妖刀物語 花の吉原百人斬り

劇場公開日:1960年9月4日

解説

歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒』に材をとり、「かくれた人気者」の依田義賢が脚本を執筆、「酒と女と槍」の内由吐夢が監督したもので廓を舞台にした悲劇。「暴れん坊兄弟」の吉田貞次が撮影した。

1960年製作/109分/日本
配給:東映
劇場公開日:1960年9月4日

あらすじ

武州佐野の次郎左衛門は、真面目な商人だったが、生れながらの醜い顔に痣があった。この痣が彼の人生を狂わせたといえる。幾度目かの見合いの帰り、さそいにのって次郎左衛門は吉原の門をくぐった。一夜、遊女玉鶴の情けを受けた。「心の中まで、痣があるわけはないでしょ」この言葉を次郎左衛門は忘れることができなかった。が、玉鶴はいやしい遊女で、栄之丞というやくざの情夫があり、太夫の位に憧れを抱いていた。次郎左衛門は吉原に居続けする上、引手茶屋の女将に五十両預けて女の身請けを夢みるようになった。玉鶴に太夫の位をねだられて、夫婦約束の上承知した。折から、信州一円に雹が降り、桑の木が潰滅、下請け業者の生死にかかわる事態となった。武州に帰った次郎左衛門は、思案のあげく、捨て児時代の守り刀を手離すことに決めた。その金で玉鶴を妻に迎え、故郷に帰って仕事に精を出すつもりだった。しかし、兵庫屋に駈けつけてみると、すでに二代目八つ橋太夫の襲名が内定していた。玉鶴の本音を聞いた。次郎左衛門は一旦武州に帰り、家屋、身代を一切整理して再び吉原にきた。兵庫屋の表は黒山の人だかり、二代目八ツ橋の玉鶴が豪華な盛装で現われた。出世披露目の道中で、次郎左衛門が行列の群に飛びこんだ。その右手には村正が握られていた。あっという間に男衆を斬った。うろたえまわる女を、男を、次々に斬った。八ツ橋を追い、一太刀斬り下げた。彼女の死体のそばで、次郎左衛門は叫び続けた。「寄るな、この女に手を触れるな、これはわしの女房だ、わしの女房だ……」。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0 本当に悪い奴は誰だ。

2025年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1960年。内由吐夢監督。歌舞伎の物語を映画化。捨て子として育てられた男は長じて生糸の生産で財を成すが、顔のあざが原因で見合いに失敗し続けている。そんな時、初めて出かけた吉原で下級の女郎に心を奪われる。太夫に出世するという女郎の願いをかなえるべく惜しみなく金を注ぎ込むが、やがて天候不順などが重なって家業は傾いていく。追い詰められていく男は、自身が捨てられていた時に身に着けていた刀を売って金をつくろうとするが、その刀が実はいわくつきの刀で、、、という話。
コンプレックスをもつ男と女がいて、男は自身のではなく女のコンプレックス克服のために身を尽くすが、身の丈を超えた女の欲望に吞みつくされてしまう。しかも女の愛だと思っていたものが、実は女の欲望(差別された岡場所から吉原にやってきた自分が花魁として出世し、太夫となって裕福に暮らすこと)がその過程で仮に姿を取った幻だったことがわかってしまう。なんたる絶望。
ラスト、吉原で刀を振り回す男は女を切った後で「出てこい」と叫び続けているが、男はこんな窮地に男を追い込んだ本当に悪い奴を求めている。女やがめつい小屋主や薄情な商売仲間は本当に悪い奴が生み出している幻にすぎない。ほんとうに悪い奴は誰だ。それはもちろん欲望なのだろう。

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5.0 籠釣瓶 花街酔醒

2025年9月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

5.0 卑劣な輩

2018年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

主人公(片岡千恵蔵)は捨て子で、顔にひどい痣があった。
拾ってくれた夫婦に大事に育てられ、引き継いだ製糸業を大きくしていた。
真面目な性格だったが、同業者に吉原に誘われる。
痣のせいで芸妓が付かなかった、一人だけ気にせずについてくれた。
この芸妓を気に入り、入れ込んでいくが・・・。
恐るべし、妖刀!

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いやよセブン