愛のために死す
劇場公開日:1971年10月9日
解説
五月革命が吹き荒れる一九六八年のフランスで、実際にあった、高校の女教師と教え子との恋愛事件を材にとり、純粋な真実の愛が、世間の常識や秩序を困惑させ、それらを支える法律の力によって逆に踏みにじられていく悲劇を描いた作品。製作はアンリ・ジャッキヤール、監督は「カトマンズの恋人」のアンドレ・カイヤット、脚本はアンドレ・カイヤットとアルベール・ノーの共同執筆、撮影は「渚の果てにこの愛を」のモーリス・フェルー、音楽はルイギが各々担当。主題歌を、シャルル・アズナヴールが歌っている。出演は「パリのめぐり逢い」のアニー・ジラルド、ブルーノ・プラダル、フランソワ・シモン、クロード・セルヴァル、ジャン・ポール・ムリノ、ジャン・ブイーズ、マリー・エレーヌ・ブレイラ、モニーク・メリナン、ナタリー・ネルなど。メトロスコープ、メトロカラー。
1971年製作/フランス・イタリア合作
原題または英題:To Die of Love Mourir d'Aimer
配給:MGM
劇場公開日:1971年10月9日
ストーリー
ルーアンのある高校の新任数師ダニエル(アニー・ジラルド)は、二児の母親で三十歳、夫と別れて、今は独身である。喫茶店での雑談、車座を組んでの講義など型破りの教師ぶりに生徒の人気は集まる一方であった。十七歳の生徒ジェラール(ブルーノ・プラダル)もグループの一人でいつもダニエルと行動をともにしていた。彼の両親は、初め息子と若い女教師との交際を喜んではいたが、やがて母親(モニーク・メリナン)の方が、女の敏感さから、二人の間に危険なものを感じた。初めは好意をもってダニエルを迎えていた父親のルゲン(フランソワ・シモン)も急に彼女に敵意をみせ、二人の交際を禁じた。怒ったジェラールは、家を飛び出し、ダニエルのもとに走り、いまでははっきり師弟の仲を越えた愛を確かめ合った。五月革命のさ中、純粋な愛に生きようとする二人に、頑なな両親の憎悪は、ダニエルに向かいまた生徒の父兄も、醜聞を消せと署名を集めた。ダニエルは聞き入れず、ついに教師の職を追われた。一方生徒たちは、二人の力になろうと、ダニエルの所へ集まってきた。ルゲン夫妻は息子をダニエルから引き離すため、民生委員に訴えて、ルアンから遠い山中の寄宿学校に転校させた。しかし万聖節(十一月一日)に、ダニエルは約束通りジェラールを訪ね、再会の喜びにふるえた。その後、すぐに学校につれ戻されたジェラールは遂に学校を逃げ出し、仲間の手引で、ルアン郊外の採石場の小屋に身を潜め、ダニエルとの逢瀬を重ねた。ここにいたって、ルゲンはダニエルを相手どり、未成年誘拐の訴訟を起こした。彼女は予審判事(クロード・セルヴァル)の取調べを受け、家宅捜索の結果逮捕されて刑務所送りになってしまった。ジェラールは、ダニエルを気づかい、ダニエルの釈放を条件に、非行少年院に入いる決心を固めた。しかし、父親のさしがねで、精神病院に入れられたジェラールは、堪え切れず、遂に病院を抜け出して、ダニエルのアパートへ走った。ジェラールの父親はサン・マロの祖父の許へ息子を預けることを提案し、一度は断ったジェラールもとうとう承知した。祖父の監視の目は厳しく、ここでも苦しい日々を余儀なくされたジェラールを見て、ダニエルは彼の自由と引きかえに、再び刑務所入りを決意した。しかし、今度は、刑務所内の不幸な人たちのために、積極的に動いたことが逆に大きな失意の結果となって、ダニエルは気力を失なっていった。そして一月半後、未青年者誘拐の裁きを受けるため、刑務所を出たダニエルは、次の日法廷に立った。判決は有罪、しかし執行猶予一年、しかも特赦の恩恵に浴することを認められた。喜びに弾んだ教え子たちが集まって、彼女のアパートでジェラールを待っていた時、不幸な知らせが入った。検察側の上告であった。ジェラールは、更に戦う力を養おうと療養所に入ったが、それは逆に、孤独のとの厳しい戦いであった。すでに立ちなおる気力を失なったダニエルは、ジェラールとの再会を願った、が、連絡の行違いでそれも果たされず、失意のうちに一人さびしく死んでいった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アンドレ・カイヤット
- 脚本
- アンドレ・カイヤット
- アルベール・ノー
- 製作
- アンリ・ジャッキヤール
- 撮影
- モーリス・フェルー
- 音楽
- ルイギ
- 主題曲
- シャルル・アズナブール
- 字幕監修
- 清水俊二