劇場公開日 1977年10月29日

「祟りじゃ」八つ墓村(1977) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5祟りじゃ

2015年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

総合:50点 ( ストーリー:55点|キャスト:55点|演出:40点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )

 誰が何故この犯罪を行っているのか、物語の流れとしてはどういう背景があるのかという理屈を一応通している。だが、犯罪をどうやって行ったのかについての言及がない。どのようにして毒薬を正確に狙った相手にばれないように飲ませたのかとか、犯罪の実行についての描写が殆どないために、犯罪の実現性について疑問符がつくばかりか、犯罪の怖さがない。犯罪者の人物描写も浅くて、どのような精神力や能力があるのかもわからないし、どのような事情があるのかも他人に少し後で語られるだけ。
 これとある意味で同様なのが金田一耕助で、どうやって犯罪をつきとめていったのかの描写があまりに少なすぎて、彼がどのような活躍をして犯罪を紐解いていったのかが殆どわからないし、当然のごとく有名探偵として存在感がびっくりするくらいなくて、その隠密ぶりは最早ステルス爆撃機なみだった。「犬神家の一族」の石坂浩二の金田一とは対照的で、調べてみたら東宝と松竹と制作会社が違っていた。これは明らかに東宝の石坂の圧勝。
 このような演出では犯罪も人物も全く活きない。祟りだの何だのと村人に叫ばせ変な化粧をして怪奇的な雰囲気を作り出そうとするだけでは、犯罪作品としてはくだらないし、恐怖映画にもなれていない。

 昔の田舎はこんなふうに迷信深くて非科学的で土着の因習が息づいていたのだろうか。原作者の横溝正史の疎開したときの体験が基になっているというからある程度はそうなのだろうが、山奥の閉鎖された社会には観ていて多少の戸惑いと驚きがある。ほんの数十年で日本もここまで変わったのだろう。当主が1日に30人以上の殺人をしたという話は、舞台になった岡山北部で本当に30人以上殺した津山事件というのがあってそれを基にしたそうで、落ち武者狩りの話と相まって異常な雰囲気作りには一役かっている。

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Cape God