MEMORIESのレビュー・感想・評価
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大友克洋、森本晃司、岡村天斎、今敏、片渕須直らの仕事が堪能できるオムニバスアニメ
映画好きで普段アニメを見ない人にまずお勧めするとしたら、この1本かなと思います。3本のオムニバス作品で、バラエティ豊かなで贅沢なSF&メカ描写が楽しめ、大友克洋、森本晃司、岡村天斎、今敏、片渕須直らアニメクリエイターの仕事を堪能することができます。
現実と虚構が交錯する「彼女の想いで」、本格ミリタリーで描かれる逃亡喜劇「最臭兵器」、途方もない手間をかけて全編1カット風に制作された「大砲の街」、どれも十二分の見ごたえがあり、非常に豪華な3本立てです。劇場で見たのは公開時のみですが、何かの機会でスクリーンでかかることがあるといいなと思っています。
アニメーターの見本市のような、三つの異世界。
独特の空気感ながら、かなり楽しめた。
まず私は、『AKIRA』を観たことがないし読んだこともない。音楽はなんとなく知っているし、バイクやオマージュは観たことがあるがそれぐらいである。
なので、大友克洋という人物の凄さも知らないまま、この感想を書いている。
その上で、「面白かったな」と感じた。三つの短編なので、壮大なストーリーがあるわけではない。が、それでも一つ一つにしっかりとしたボリュームがあってかなり満足した。
まずは『彼女の想いで』。
世界観は、現在観ても"未来"であることに変わりがない。ここは重要ポイント。1995年の作品なのだから、色あせていたり古い未来観があっても良いはずだが、それが無い。新鮮ではないが古いとも感じなかった。
その上で、(正確に言えば違うが)AIによる恐怖を描いているが、これが現代と非常にマッチしている。「うわ怖ぇ」となるし、オペラ寄りの音楽も素晴らしい。恐怖を後押しする材料になっている。
あと、かなり吹替洋画チックであった。喋り方といい、キャラクターの人種といい、この辺りは意図したものだと思う。大友さん原作から来ているイメージかもしれない。現実離れしたことができるアニメとはいえ、違和感なく成立させているのは巧い部分だ。
ストーリーとしては三作の中では最も凝っていたのではないだろうか。伏線の貼り方も良い。観直すと意外な発見も多い。
小粋なセリフがちょこちょこ挟まるが、これはあんまり活きていない印象。吹替テイストにした影響もあるか。
次は『最臭兵器』。
タイトルからすでにネタバレ状態ではあるが、ギャグに振り切っている分問題はない。
最初は、陽気で日本に似つかわしくないテーマと、ザ・日本田舎の風景から始まる。そして不穏な様相から日本全土を巻き込んだ大事件に発展していくのだが、様子が全体的にシュールで面白い。主人公である信男のどこまでも能天気な様子が、大慌てな防衛庁との対比となっている。さらに、一般人が臭いに悶え倒れていく様子や(なんか汚い)黄色だったりと、笑えてくる要素がたんまり入っている。
客観的に観ると、怪獣もしくは災害パニック映画であり、ホラーに分類されかねない内容だ。それをあの手この手で、SFコメディ作品として成立させているのには「巧い」と感じざるを得なかった。
オチまで完璧。個人的にはアメリカから来たお偉いさんの顛末が好き。
構成は比較的シンプルかもしれないが、演出は最も凝っているように感じた。バランスを間違えるとホラーだからね。振り切ることと、振り切りすぎないバランスが巧い。
三作の中では一番好き。
そして『大砲の街』。
大したストーリーはない。あくまで何も起こらない日常である。が、全てが非日常の世界観なので観ていて飽きない。
大砲を撃つためだけに造られた街、という設定。なのに全体がスチームパンク。さらに無駄に多用される人材。形骸化した勲章と階級制度。戦時中の日本を思わせる一般市民の生活。どれだけ文明が発展しようとも変わらない貧富差。子供の持つ夢・憧れと想像力、対比するように描かれる大人の諦めと疲労。
絵本のような描かれ方をしているが、その中に様々なこだわりと皮肉と変態性が詰め込まれている。時間としては一番短いが、一枚一枚の情報量が濃く、充分満足できる作品だった。
このように、三作とも飽きることなく楽しむことができた。なかなか趣深くて楽しい2時間だ。
ただ、音響が全体的に悪いように感じた。テレビで観たからかもしれないが、セリフに聞き取りづらい部分があり、状況を把握できない瞬間があった。特に『彼女の想いで』で多くみられる。
あと、絵柄が大友克洋に寄りがちである(『大砲の街』は別。)。ちょっとクセがあるので苦手な人は苦手かも。
と、まぁ正直今の時代では流行らなそうな雰囲気ではあるが、技を感じられたり、色々と考えさせられたり、特異な世界観ながら惹きこまれる内容だった。
大友克洋好きや、日本アニメ好きはぜひ。(面白いので)ツウになった気分にもなれる。そんな作品。
BS松竹東急で放送して!!
『AKIRA』(1988)で世界に名を轟かせた大友克洋が製作総指揮と、一部監督も兼ねた三部構成のアニメ作品。
EPISODE.1 「彼女の想いで」
宇宙空間の廃墟からの救難信号で駆け付けた4人乗りの小型宇宙船。彼らがそこで遭遇したのは─。
人格を持ったコンピューターが人を襲うというプロットは『2001年宇宙の旅』(1968)も含めSFの定番だが、ホログラフィーを使う点が画期的だし、この作品の真骨頂。
劇場版アニメ作品は普段は見ないが、圧倒的映像表現に、このエピソードだけで充足させてくれる。アニメ映画恐るべし。
音楽も本格的で素晴らしい。これぞまさしくスペースオペラ?!
個人的にはこのエピソードがいちばん最後の方がよかった気も。
ミゲルが「想いで」に取り込まれるラストは何かに似てるなと感じながら見ていたけど、思い出した。
『シャイニング』(1980)ですね。
EPISODE.2 「最臭兵器」
山梨県の新薬開発現場に勤める若手社員の田中。風邪をこじらせ、風邪薬のサンプルと思って開発途中の新薬をかってに飲んだばかりに、とんだ大騒動に─。
些細なことが大袈裟な話に発展し、オチを付けて終わるのは、伝統的な落語の手法(サゲ)だが、大袈裟具合が半端じゃない。アニメならではの見せ場満載。
エピソードのタイトルで、ほぼネタバレしているとはいえ、田中がどのような変異を遂げるのか、もう少し引っ張って欲しかった。
EPISODE.3 「大砲の街」
製作総指揮の大友克洋みずから監督も兼ねた寓意的短編。
アニメファンの方から怒られるかも知れないが、前の二作品は今の技術なら実写化も可能。ただし、本エピソードだけは別。
砲弾を製造し、大砲を撃つことだけにすべてが浪費される不毛な街。
一体誰と、何のために戦っているのか知らされないまま、日々の教育や報道で砲撃手に憧れる少年は、朝晩、砲撃手の肖像画への敬礼を欠かさない。実際の砲撃手が太った醜い中年とは知らずに─。
精緻で流麗な線画でそれまでの「汚い」「荒い」といった劇画のイメージを一新させた大友が、悪趣味な風刺画のように敢えて醜くデフォルメした人物像を通して人間の愚かしさや単純さを具現化。人間の深層を大胆かつシンプルに戯画化した表現力は、下手なメイクや安直なCGでは到底及ばないだろう。
長回し映像のようなワンカットの手法も秀逸。
この作品の公開当時、「大砲の街」に込めた反戦メッセージを見誤る人はいなかっただろう。しかし、過激なゲームが当たり前になり、SNS上では攻撃性剥き出しの情報が飛び交う現在の若者は、「大砲の街」をどのように受け止めるのだろうか。作品のメッセージが今後も正しく伝わることを願いたい。
松竹配給作品。
だったら、BS松竹東急でも放送して!!
アニメ制作スタジオ
勢揃いで製作された
大友作品のオムニバス作品
ストーリーの軸にある展開やポイントは
アキラだなぁ。ではあるが
それぞれがしっかりエッジを持って展開されているなぁ。
と観ていて思った。
とは言え、ストーリーの展開の軸がわかり
トッピングされている要素を理解すればする程
吉祥寺界隈で呑んでおられると伺う御大の
ジョーク節が見えてくるから不思議な気分になった。
geeks rulesTはあくまでも洒落の一つだろうから
近いうちのアニメスタジオぶん回し新作を
期待したいものである◎
忘れられない
感想
『彼女の想いで』
マダムバタフライ、マリアカラス、AIの叛乱、
をオマージュアンドマリアージュ。永遠不滅
の愛がテーマ。
人の思い出に支配され離れられなくなる男の、
怖ろしくも美しい忘れられない話。
『最臭兵器』
ある実験薬により、自分自身が奇妙な
殺人的兵器に成り変わってしまった男。
臭いに特化した笑える忘れられない話。
『大砲の町』
軍国に生きる純粋な軍国少年の、観る方に
とってはブラックユーモア溢れる寓話。
大砲に特化したある意味忘れられない話。
3作品全て面白い。忘れられないー。
MEMORIES
初鑑賞 1995年12月
丸の内ピカデリー
⭐️4.5
バラエティ豊か
バラエティ豊かな3つのエピソードのオムニバス映画
大友克洋の作品は観ないと損した気になる
この作品、今、ようやく観ることができた。
エピソード1は星野之宣を思い出すようなSF作品。
とても良くできたストーリー
エピソード2の最臭兵器は発想が素晴らしい。
思わず笑ってしまった。
エピソード3は世界観が独特。わかりにくいけど見入ってしまう。
エンドロールにスタジオジブリが出てきてちょっとびっくり。
めちゃくちゃに贅沢な107分
色んな人にオススメしたい1本!
息をつく間もなく引き込まれる!
そしてなんて豪華な制作陣だこと…
3つそれぞれの監督の色がめちゃくちゃ出ていて、ぜんっぜん飽きない!
私は今敏が好きなので、「こんなところに今敏作品があったのか😭」と掘り出し物だった!
なのでやっぱり、私は1つ目の作品が1番好きだった!虚構と現実が入り乱れる今敏ワールド…!決してハッピーエンドではないけど、不思議と心地よい余韻に包まれるエンド…。
2作目も楽しかった!シン・ゴジラばりの兵器と攻撃に、わーぎゃー言いながらもなんだかんだケロッと生き延びている主人公がシュールだった笑
被害がとんでもなさすぎて、「もうそろそろくたばれよ!」と心の中で何度かツッコミをいれた(ひどい笑)
最後の結末も、あまりにもテロすぎる笑
全ての元凶ここにあり!
3作目は、作画と世界観に惚れ惚れ!家族の生活のすべてが、大砲(戦い)によって成り立っているというのが、風刺的だったし、「みな、なんのために戦っているのかもよく分かっていない」という状況もなかなか感慨深かった。
西村寿行先生の(滅びの宴)
1995年と言うとオウム真理教と阪神淡路大震災の年だ。
この頃は余り良い思い出無いな。Macのクワドラ840avに買い換えた。VM2で大戦略をやる事に飽きたので。いずれにしても、バブル後でやっとWindowsが出たと思って、奴らもやっとMacに追いついたか!などと余裕を見せて、家に引きこもっていた頃だ。
『彼女の想いで』
(思い出は逃げ込む場所じゃない)
彼女の想いで、作られた仮想現実で犠牲になってしまった男達の悲劇。プッチーニのマダム・バタフライの赤い薔薇は彼女の思い出として、死の宇宙を漂う。
想いで、思い出になるって事だ。
『最臭兵器』
西村寿行先生の(滅びの宴)を連想させた。
『大砲の町』
言うまでもなく、アニメを超えた芸術作品。
表現を通じて伝えようとする真摯さ
ちょっと難解だったり唐突な感じを受けやすい、主流のSFアニメ映画とは違った”別枠”感のある作品です。そのため、一般受けとしては多少損をしているかも知れません。
ただ、その時代のスタンダードを凌駕したきれいな映像に巨匠の英智が込められており、一度心の中に受け入れてしまえばなかなか忘れることのできない刹那が集成されています。
とりわけ私としてはレビュータイトル ↑ に挙げた印象を三小品から夫々感じていますが、なかでもその後の人生の中で時折思い出すシーンがこれ
「思い出は、逃げ込む場所じゃない」
その通りですね、でも愛おしくて悲しいです、でもその通りなんです。
人生の過半が思い出になるにつれ、この言葉には感謝しています。
タイトルなし
どの話も異なったテイストで確固たる世界観が構築されており、すぐに引き込まれた。
さすが大友克洋、当時のアニメ映画にしては、現代ヒットしてるアニメ漫画が二番煎じなのではないかと思わせられるくらい、メカニックや人物画の精密さに圧倒されてしまう。
必ずしもハッピーエンドでなかったり、多くを語らずとも、視聴者の想像に委ねたりクスッと笑えるストーリーなのも良かった。
なぜ今まで観ていなかったのか?
今日、コロナワクチン接種して静養しながら観ているが、冒頭からCOLONAの文字にビビる。
とは言え、話が始まってしまえば、三話三様、それぞれに色味の違ったスリルや笑いや風刺がギュッと詰まった濃い作品。
近年、デジタルアニメーションを観る機会の方が圧倒的に多くなっている昨今。セルアニメでこれだけの仕事をこなしている画面を観ると感動的ですらある。デジタルでれば今やよくあるワンカット的演出も公開当時であれば、どれほどの驚きだったことか。
ホントこの時代のアニメはヤバすぎ。
SFホラー、ブラック・コメディ、風刺意欲作
大友克洋ら3人のアニメ監督による1995年のオムニバス。
3エピソード共ジャンルも違い、それぞれ面白味がある。
EDクレジットを見ると、今や人気のアニメ監督やアニメクリエイターが携わっているのもお宝的発見。
宇宙のゴミ処理船が救難信号を受信し、向かった宇宙の墓場の遭難船の中で、一世紀も前のオペラ歌手の怨念に襲われる、森本晃司監督『彼女の想いで』。
SFホラーといった趣向で、3エピソードの中では一番好き。
宇宙の幽霊船の中で体験したのは、ホログラムか、幻覚か、それとも…?
映像も背景も緻密で、それも相まって恐ろしさもじわじわ盛り上がる。
脚本に故・今敏、音楽に菅野よう子が参加している。
風邪気味の研究所職員がある薬を風邪薬と謝って飲んでしまった事から人を死に至らしめるほどの悪臭を発生させてしまい、国家も関わる大騒動に発展する、岡村天斎監督『最臭兵器』。
ブラックなパニック・コメディで、3エピソードの中で最も見易い。
悪臭を発生させる原因となってしまった男の災難、自衛隊や関係各位のてんやわんやぶりが滑稽。
一人の平凡な男を亡き者にする為に、まるでゴジラ並みの攻撃。戦車やヘリなどもリアルに描かれている。
スタッフに『スプリガン』の川崎博嗣、『アニマトリックス』の川尻善昭が参加している。
敵めがけて砲撃が繰り返される架空の都市の一日を描いた、大友克洋監督『大砲の街』。
3エピソードの中で最も好み分かれそうだが、その技法に唸らされる。
約20分ほど、劇中の一日をワンカットで見せた映像、演出、編集に圧巻!
独特な作風やキャラデザインも含め、不思議な感覚になる異色作にして意欲作。
戦争や軍事訓練、軍需産業への風刺も込められている。
スタッフに『この世界の片隅に』の片渕須直が参加している。
初オムニバス
3つの短編から成るオムニバス作品。こういうの初めてでサクサク観れて面白かった。途中寝たけど笑(新文芸座の大友克洋ANで鑑賞)
1.彼女の思い出
宇宙にてスペースデブリと化した人工衛星の処理などを営む4人のクルーが救難信号を受け、遭難船に乗り込むSFホラーテイストの作品。
救助に向かったミゲルの声が山寺宏一!そんで宇宙!もう完全にカウボーイビバップのスパイクで再生してしまった!笑
明らかに外見よりも広くて薄暗い船内を捜索するシーンがなかなか怖い鏡に誰かが写ってたり、写真の中が変化したりとコテコテのホラー感も画の実感とあいまってさらに怖い笑
ラストはエヴァの思い出に取り込まれて全員消息不明に。ビックリするくらいにバットエンドだがそこがいい笑。
2.最臭兵器
製薬会社に勤める田中が風邪をこじらせ、風邪薬と勘違いして飲んだ薬のせいでめっちゃ臭くなり大変なことになる作品。
なんじゃそりゃ!めっちゃシュール!何臭いんだかもわからない!笑
終いには臭気が黄色の気体となり、田中の体にまとわりつく。うわ、くさそ笑。
頭空っぽで見られるパニックコメディー。キャラデザが浦沢直樹ぽかったけど違ったみたい。コントみたいだった笑。
3.大砲の街
ここで寝ただから覚えてない笑。確か長回しの多い作品で兵隊みたいに規則正しく動く人がたくさんいた。くらいの印象笑。いつかもう一度見たいな
あとあと調べると音楽担当が石野卓球や菅野よう子だったりと豪華なメンツ!彼女の思い出が1番面白かった!
20151023 シュールなオムニバスアニメ
オムニバス形式の、それぞれテイストの異なる3本立ての映画です。久しぶりに質の高いアニメーション作品を観たくて観ました。21世紀の現代だからこそ、妙に皮肉というか、ブラックユーモアというか。暗に何かを意図しているような気がしてしまいます。どれもそれぞれ面白さがあるので選べません。大人のためのアニメですね。
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