長編デビュー作!1972年の映画だし、どんな映画だろうとなんとなく見始めたけど、不思議な魅力に引き込まれて最後まで観てしまった。
バーサ…なんか見たことあるなーと思ってたら、『ブラックスワン』のおかーさんだわ!とか、ビルは『キル・ビル』のビルだ!とかいろんな俳優の若き日の姿見ることができたのも面白かった。
『最後の誘惑』を思わせるようなシーンやラスト…とにかく釘付けになって観てしまう作品。改めて、スコセッシ監督は天才だなと思った。

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共感した! 3件)
Riko
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