ヒバクシャ 世界の終わりに

劇場公開日:

ヒバクシャ 世界の終わりに

解説

イラク・日本・アメリカ、世界各地に生きる“ヒバクシャ”たちの声を取材した長篇ドキュメンタリー。監督は、本作が劇場用初監督作となる『坂本龍一 銀行の未来―続 エデンの遺言』の鎌仲ひとみ。撮影を『授業としての入学試験』の岩田まき子と、家塚信が担当している。第77回キネマ旬報文化映画ベスト・テン第8位、日本映画ペンクラブ賞会員選出ベスト5ノン・シアトリカル第5位、芸術文化振興基金助成事業、国際交流基金助成事業作品。

2003年製作/117分/日本
配給:グループ現代
劇場公開日:2004年3月20日

ストーリー

湾岸戦争後のイラクでは、白血病や癌にかかる子供の数が激増していた。米軍が使用した劣化ウラン弾から放出された放射能による“体内被曝”が原因と思われるが、未だその因果関係は科学的に証明されていない。1998年、バグダッドの病院で知り合った14歳の少女・ラシャが白血病で亡くなったのをきっかけに、鎌仲監督は世界のヒバクシャたちの声を聞く旅に出る。自らも広島で被爆し、その後57年間、ヒバクシャの医療に携わってきた肥田医師。劣化ウラン弾によって汚染されたバスラに暮らす白血病の少年・ムスタファや、長崎で体内被曝した人々。そして、ワシントン州にあるプルトニウム製造のハンフォード工場の風下で農業を営むトム・ベイリーさんは、ヒバクシャと認められないまま死んでいった多くの犠牲者を代表し政府を訴え続けている。肥田医師が興味深い統計を纏めた。それによると、チェルノブイリ原発事故の丁度10年後、東北・北海道地方で乳癌や乳幼児の死亡率が格段に増えており、このことから、もし放射能と癌発生の因果関係が証明されれば、放射能は時間をかけて日本にまで降り注いでいると考えられるのだ。だがそれなのに、またしても米英軍はイラクに約2000トンもの劣化ウラン弾を落とし、日本でも53基の原発が稼働、六ヶ所村の再処理工場も試運転を始めようとしている。

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映画レビュー

5.0日本の原爆による被爆者、イラクの被爆者、アメリカの被爆者

2018年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

 電力供給のために活躍する原子力発電所。安全だと宣伝する裏には微量放射能によってガンや白血病という悪魔に蝕まれてゆく人々がいた。  どうしても観たかった時から2年過ぎてしまいましたが、すでにDVDが発売されたようです。広島・長崎に落とされた原爆については日本人なら誰しも心を痛める悲惨な出来事でしたが、未だに核の恐怖を反省もせずに利用し続けてる人たちもいます。91年の湾岸戦争において、初めて使用された劣化ウラン弾。もっとも硬い金属なので分厚い装甲車でも貫通してしまう兵器ですが、一方で放射能を含んだ微粒子を大気中にばら撒いてしまう悪魔の兵器なのです。ガンや白血病の患者が異様に増えているにも拘らず、因果関係は認められないと使われ続けている。  被害者はイラクにとどまらない。大量のプルトニウムを作っているアメリカのハンフォードでは風下の住人たちが次々とガンで死んでいる。高濃度の核廃棄物の汚染にさらされてきたのです。『エリン・ブロコビッチ』のように司法によるたたかいは続いているが、相手は企業ではなく政府であることが相違点。勝ち目はないのです。ここでも裁判の争点は因果関係の有無。データに基づいても科学的にはまだまだハッキリさせることのできない虚しさがつきまとってしまう。  日本の原爆による被爆者、イラクの被爆者、アメリカの被爆者と、三つの地域に焦点を当てたドキュメンタリー映画ですが、核兵器による悲惨な現状を訴えるだけではなく、原子力発電所の問題も指摘します。特に身の毛もよだつ事実は広島で被爆した医師・肥田舜太郎の集めたデータでした。86年のチェルノブイリ事故以降、日本における乳ガン発生数と乳幼児の死亡数の推移。北海道から日本海側、太平洋側と明らかに死亡者数が増えていっている。遥か離れたロシアの空から、日本の大気中にまで微量の放射能が拡散している事実。他人事ではすませなくなっています。原発の問題もその地域だけに限った問題ではない。この問題を放っておくと、そのうち地球全体が放射能汚染の危険に晒されるのです。しかも、この放射能が消え去るのに45億年かかるとか・・・  これだけグローバルな内容になっているとは思いませんでした。大量の殺傷能力を持った兵器であるという問題だけではないのですね。目に見えない恐怖は、やがて静かに地球を汚染してゆき、なぜガンになったのかもわからないように人間を殺していってしまう・・・肥田先生の訴える「低線量被爆の実体を知ることから始まる」という言葉が重くのしかかってきます。

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kossy

3.0劣性遺伝・・ひ孫が危ない

2012年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

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shimo

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