劇場公開日 2005年6月11日

いつか読書する日のレビュー・感想・評価

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4.5必ず訪れる人生のタイミング

2024年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2005年の作品
俳優陣が皆若い。
「いつか読書する日」
このタイトルにはいったいどんな意味があるのだろう?
物語の最後に皆川おばちゃんが美奈子に問いかける。
「これからどうするつもり?」
「これから、本でも読みます」
その「本」とは、おばちゃんが描いた小説なのではないだろうか?
自分の人生が描かれた本を老後になって読む。
自分の人生を振り返る。
自分の人生を、もう一度見つめてみる。
それが一体どういったものだったのか、小説を読みながら考えてみたい。
それはある意味、人生の終焉を表しているかのようだ。
高梨陽子も夫のカイタに言う。
「男と女の関係がすべてよ」
この作品は、
人生とはつまり男女関係がすべてであるという概念に則り作られたものなのだろう。
さて、
なぜ、カイタは最後に死ななければならなかったのだろう?
妻の陽子が望んだとおりに彼は行動した。
同時にしばらくの間気にかけてきたネグレクトの児童への想い。
彼は自分が成した決断が正しかったのかどうか迷うところがあった。
カイタがした児童の母に対する行為は、子供にとっては由々しきことだった。
子供のいなかったカイトにはそのことがよくわからなかったのだろう。
子供にとっては、どんな親も絶対的存在だ。
それを理解した上に、行政執行の決断が為される必要がある。
彼はそれを理解していなかっただけだろう。
このひとつのことが罰、または因果となって水難事故を招いたのだろうか?
2005年 平成17年 この時代はまだ昭和的な思想が色濃く感じる。
同時にタイトルに仕組まれた難解さがこの時代の新しさなのかもしれない。
あれから30年
当時起きた出来事 お互いの両親の事故死
それは大きな出来事だったが、カイタと美奈子の認識は違っていた。
カイタはプールの授業でおぼれそうになっていて、それを見ていた美奈子が笑っていると思った。死ぬと思った。
だから、カイタは美奈子を避け始めたのだ。なんて薄情な女だ
美奈子はそんな出来事など覚えてもいなかった。
このくだらないすれ違い。
きっとほとんどの人がこのような経験をしていると思われる。
カイタは笑顔で死んだ。
それはカイタが自分自身のすべてに決着をつけたからだろう。
これこそがカイタが死ぬ理由だろう。
「美奈子の長い恋は終焉した」
また、
冒頭、美奈子が作文コンクールで優勝したことが発表される。
「未来の私からの手紙」 15歳の私へ
自分が未来に立ち、当時15歳だった頃の自分に宛てた手紙
しかしわずか2年後に母が死ぬ。カイタの父と一緒に。
この出来事は美奈子の人生観を大きく変えたはずなのに、美奈子はすでに決めてしまっていた自分の歩く道を変更しなかった。
噂などすぐ広がってしまうこの町に留まり続けたのだ。
「変わらない」と決める
それこそが30年彼女を孤独にさせたのだろう。
陽子から言われなければ、ケイタとの関係もなかったはずだ。
「自分の気持ちを殺すのは、周囲の気持ちも殺すことになる」
そして、ケイタの気持ちを受け入れることができた。
でも、あまりにも短く終わってしまう。
このあたりが昭和色を濃く感じてしまう。
美奈子が毎晩聞いているラジオに、ある日とうとう投稿してしまう。
彼女の想いはもう処理できなくなっていたのだろう。
それを聞く陽子 ラジオというのはすでに時代の流れの中へ消えそうになっている。
陽子の心理もまた特別だ。
死を前に考えることは、自分のことではない。
「平凡」を決めた夫の生き方に疑問を持った。
市役所への就職はそれが理由だろう。
しかし児童課での仕事に向き合う選択をした。
同時に、彼にもタイミングが来たのだろう。
すべてにタイミングがある。
美奈子が誰もいなきなった高梨家に毎朝牛乳を届けるのは、お供え物だからだろう。
町の一番高い場所から町を見下ろす。
30年間の決着をつけた清々しさ。
人生遅すぎることなど何もない。
最後は、ゆっくり読書でもすればそれでいいのかもしれない。

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R41

2.5親のせいで変わった人生

2024年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

田中裕子扮する大場美奈子は、中三の時作文コンクールで一等になった事があった。
そういやあ牛乳配達なんて仕事もあったね。地味だけど朝早いし50歳の美奈子には大変だ。
病人役だったけど久しぶりに仁科亜紀子観たな。ちょっと不思議な展開だね。ベテラン俳優揃いなのに脈絡がない感じだ。何気ない生活密着ドラマかな。亡くなる妻に心配されても困るよね。いい大人なんだからさ。親のせいで人生変わったのかもしれないけどさ。不器用なふたりだな。評価が高かったから観たのに残念だね。

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重

4.0名作です 。

2023年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

映画館で観て以来だから、
19年ぶりに鑑賞。
時の流れの早さに「ウソー」と
思いながらも、
全く色褪せていないこの作品の
魅力に、さらに驚く。

舞台は長崎。といって観光的風景は
いっさいない。険しい坂道が印象的な街で
30年の間お互いを思い続けてきた
同級生、50歳の二人。田中裕子と岸部一徳が主役。

大葉美奈子(田中裕子)は、朝は牛乳配達、夜はスーパーで
働く独身女性。楽しみは毎夜の読書。

高梨槐多(岸部一徳)は市役所勤務、妻(仁科亜希子)は
ガンで余命いくばくもない。

映画は程のよい回想場面を挟みながら、二人の
人生背景をさりなげく教えてくれる。

認知症やネグレストなどドキッとするシーンも
ときおりユーモアを交えながら、しかもドラマを
ただ盛り上げるための材料ではなく、
きちんと回収していく。

不器用で笑ってしまうような二人の抱擁シーンも
なんだろう、愛と愛がぶつかって切なくなるくらい
誠実で可愛くて美しい。

年を重ねれば重ねるほど、タイトルの意味の重さも
わかってくるなぁ。

いやーいい映画です。
アマゾンプライム→日本映画ネット15日間無料お試し、
で僕は観ました(笑)。

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高坂圭

3.5熟年男女の長い長い秘められた恋の物語

2022年2月28日
PCから投稿

まずとっかかりとして傾斜がきつい密集住宅地というロケ地にオヤッ!となる。
あらすじにはさほど興味を抱けなかったが、ロケ地の魅力が好奇心を掻き立てる要素になるというケースは結構あるもの。

そこからは、というよりほぼ最初から「展開は一体どうなるのか?」という中程度の好奇心が最後まで維持され、それに加えて主役二人の設定年齢と近いということもあってか、じわじわ共鳴共感の波が生じても来た。

落ちの悲劇に関しては全く予想外でしたが、背景音楽の調子が最初から最後まで軽妙で、邦画にありがちな「泣け泣け」的いやったらしい最低演出とは全く無縁だったこともあり、微妙な爽快感さえ感じつつエンドロールとなったのは実に良かったですね。

邦画は外れる率が高いですが、これは普通以上に良い映画でした。

エンドロールでロケ地が長崎と知り、「ああっーそうだったのか・・・」と、そこにもある種の感慨が生じましたよ。

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resuwisshu311

3.5田中裕子さん

2020年12月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

いつかいつかと思っていたら、そのいつかは来ないかも知れないことを示唆しているようでした。気持ちを引きずることは誰にでも出来ることではないし、ロマンチックな側面はありますが、私はちょっともったいない感じがします。でも簡単に切り替えができるほど大場さんは器用ではないよなあ。現代の女性監督が撮ると、大場さんをまた全然違った視点で撮りそう。田中裕子さんは、流石の演技力でした。

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ミカ

4.5過去にとらわれながらも誠実に人生を歩んでいる人たちの姿に心洗われる...

2020年11月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

過去にとらわれながらも誠実に人生を歩んでいる人たちの姿に心洗われる。岸部一徳の演技に涙したのって初めてかも。良い人の役でも違和感なかった。というのは、拝金主義の病院長とか、そんないやーなやつの役柄イメージ強いので。ネグレクト母に怒りをぶつける場面とか、ほんと胸打たれた。

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原っぱ

5.0極上の恋愛映画

2019年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

事情があって別れざるを得なかった初恋の恋人たち。その一方と結婚した女。
 言葉どころか目も交わさぬ恋人たち。本人たちは隠している想いなれど、関係者には密かに伝わっている。それを説明や台詞なしに、演技で魅せてくれる田中さんと岸部さん。
 「愛はないけれど情はある」誠実に妻を愛おしむ夫。なれど、”女”とみてくれぬこと・愛する人の幸せを邪魔しているのではと同時に嫉妬に悩む妻。切ない。

この二人と並走して描かれる、長年連れ添った夫婦。

読書。
作者との対話。
そして感想を言い合う仲間との対話。ー映画レビューと一緒。
読書を通して深めていくであろう、心の中のカイタとの対話。
現実世界での対話。内的世界での対話。

それぞれの孤独
それぞれの愛溢れた繋がり。

昼メロ仕立てにしても良い筋だが、
分別のある大人の三角関係をしっとりと魅せてくれる。
 なのに、終盤にカイタが美奈子に言う言い訳がこそばゆいのがみそ。

主人公の年齢に近くなり超えるほどに、愛おしくなる逸品。
名優ありきの作品だが、それをじっくり見せてくれる監督に感謝。

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とみいじょん

5.0「居間まで主ってきたこと死体!」「前部仕手」

2019年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 間違った日本語を使うことに抵抗のある50歳独身、大場美奈子(田中裕子)。朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジ係、仕事で疲れ切ったた、読書しながら寝るのが日課だ。一方、岸部一徳演ずる高梨槐多も50歳。妻は病に臥して自宅療養。平凡に生きることが生きがいである、市役所勤務だ。高校時代にはお互い惹かれ合うものの、ある事件がきっかけで疎遠となってしまった二人。初恋の日から30数年経った熟年カップルによる単純なメロドラマかと思いきや、認知症、自宅介護、児童福祉という現代的なテーマが輻輳して、心に染み入る重厚な社会派ドラマとなっていました。

 自らを殻に閉じ込めてしまい、牛乳を配達することが生きがいだと自分にまで嘘をつく美奈子。妻へ最大級の介護を施し、たっぷりの愛情を注ぐが、妻からは内面が読めないと思われている槐多(かいた)。いつしか妻の容子も牛乳配達の時間を正確に覚えるくらい、ルーティーンを大切にしてしまっている。

 かつては、牛乳配達用の牛乳箱なんて日本中どこの家庭の玄関先にあったものだ。紙パック入りの牛乳が普及し、朝早くにカチカチとビンがぶつかり合う音も久しく聞いてない。今ではピラミッド型の紙パックさえ見かけなくなってしまった。この懐かしい牛乳ビンを毎日配達するという日常が平凡を愛する男の宅にも届けられ、30年という世界を告白できない二人の静かな時を刻み付けていく・・・また、玄関先で受け取った牛乳をそのまま飲むじいさんが素敵だ。

 皆川夫妻は認知症。敏子(渡辺美佐子)も少々その気があるのだが、英文学者の夫真男は進行が早かった。彼のボケるというイメージを内側から描いた描写も素晴らしく、一瞬、観客をもボケの世界に引きずり込んだようなシーンが光っていました。徘徊という症状も、静かな町に住む登場人物に心の変化をもたらし、物語にアクセントを与えている。しかし、敏子だって、吸いかけのタバコがあるのに、二本目を吸ってるし・・・危ないよ・・・

 二人の心が通じ合う場面は、不器用な男と未経験の女という性格を見事に描写。岸部一徳の演技は今までで最高のように思う(あまり見てないのかな・・・)。ラストは賛否両論でてくるのでしょうけど、美奈子が力強く生きていくためには、この展開が一番自然だったのではないでしょうか。

2005年マイベスト

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kossy

4.0高梨さん

2016年2月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

大場美奈子と高梨かいた。
不器用な二人だけど結ばれてよかった。
なんだかいい映画だった。

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ミツマメ