利休のレビュー・感想・評価
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三國連太郎が利休だというのも意外
勅使河原監督自身が華道草月流の家元であるため、茶器などの小物が全て本物であるという。茶碗や釜がアップになるとき、その本物の威圧感が迫ってくるのだ。公開年を鑑みれば、バブル期であるためだろうか・・・
ストーリーは秀吉と利休を中心に描かれているため、わかりやすいのだが、その他の人物は長尺にも拘わらずかなりわかりづらい。また、秀吉の命令で利休の首を斬る理由なども、朝鮮出兵に反対した点だけというのも弱い。斬新なところが本物志向という点だけだと、インパクトも弱くなってしまう。同じ勅使河原作品『砂の女』『他人の顔』の斬新な映像と比べると見劣りしてしまうのだ。
さまざまな美
いかなる名器/名物であっても あってない物にするのが「茶の道」である、というようなことを利休(三国)が弟子に語っているが、名品が沢山登場し圧倒される
物の力というものは確かにある
(職人や絵師が心血を注いだのだから)
画面構成もよく練られている
勅使河原監督が 草月流家元ということもあり、花々も印象的
秀吉が持ち込んだ器に 梅の枝を配する場面など感嘆してしまう
竹林で秀吉(山崎)に能を舞わせているが、それを観賞する北政所(岸田)と茶々(山口)の顔
お多福顔(?)でおおらかな北政所
キツネ顔で妖気漂う茶々
終盤で更に不吉さが増し、豊臣の落日も予感させる
キャストに現代美術家が脇役として登場しているが
正親町天皇の堂本尚郎の〈やんごとなき感〉が印象に残った
ラストのバラバラと音をたてる竹林と鎧姿の亡者の群れは、一輪の美の為に手折られた花々や戦国の世に倒された武将達の無念と呪詛を思わせる
そして利休も…ゆっくりとその中に入ってゆく…
原作は野上弥生子が70代後半にかけて執筆した傑作で、なんだかこれも感心してしまった
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