赤い砂漠

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

イタリアの名匠ミケランジェロ・アントニオーニの初のカラー作品で、1964年・第25回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた心理ドラマ。無機質な工場が立ち並ぶ海辺の工業都市ラヴェンナ。夫や息子と3人でこの街に暮らすジュリアーナは、数年前の交通事故のショックから立ち直れず、精神的に不安定な日々が続いていた。そんなある日、彼女は夫から友人コラドを紹介される。ジュリアーナは自分と同じように孤独を抱えるコラドに惹かれ、次第に距離を縮めていくが……。アントニオーニ監督のミューズとして知られるモニカ・ビッティがジュリアーナ、イギリスの名優リチャード・ハリスがコラドを演じた。

1964年製作/117分/イタリア・フランス合作
原題または英題:Il deserto rosso
配給:東和
劇場公開日:1965年10月9日

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映画レビュー

4.0殺伐とした現実の中での突破口

2022年10月5日
Androidアプリから投稿

知的

何となく憂鬱にさせる映画ではあった。けれど、投げかけてくれているものには深いものを感じた。

ジュリアーナはふとしたことがきっかけで、心のバランスを崩し、まわりとの違和感や不安感に囚われ、精神的に苦しむ。
その、彼女のまわりとは、映し出される工場の労働の様子、灰色の空、汚れた川。(ラヴェンナの街に一度行ったけれど、あの街にこんな側面があったとは…) そして人々の生活の仕方や内面も描写されてくるが、それらはハッキリ言ってこちらも観ていて退屈だった。そこにあるのは、金のために働く、セックスする、惰性でダラダラと遊ぶ。それだけのようにみえる。

ジュリアーナには店を開きたいという願望があった。それは、人と人とのつながりにおいてもっと素朴で手応えのあるものを感じたい、という自分の内なる欲求を、直感的に感じていたからなのだろう。

彼女は苦しんだ末、やっとひとつの手応えを掴んだ。子供だった。
子供への愛情。それが彼女にとっては、唯一、人間的で自分らしさを感じるものだったらしい。

殺伐とした現実社会において人間性を見失わないための突破口は何か?ひとつは、家族への愛情、ということになるのだろうか。

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あま・おと

3.5正しく病んでいる唯一の人

2022年5月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ジュリアーナは唯一、自然で豊かな髪を持っている。他の人は男女共に乱れないきちっとしたヘアスタイルだ。無機質で灰色の巨大な工場に煙突と大型船、騒音は神経に障る金属音、変な色の煙に汚い水、悪臭もするだろう。そんな中で雇う側はどんどん豊かになり、精神を病みながらも給料が良ければ自分の時間と労働力を提供する雇われる側。社会が変わる中で豊かで自然の美しい髪を持った彼女だけが恐怖と不安感を持ち悩み苦しんでいる。

どこの国も「先進国」になり豊かになり今の社会に繋がっている。そういう時代の変化の中で、自分の居場所を見つけられない、誰からも必要とされない自分に苦しんだ人が確かにいたことをこの映画は教えてくれる。

モニカ・ヴィッティの美しさは見事としか言えない。彼女がはおるコートはどれも似合っていて素敵だ。特に最初と最後のグリーンのコートは丈も袖丈も色も美しい!素敵。

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talisman

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