ヨコハマメリーのレビュー・感想・評価
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横浜ローズって言わなかったか?
私は1992年位から95年まで、川崎で勤務していた。その時、メリーさんの都市伝説は戸塚区の友人からよく聞いていた。その友人と桜木町や伊勢佐木町や日ノ出町辺りをメリーさんを探しに行った。勿論、物見遊山である。その友人はお会いしたと言っていたが、私は会えなかった。だが、あの川筋に軒を連ねて、メリーさんじゃない若いメリーさんがいた。1994年末の事である。翌年に阪神淡路大震災かあり地下鉄サリン事件があった。世紀末だと思った。あの川筋は今どうなっているのだろうか?
温故知新とは言えない。しかし、
メリーさんって本当にいたんだ。友達の言う事を私は信用していなかった。以外と普通なので『伊勢佐木町プルース』のイメージからかけ離れていた。
伊勢崎町ブルースで
映画の始まりは、伊勢崎町ブルース。
それがあのお馴染みの青江みなじゃなく渚ようこなのだ。掠れていない綺麗な声。
非常に面白い映画だった。
もちろんメリーさんは見た目も中身もダントツに個性的を突き抜けているんだけれど、ここに出てきた人達も、みな、どこかあやしい匂いがぷんぷんである。
特にわたしが一番興味を抱いたのが大衆酒場の「根岸家」さん。もう想像するだけでワクワクなんてものじゃない。夢に見ちゃいそう、というより夢に出てこないかな。
最後に、いつの間にかヨコハマからいなくなったメリーさんが現れる。
びっくりだ。
彼女は以前の白塗りではなく、自然な化粧で品のある普通のおばあさんになっていた。
人間界に戻ったのかい?と聞いてみたくなるほど。
あの時代はなんだったのだろう。
もうほんとに摩訶不思議なのである。
約一時間三十分、奇妙な体験をした気分でした。
ドキュメンタリーのお手本の様な良質を堪能出来ます。
以前から気になってた作品で、出来れば劇場で観たかったの、上映のタイミングをいろいろと確認してたら、都内で渋谷の「アップリンク渋谷」で上映を知り、観賞しました。
場内は全席解放されていて満員。
過去作のリバイバル上映で、平日の昼間で満員は凄いです。
で、感想はと言うと、良い♪
良質のドキュメンタリー作品です。
作品自体は以前から知っていたけど、今から約2年前に不定期放送で特集された「マツコが日本の風俗を紐解く「かたせ梨乃が進駐軍の前で踊り狂った時代…マツコ」と言う番組でメリーさんを紹介する映像を見てから、俄然興味が沸いていたので、とても満足。
劇中での永登元次郎さんの歌う「マイウェイ」も良いんですが、オープニングとエンディングで流れる「伊勢佐木町ブルース」が良いんですよね♪
関内は仕事でよく行ってたんですが、伊勢佐木町では殆ど飲んだ事がなかったのがちょっと後悔w
メリーさんの生き方は孤高で粋。そしてブルース。
だからこそ、伊勢佐木町ブルースが作品に良く似合う♪
横浜の関内にある伊勢佐木町で都市伝説の如く語られる、白塗りの高齢の娼婦、メリーさんの半生と関係者の証言で構成された作品で、長い時間を掛けて取材された証言や映像はドキュメンタリーのお手本の様な作り方。
なんせ、製作を開始された時にはメリーさんは伊勢佐木町から姿を消し、生まれ故郷の岡山で余生を過ごされているから、その取材の大変さはかなりの物と言うのが画面を通して分かるぐらい。
また、所謂街の有名人的な方なので、周りの方々に取材をし、話を聞くだけでも一苦労。
周囲の方々もなかなか一筋縄でいかないメリーさんには多分いろんな思いがあったと思うし、いろんな偏見もあった中で声を出して、メリーさんの事を言うのは憚る事もあったと思う。
それでも、メリーさんを知る人が少なくなっていく中で、様々な証言と映像、写真を探しだすのはかなりの苦労かと。
特にメリーさんと交流のあった永登元次郎さんの証言などはかなり貴重。
戦後、外国将校を相手の娼婦として生計を立てると言うのは、様々な時代背景があったにしても、触れられたくない過去もあると思うだけに、その辺りのさじ加減がかなり難しい。
いろんな形で取り上げられ、有名人として皆に愛されたとしても、腫れ物に触るかの様な扱いや様々な誹謗中傷もあったのは劇中でも語られただけに、メリーさんを始め、周囲の人々も必要以上に触れられるのはやはり難色を示すのではないだろうか?
それでもメリーさんの半生を聞くと切ない。
娼婦として気高く、プライドが高く、それでいて他人とは簡単に迎合しない。
我は我。と言う気持ちを貫き通すのは並大抵ではないと思う。
いろんな事情があるにしても、その生き方を貫いたのは人生でたった1人、好きになった人がいて、その人が再び帰ってきた際に自分が分かる様にドレスを着て、白塗りの化粧をしているなんて、一途に貫かれた純情以外の何物でもない。
多分メリーさんの考え方や生き方を全て知る事は出来ない。
その都度に「何故?」と言う言葉が遮ると思う。
そんなメリーさんの半生を追い求め、ラストで岡山の老人ホームに元次郎さんが慰問コンサートをし、そこに白塗りをしない、優しい顔のメリーさんの映像が流れた時は流石に涙腺が緩くなって、胸にグッと来た。
また、デパートに行った際にピアノで弾いて口ずさんだ「海」の一節は切なくて悲しい。
丹念に丹念に描かれてた作品はホント貴重な映像作品だと思うし、素晴らしい作品だと思う。
ラストの映像までの持っていき方も素晴らしい。
沢山の人に見てもらいたいだけの良質な作りのドキュメンタリーですが、パンパンを始め、時代考証を考えたとしても、今はなかなかテレビでは放送出来ない倫理を考えると、劇場で観れるのはやっぱりラッキー。
戦後の日本の時代の事情も踏まえて、風俗文化や繁華街事情、浮き彫りにされていく状況が異文化交流が盛んな港町、横浜とそして日本という国の一面を1人の女性の人生を通して見た感じ。
良いドキュメンタリー作品なので、機会があれば、出来れば劇場で。ダメてもDVD等で見てもらいたい作品です。
粋
マニュアル化され、みんなが同じ顔をした現代で、白塗りのメリーさんが貫いた人生は「粋」でかっこいいです。
また、メリーさんを知る登場人物も自分の美学を昇華させている魅力的な方ばかりでした。不寛容な社会の中で、寛容さのある良き時代が羨ましく思えます。
ラストに見せたメリーさんの微笑みは、自分の人生を生きてみようと自信を持たせてくれました。
介護福祉士を目指すキッカケを作ってくれた作品
メリーさんを知る人々のインタビューから始まり、彼女の生い立ちから、仲間達の人生、そして、戦後の横浜そのものの歴史へと遡っていく。
人物を探すインタビュードキュメンタリーやと、その前に観た『デヴラ・ウインガーを探して』が代表的である。
相手が有名ハリウッド女優だっただけに、すぐに見つかり、拍子抜けした『デヴラ〜』に対し、メリーさんの行方は、最後の最後まで一切足取りが掴めない。
無理もない。
全身白塗りの異様な風体である以外、本名も素性も全て謎だったからだ。
街の名物として味方してくれる人々も多かったが、《パンパンさん》という職業と外見からヒドい偏見を抱いていた人達の方が遥かに多かった。
「病気を持っているんじゃないか?」
っと、客からクレームをつけられ、イキツケの美容室が出入り禁止を食らった時は、どれだけ辛かった事だろう…。
「何処かで野垂れ死にしたのかなぁ…」
っと落胆していた矢先、故郷の老人ホームで暮らしている事を突き止め、メリーさんを母と慕うシャンソン歌手・長登元次郎が末期ガンに冒されながらも、逢いに出掛ける。
念願のメリーさん本人に再会し、魂を振り絞って『マイウェイ』を熱唱するラストは鳥肌が立った。
上映当時、劇場全体が
「メリーさん生きていたんだぁ〜。良かったぁ〜」
という安堵感でいっぱいになり、やがて直ぐに涙へと変わった。
あの時の温かい一体感は、今でも言葉では言い表せない。
では、最後に短歌を一首
『シャンソンの 余韻にむせぶ ハマの夜 いろいろあったね なぁメリーさん』
by全竜
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