兵隊やくざ

劇場公開日:

解説

有馬頼義の原作“貴三郎一代”より「世界詐欺物語」の菊島隆三がシナリオを執筆「黒の超特急」の増村保造が監督した兵隊もの。撮影は「ごろつき犬」の小林節雄。

1965年製作/102分/日本
原題または英題:Hoodlum Soldier
配給:大映
劇場公開日:1965年3月13日

あらすじ

昭和十八年、極寒の地ソ満国境に近い孫呉の丘に、関東軍四万の兵舎があった。そんなところに、浪曲師の門を追われ、やくざの用心棒をやっていた大宮貴三郎が他の新兵といっしょに入隊してきた。そして、この貴三郎の指導係を命じられたのが、名門生れのインテリで幹候試験をわざとすべった三年兵・有田であった。星一つちがえは天地ほどの隔りをもつ軍隊で、貴三郎の倣慢な態度は上等兵達の敵意を買った。なかでも大学の拳闘選手だった黒金伍長は砲兵隊の権威をかさにきて貴三郎を痛めつけた。腹のおさまらない貴三郎は、数日後単身、再び黒金と相対した。しかし相手は多勢さすがの貴三郎も血まみれになった。だが、そこへ有田が駆けつけた。古兵の出現に事態は逆転し、黒金は指の骨を全部折られたあげく泣き寝入りとなった。そんなうちに貴三郎と有田の間に力強い男の絆が生れた。だが執念深い黒金は、全師団合同大演習の夜、再度貴三郎を襲い、歩兵隊と砲兵隊の喧嘩にまで発展してしまった。やがて事件が上官にも知れ、貴三郎は外出禁足令をくらった。だがその夜貴三郎は兵舎をぬけ出し、将校専用の芸者屋で音丸と遊び戯れていた。身柄を預かる有田は自ら制裁することを誓って、貴三郎を不問に附した。やがてここにも夏が過ぎ秋も過ぎようとしていた。戦況は切迫し、有田の満期除隊の夢も潰え、貴三郎のところには、南方へ出動命令が下された。だが、今は有田と離れがたい心情にかられた貴三郎は、故意に無断外出の禁を犯し、営倉入りした。やがて大隊全員に転進命令が下った。有田に恩返しをするのは、この時以外に無いと、貴三郎は有田をともなって、脱走を計った。部隊を乗せた列車は切り離され、有田と貴三郎の乗った機関車は荒野をまっしぐらにばく進していった。

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(C)KADOKAWA 1965

映画レビュー

3.0へそ酒

2025年5月18日
iPhoneアプリから投稿

機関車に仁王立ちのラストが良い。勝新の野太さをよく示す。粗暴に過ぎて欠点だらけであるが、それでいながら道がしっかりしているので、可愛がられるという独特のキャラである。そのバディがインテリ反主流派という組み合わせは興味深い。実にマンガっぽい。

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Kj

3.0タイトルなし

2025年4月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

ドキドキ

YouTube 角川シネマコレクションにて鑑賞

地上波ではもう無理だろうなあ
シリーズ9作もあるそう
菊正宗、呑みたい

映倫番号 13852

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七色姫

3.5黙って俺についてこい

2025年4月20日
Androidアプリから投稿

楽しい

興奮

勝新が殴り込みに行って大立ち回りをするたびに、なぜか笑みがこぼれてくる。
なるほど、これが〈痛快〉ってやつだね。

義理人情やドスの斬り合いなんかは「やくざ」っぽいけど、「兵隊」も同じようにエンタメの為に用意された装飾であって、田村高廣と勝新によるバディものの娯楽活劇になっている。

しっかり、成田三樹夫も餌食にされているあたり、溜飲が下がリますね。

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K・M

4.5さながら愛の逃避行

2023年4月7日
iPhoneアプリから投稿

「兵隊やくざ」という物騒なタイトルとは裏腹に、奏でられているのは甘美なメロドラマだった。勝新太郎演じる大宮二等兵と田村高廣演じる有田上等兵の関係には、単なる上司と部下の信頼関係以上の何かが時折瞬いている。

これを「BL」という語彙で括るのは何か悔しいものがあるので近しい構造を有した作品を挙げるとすれば三浦健太郎の『ベルセルク』だろうか。やはり一匹狼の荒くれ者と頭脳明晰な上司というのは関係性としてかなり「尊い」よなあ。暴力と制御の危うい均衡。ともすれば一瞬で崩れ去ってしまうガラス細工のような。そのフラジャイリティが格別の耽美をもたらす。

監督に増村保造を据えたというのも大きな勝因だろう。しなやかでモダンな増村の作風によって描き出される敗戦直前の満州からは、硝煙や貧困といった戦争の泥臭いイメージがほとんど脱臭されている。こうした平坦できめ細かな画面から唐突に血飛沫が噴出する瞬間はきわめて鮮烈でエロティックだ。一方で大宮が女郎の女と「臍酒」という遊びに興じるシーンは明らかな性的描写にもかかわらず妙に恬淡としている。あまつさえ大宮自身も「そういう気分にならねえ」とそっぽを向いてしまう。

思うに、大宮にとっては暴力こそが最も苛烈で情熱的な性行為なのだ。有田が上官命令で大宮に懲罰を下すシーンでは、有田は竹刀で大宮の頬を一度ぶっただけで懲罰を終えてしまう。するとその後大宮は自分の顔に岩をしたたかに打ちつけ血だらけになる。そして大宮の傷の深さを見た上官は、有田を「よくやった」と褒める。もちろん大宮はこうなることを見越したうえで策略的に自分の顔に傷をつけたのだと思うが、それにしたってやりすぎだ。思うに大宮は、敬拝する有田が自分を殴ってくれることでより高次な結び付きが可能になると考えていたのではないか。しかし有田は元来暴力を好まず、懲罰の折にも情が走ってつい手を緩めてしまう。大宮にしてみれば不完全燃焼だ。ゆえに彼は自身の満たされなさを埋めるために自涜的に自傷行為に及んだ、という側面もあるように思う。

また大宮が女郎の女になぜか猛烈に好かれているが、それというのも、大宮が「誰にでも暴力を振るう」という点において「誰とでも寝る」女郎と同様の悲哀を抱えているからではないか。

終盤、南方派遣が決定した大宮が有田を殴りつけるシーンは衝撃的で切ない。これに関しても「上司に不義をはたらくことで南方派遣軍から外してもらう」という大宮の策略があるのだが、それを大義名分とばかりに馬乗りになって何度も有田の顔を殴りつける。暴力を振るってもらえないくらいならこちらから振るってやろうという腹だ。しかし暴力では有田と繋がり合うことができないことは大宮も重々承知している。それは策略という必然性が許した一度限りの愛の交感なのだ。切ない。

戦局はますます悪化の一途を辿り、遂に全部隊に出征命令が下る。兵隊たちは汽車に乗り込む。幾時間か経った頃、大宮と有田は汽車の先頭へ向かい、機関車と客車のジョイントを外す。大勢の兵士を乗せた客車を尻目に、大宮と有田の乗った機関車は満州の平野をどこまでも悠然と突き進んでいく。それはさながら愛の逃避行だ。しかも本作全体に挿入される有田のモノローグからもわかるように彼らの脱走は成功を収めることができたようだ。

その後二人の関係がどのような顛末を迎えたのかは明かされないが、正直うまくはいかないんじゃないかなあと思う。そこを敢えて描かず機関車が去り行くカットで映画を終幕させた増村の徹底した耽美主義に拍手を送るべきだろう。

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因果