燃える秋
劇場公開日:1978年12月23日
解説
ペルシャ絨毯に心惹かれた一人の女性が、一枚の絨毯に織り込まれた五千年の文化の歴史を知り、愛や幸せよりも、もっと大切な何かを求めて生きる姿を描く。デパートの三越が東宝と共同製作したもので、原作は五木寛之の『野性時代』に連載された同名の小説、脚色は「化石」の稲垣俊、監督も同作の小林正樹、撮影は「お吟さま(1978)」の岡崎宏三がそれぞれ担当している。
1978年製作/137分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1978年12月23日
ストーリー
亜希はマックス・エルンスト展がキッカケで結ばれた影山との関係を断とうと、祇園祭の京都へ旅に出た。宵山の雑踏の中で、「山の胴」にかけられたペルシャ絨毯を喰い入るように見つめる、名古屋の商社員、岸田に惹かれた。亜希も、ペルシャ絨毯に、エルンスト展で受けた衝撃とは別の爽やかな感動があった。「これで影山とは本当に別れられるかもしれない」と亜希は思った。ある雨の晩、影山から誘いの電話があった「来たまえ、レインコートだけで、下は何も着けずに……」。心で拒みながらも目は壁にかかったコートに釘づけになり、身体が熱くなった亜希は、必死に岸田に救いの電話をするのだった。東名高速を水しぶきをあげて突っ走る岸田の車。それから数日後、岸田に抱かれた亜希は、彼を愛していることに気づいた。しかし、彼女は、岸田の求婚を断った。何か気持に微妙なズレを感じていたからだ。暫くして、亜希は、癌に侵された影山の遺した航空券でイランへ旅立った。彼女は五千年の歴史を持つペルシャ文化に圧倒された。ある日、高熱で倒れた亜希が、意識を取り戻すと、そこに岸田の顔があった。すべてを投げだして飛んできた岸田の気持に感動した亜希は、彼の求婚に、素直に頷くのだった。帰国の飛行機の中で、亜希は岸田のアタッシュ・ケースにギッシリと詰められた絨毯のカラー・スライドを見た。日本で、同じデザインの絨毯を機械で織らせようとする岸田にとまどいを感じる亜希。「ペルシャ絨毯は高価だ、貧しい人々の手には入らない、美しいデザインは特権階級だけのものではない」という岸田の理屈もわかるのだが、亜希にはどこかが違っているように思えた。愛し合っていれば、意見が違っても一緒に暮せるという岸田の主張も違うと思う。「女には愛と幸福さえあればいいのだとは思えない。もっと大切なものが必ずあるはずだ」と悩んだ亜希は、空港へ着いたら岸田と別れようと決心した。意固地な女だと思うが、愛というオアシスに立ち止まらずに、独りでどこまでも歩いて行こうと決心する亜希だった……。