萌の朱雀

劇場公開日:

解説

ふるさとを愛する気持ちとは裏腹に、離ればなれになって暮らすことを余儀なくされてしまう一家の様子をつづったドラマ。監督・脚本は「かたつもり」の河瀬直美。本作により97年度のカンヌ国際映画祭で日本人初のカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞した。撮影は「2/デュオ」の田村正毅が担当している。主演は新人の尾野真千子と柴田浩太郎。ロッテルダム国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品。97年度キネマ旬報ベスト・テン第10位。16ミリからのブローアップ。

1997年製作/95分/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:1997年11月1日

ストーリー

過疎化が進む奈良県吉野村、この山間の村にある田原家には、当主の孝三とその妻の泰代、母の幸子、そして孝三の姉が残していった栄介と、孝三と泰代の子・みちるの5人が暮らしている。村に鉄道を通す計画が持ち上がって15年になるが、トンネル工事に携わっていた孝三は、計画の中止を知らされすっかり気力を失っていた。そんな孝三に代わって家計を支えるのは、町の旅館に勤める栄介である。ある日、少しでも家計の助けになればと、泰代が彼と同じ旅館に勤めることになった。ところが、元々体の弱い泰代は、体の調子を崩して倒れてしまう。泰代に秘かな想いを寄せていた栄介は彼女を心配するが、栄介を慕うみちるは母に嫉妬心を覚えた。そんなある日、突然孝三が姿を消し、警察から遺品である8ミリカメラが届けられる。孝三の死によって泰代は実家に帰ることになり、栄介のそばを離れたくないと言って泣いていたみちるも、母についていくことを決心した。孝三が残した8ミリフィルムに写る村の人々の映像を観た一家は、やがて離ればなれになっていく。泰代とみちるを見送った後、幸子と旅館へ住み込みで働きに出ることになった栄介は、家を片づけ始めた。

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スタッフ・キャスト

監督
脚本
河瀬直美
プロデューサー
仙頭武則
小林広司
協力プロデューサー
柘植靖司
プロデューサー補
近藤亮一
撮影
たむらまさき
美術
吉田悦子
音楽
茂野雅道
録音
滝澤修
整音
松本能紀
中野陽子
音響効果
今野康之
照明
鈴木敦子
編集
掛須秀一
スタイリスト
星輝明
助監督
萩生田宏治
スチール
渡邊俊夫
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受賞歴

第50回 カンヌ国際映画祭(1997年)

受賞

カメラドール
カメラドール 河瀬直美
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映画レビュー

3.5夢と現実と

2024年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

この1週間、立て続けに「静かで台詞の少ない映画」を観ている。特に理由はないのだが。この映画も無駄な演出を極限まで削ぎ落とした静かな作品だった。 尾野真千子デビュー作であることやカンヌで新人監督賞を受賞したことも含め、もう随分昔から知っていた作品だが、河瀬直美監督に関心がなかったので今まで観ていなかった。 映画は、NHKのドキュメンタリーをナレーション抜きで観るような印象である。本職の俳優は國村隼だけで、尾野真千子を含めその他の出演者は素人だというから、これだけナチュラルな仕上がりになっているのかと納得するが、一方でそれは驚きでもある。 映画は変わらない緑溢れる吉野の自然と、変わりゆく山村の暮らしを描く。ノンフィクションのように淡々と現実を切り取っていく。一方でそこには、鉄道新線という叶わなかった夢とともに、どこか幻想的な夢のようなシーンが紛れこんでいるように思われる。 幼いみちると母と栄介が手を繋いで木漏れ日の中を歩く後ろ姿。 無言で家を出、山道を下り、閉鎖されたトンネルを前に立ち尽くす父。 何かに取り憑かれたように雨の中を歩き回る母とそれを追う栄介が雨宿りする場面。 最後にかくれんぼの歌を口ずさみながら静かに目を閉じる祖母とその後に響くみちるの声。 見方によっては非常に退屈な映画という評価になりそうだが、じわじわと情感が沸き起こる仕掛けが組み込まれているように感じるのは私だけだろうか。これを若干27歳で計算して撮ったのであれば、監督はただ者ではないと思う。 そして、尾野真千子。控えめだが、微妙な心の移ろいをしっかりと演じている。栄介の心が母に向かっていることを感じ取り、嫉妬のような複雑な表情を見せる場面があった。素人で出来る演技ではない。彼女はただ者ではない。 万人受けする映画ではない。しかし、美しい山村の在りし日の記録として、名女優の衝撃的デビュー作として、後世に残る作品になるだろう。

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TS

4.0空気を描くとは・・・

2023年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

萌の朱雀、完走。河瀨直美監督作品、🎦あん、🎦朝が来る、🎦2つ目の窓、に次いで4作目になる。知らず知らずに一人の作家作品としては結構見てることになる・・・。 🎦萌の朱雀は長い事配信もなくなかなか見れなかったのだが、今回Huluで見つけて無料トライアルで見る事が出来た。何も起こらない日常に僅かな揺らぎが起こる様を丁寧に丁寧に・・日本の原風景に載せてセリフに頼らず映像・・と言うより空気の描写で描ききった手法は見事。河瀨監督も青山監督も🎦恋は光の小林啓一監督や🎦リトルフォレスト冬春の森淳一監督に似た空気感を持っており、この描写感はそのルーツを相米慎二に見つける事が出来る。良作である。

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mark108hello

2.5五新線のエピソードがもっと欲しかった

2021年9月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

先日、五條新宮線長距離バスに乗車して十津川温泉に行ってきた。バスの運転手が途中の観光案内までやってくれて、その中に五新線の廃線跡の説明が有り、興味を持ちネットでいろいろ調べてるうちにこの映画にたどり着いたため、図書館で古いVHSビデオを借りて視聴した。映画としてはエンターテイメントなものではなく、ドキュメンタリー的な部分と一家族の離散の物語を合体したようなつくりであった。鉄道好きとしてはもっと五新線についてのエピソードを期待したのだが。

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あっちゃんのパパと

4.0あんな、好きやねん、でも、いくわ

2021年7月12日
iPhoneアプリから投稿

大人の判断を不意に求められる少女。伏し目がちなあどけない表情。頭を撫でてあげたくなる。後半はそんな尾野真千子の独壇場で、完成度の高いアイドル映画といっても過言ではない。死を待つような祖母の姿。過疎の村とダブって映る。懐かしい風景は夏の何処かで匂った原風景。失われていく何かと残される何か。この映画で西吉野は、尾野真千子という才を産み残したという現実までもが重なってくる。 台詞が極端に少なく、時に短い。現実はそういうもの。警察からの電話を受けた時の演出は見事にリアル。人間関係図や父の仕事の話は、いくらなんでももう少し説明した方が良かったのでは?とも思うのだが、これも作り手の意図だろう。父がトンネルに最後に見た光は何か、甥は何を感じて駆け出したか?尾野真千子の魅力に隠れてしまいそうだが、これも重要なテーマを投げかけている。

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Kj