「笑えるのだろうか」ゆきゆきて、神軍 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
笑えるのだろうか
奥崎謙三は、大まじめです。
奥崎謙三は、大まじめに「田中角栄を殺す」と宣伝します。
奥崎謙三は、大まじめに天皇にパチンコ玉を打ちます。
一般的に奇行と呼ばれる行動をとる奥崎謙三を、まともである私達は「狂人」と呼ぶのでしょう。しかし、彼の様な「狂人」を作りだしたのは誰なのでしょうか。彼の様な「狂人」が作り出された原因は何だったのでしょうか。
「戦争」という言葉を並べるのは簡単かもしれませんが、「戦争」という名の下で行われる数え切れないおぞましい出来事全てを私は経験したことがありません。「戦争」という言葉から数ある想像しかできません。
だからこそ、私は決して彼を笑うことはできないのです。
私が、彼と同じく国家権力によって数え切れないおぞましい経験をさせられたとするならば、フィルムの中の「狂人」は、奥崎謙三ではなく、「私」であったかもしれません。そこには、数ある想像の中で「戦争」を論じていたまともな「私」は存在していません。戦争の「責任」をひとり背負わされた「狂人」と呼ばれる「私」が存在しているだけです。
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