野獣死すべし(1980/村川透監督)

劇場公開日:1980年10月4日

解説

戦地を渡り歩いた通信社の元カメラマンが、翻訳の仕事に身を隠しながら、一匹の野獣となって、管理社会の安穏とした生活に犯罪で挑む姿を描く。原作は大藪春彦の同名の小説で、昭和三十四年に白坂依志夫脚本、須川栄三監督、仲代達矢主演で一度映画化されている。脚本は「翔んだカップル」の丸山昇一、監督は「薔薇の標的(1980)」の村川透、撮影も同作の仙元誠三がそれぞれ担当。

1980年製作/119分/日本
配給:東映
劇場公開日:1980年10月4日

あらすじ

ある夜、警視庁捜査一課の岡田警部補が殺害され、拳銃が奪われた。数日後、秘密賭博場が襲われ、暴力団三人が射殺され、テラ銭三千万円が奪われた。使われた拳銃は奪われたものだった。伊達邦彦は、通信社のカメラマンとして、アンゴラ、レバノン、ウガンダなど血と硝煙の戦場を渡り歩き、帰国して退社した今、翻訳の仕事をしている。戦場でめざめた野獣の血、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳の持ち主だ。岡田警部補の部下だった柏木は、執念深く事件を追い、長身、ガッチリとし体の男という容疑者像を割り出した。そして、伊達の尾行を始める。柏木の尾行をよそに、伊達はコンサート会場で華田令子に接近したり、優雅な日々を送っている。暫くして、伊達は次の行動に移った。高級宝石店の店員を支払いをするからと銀行に呼び出した。店員が預金カウンターに近づくと、伊達は係の男に、前にいる男に金を渡せと電話をした。係員の防犯の合言葉で、何も知らない宝石店の男は、組み伏せられ、一分三十秒後にパトカーが到着した。これは銀行の防犯体勢を調べる伊達の実験だ。大学の同窓会に出席した伊達は、そこで、自分と同じ野獣の血を感じた真田と出会い、彼を仲間に入れる。伊豆山中での拳銃の練習。真田はアッという間に腕を上げた。同行した恋人、雪絵が邪魔になった真田は、伊達に促され動く標的として、彼女に銃口を向けた。銀行襲撃は決行された。巧妙に逃走する伊達と真田。追う柏木。銀行に居合わせた令子も射殺して、伊達は野獣のみちを突き進んでいく……。

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映画レビュー

3.5 松田優作じゃなきゃダメなのだ、わかるか!?

2025年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年、「角川映画祭」で鑑賞。

先に『人間の証明』を観て、松田優作のカッコよさ、素晴らしさにあらためて気づいたので、優作さんを観るために、そしてわが思春期ど真ん中の80年代の懐かしさにひたるために映画館に足を運んだ。

そんなわけで40数年ぶりに観たけれど、いやぁ~面白かった。
むかし観たとき、当時、僕は中学生だったが、そのときよりも面白く感じたかもしれない(ちょっと、人、殺しすぎだな、と思ったけれど)。
考えてみると、凄絶な戦場体験と、現金強奪を目的とした大量殺人との因果関係に説得力がないなど、ストーリーにも腑に落ちないところがあるのだが……。

まあそれはそれとして、やっぱり松田優作はすごい。カッコよすぎる。すごすぎる。
あの演技は完全に憑依だな。もうあんな役者は出てこないだろう。鹿賀丈史もぶっ飛んだ演技をしているけれど、やっぱり優作さんには、かなわないと思う。

しかし、この映画、松田優作じゃなかったらどうだろう? おそらく、この異様な緊張感は出せなかったのではないかと思う。ほかの役者だったら、ちょっと安っぽい感じのするハードボイルド映画(クライムサスペンスといったほうがいいのかな?)で終わっていたんじゃなかろうか。というか、ほかの役者だったら、そもそもこの脚本を、狂気に満ちたこの役柄をこなせなかったのではないか。

まったく内容を憶えていない映画もたくさんあるけれど、何十年も前に観たこの作品はわりとよく憶えていて、とくに終盤の列車のシーン、「リップ・ヴァン・ウィンクル」のくだりは印象深く、むかし鑑賞したあともくり返し思い出していた。
でも、意外なことに「汝の家郷は有らざるべし」という萩原朔太郎の詩はまったく憶えていなかった。今回数十年ぶりに鑑賞して、主人公の空虚な内面に重なるようなこの詩は、とても胸に響き、印象に残った。

そんなこんなで、劇場を出たときに、僕はちょっと松田優作になったような気がした(実際は全然違うけどな)。でも、昭和の男なら、映画館を出たあと、自分が高倉健や松田優作やスティーブ・マックイーンやブルース・リーになったように感じたことが一度はあるはずだ。こうでないといけない、と僕は思うのだ。最近はこういう映画が少なすぎるのではないか。こういう映画は、いい映画なのだと言いたい。
中学生のときに「わかるか!? わかるか!? わかるか!?」と例のセリフを、真似してよく遊んだものだが、今回も家に帰ってまた「わかるか!? わかるか!? わかるか!?」と気がつけば、ひとりでモノマネをしていた。けっきょく、僕のやっていることは40数年前と同じなのだった。

それはともかく、「今さら角川映画かぁ」という気がしないでもなかったが、観てよかったです。
優作さんの演技を存分に堪能できたし、新しい発見もあったしね。

あっ、それから久しぶりに小林麻美を観ることができて、それにもグッときた。綺麗だなぁ。

追記
はじめて観たときは、全然わからなかったけれど、この作品には、ショスタコーヴィチ、ショパン、ベートーヴェン、モーツァルト、アルビノーニ……と様々なクラシック音楽の大御所の代表曲が使われています。知的で冷徹な「野獣」、伊達邦彦の愛聴する音楽は、ロックやジャズではなくて、やっぱりクラシックじゃないとダメですね。

それから、岡野等&荒川バンドの演奏する本作のテーマ曲も美しく、この映画の乾いた冷たい雰囲気を作り出すことに貢献していると思います。
いま聴いてもクールで瑞々しい演奏です。

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peke

4.0 高校の時観たがイマイチ響かず。しかし再度鑑賞すると非常に良かった。...

2025年5月22日
iPhoneアプリから投稿

高校の時観たがイマイチ響かず。しかし再度鑑賞すると非常に良かった。
伊達は激戦地でおかしくなったと思ってたが、むしろ心底やばい奴なのだろう。そしてゲイ?気質があるような気がする、けど女性が嫌いではないはず。
サイコパスという言葉や映画のジャンルが確率されてない当時でこのキャラクターはなかなか受け入れられなかったんじゃなかろうか。松田優作がまだ健在であれば「羊たちの沈黙」や「ジョーカー」を絶賛するだろうな。

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Mk.plass

3.0 ●映画ってより総合エンタメ

2025年4月13日
iPhoneアプリから投稿

優作さん怪演の角川映画。「蘇る金狼」もぶっ飛んでたし風吹ジュンがセクシーだったけど、それ以上。
歌ありミュージカルあり音楽あり舞台あり独演あり、もちろんドンパチありエロあり。って欲張りすぎだけど。細部は気にしちゃいかん。
死んだ目をした優作さんが室田日出夫と対峙するシーンには刮目させられる。そして、鹿賀丈史のギラギラと小林麻美の可憐さも。
いまの映画はよく考えられててホントに面白いけど、やりたいことやりまくる昭和の作品もまた味わい深い。

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うり坊033

3.5 松田優作の

2025年3月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

難しい

一連のわけわかんない作品は何度も観るにつれ、だんだんハマっていき、ボーッと何も考えずに観ている時、気分がいい。その良さは映画を長年たくさん見ていれば分かってくる。現代的ウェルメイドなお子ちゃま作品が映画だと思っている人には分かるまい。

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ブロディー署長

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