劇場公開日 2002年11月2日

「映画としては良いかもしれないが少なくともたそがれ清兵衛ではない。」たそがれ清兵衛 fortylinerさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0映画としては良いかもしれないが少なくともたそがれ清兵衛ではない。

2018年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、TV地上波

映画としては良いですよ。 秀作だと思います。 ですが原作ファンとしては大変残念な映画だと思いました。 本作が「祝い人助八」と言うタイトルなら納得しました。 原作を捻じ曲げる様な映画作りは感心しません。 黒澤明の「赤ひげ」の様に同名のタイトルを付けるなら原作を読んでから映画を見ても、映画を見た後で原作を読んでも違和感がない様にして欲しかったと思います。
井口清兵衛は侍です。 剣術使いなのです。 人と斬りあうことに対してあれこれ悩みません。 侍は幼い頃からその様に育てられます。 彼の唯一の心配事は兄妹として育ち、家の都合で夫婦になった妻の病だけです。 それこそ藩の重大事よりも妻を厠に連れて行くことの方が重大な問題なのです。 だから変人で滑稽でたそがれているのです。 映画の主人公は貧乏に追われ生活に疲れているのです。 心配事があってたそがれているのではありません。 清兵衛は妻の問題がクリアされれば人を斬ることなど造作もなく遂行します。 それが井口清兵衛です。
原作は変人の剣術使いに周囲が振り回される滑稽話であってそこに夫婦愛も絡んだつくりになっております。 親子間の家族愛を描いた人情話ではありません。
もう一度言います。 井口清兵衛は侍で且つ剣術使いです。 唯一の心配事は妻の病です。 藩の重大事よりも人斬りよりも心配なのです。 その背景を変更したらそれはもう「たそがれ清兵衛」では無い。とわたくしは思います。

fortyliner