BU・SU

劇場公開日:1987年10月31日

解説

片田舎で育った性格ブスの女の子が東京での生活で人にもまれ、自分のカラを破り自立していく姿を描く。脚本は内館牧子が執筆、監督はCMディレクターでこれが劇場用映画第一回作品となる市川準、撮影は「ドン松五郎の生活」の小林達比古がそれぞれ担当。

1987年製作/95分/日本
原題または英題:Busu
配給:東宝東和
劇場公開日:1987年10月31日

あらすじ

18歳になる森下麦子は片田舎で生まれ育ち、性格のひねくれた暗い女の子だった。そんな“心のブス”を治すため上京し、置屋を営む叔母・胡蝶のところで鈴女という名前をもらい芸者見習いをしながら高校に通うことになった。しかし、ここでも鈴女はなかなか皆に溶け込むことができない。やがてボクシング部のヒーロー・律田邦彦に思いを寄せるが、彼には京子という校内でも評判のきれいな彼女がいた。あるとき、置屋の老人・辰巳がそんな鈴女を見かねて八百屋お七の墓へ連れて行った。そして、これまで憎んでしかいなかった母・雪乃の過去を初めて聞かされた。彼女の中で何かが少し変わり始めていた。鈴女は学校で同級生の女の子が京子たちから陰湿なからかいを受けているのに腹を立て、喧嘩をしてしまう。それを止めに入った邦彦を今度はネクラ派の男の子が誤って傘で突き、腕に傷を負わせてしまった。その頃、鈴女を可愛がってくれた売れっ子芸者の揚羽が駆け落ちした。ショックは大きかったが、もう逃げるのはやめようと決めた鈴女は、半ば押しつけられた秋の文化祭での役割を引き受け、「お七」を踊ることにした。胡蝶の厳しい特訓が始まった。しかし、一人では仕掛けが難しいのでネクラ派の友人二人に手伝ってもらうことにした。文化祭当日、可憐に「お七」を踊る鈴女だが、最後のところでハシゴが壊れ、床に落ちてしまう。思わぬ大失態に舞台の下で座り込む鈴女。ステージでは次のプログラムであるアイドル・グループのピンク・ジャガーが登場し、華やかにショーが始まった。すぐさま邦彦が駆け寄り、鈴女の手を取ってグラウンドへ連れ出した。そしてファイヤー・ストームに火をつける。炎の中に浮かぶ鈴女の踊る姿。生まれて初めての解放感に彼女の表情は明るかった。

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映画レビュー

5.0 あの時代のあの空気、あの風景

2025年8月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

幸せ

癒される

カワイイ

市川準監督のデビュー作。悪い噂に追われて田舎から逃げるように上京し、親戚の芸者屋に住む性格ブスな女子高生が主人公。心を閉じ、高校にも馴染めず、芸者修行にも身が入らない彼女が、様々な人との出会いの中で新しい一歩を踏み出していく姿を描いている。1987年のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画第8位、さらに読者選出では第2位に選ばれた。読者選出のほうが順位が高く、この暗い翳りを帯びた青春映画が映画ファンの強い支持を得ていたことがよくわかる。公開当時のポスターを見ると、映画会社が必死に明るい映画に見せかけようとしてるのが今となってはちょっと笑えるが、公開前は暗い映画じゃウケないと思われてたんだろうなあ。VHS以降では映画の内容を的確に表したデザインに改められた。

僕が最初にレンタルビデオ店で見かけたのは高校生か大学生の頃。興味を持った日本映画の1つだったんだが、なぜかなんとなく観ることがなく過ぎてしまい、実際に観たのはなんと市川監督が他界した後の日本映画専門チャンネルでの追悼特集であった。その時ももちろん面白いことは面白かったものの、あくまで数ある面白い市川監督映画の中の1本という感じだったんだが、その後あるきっかけ(どんなきっかけかは忘れた。あるいはきっかけなんて無かったかもしれない)でふとまた観たくなって観直したら、映画の中の1980年代後半の空気と風景が僕の心を強く惹き付け、捉えて離さなくなってしまった。結局DVDを購入し、その後も現在に至るまで10回から数十回も繰り返し観ることになる。とにかくこの映画の中の人間とか風景とか事物とか世界とか存在とか全てがたまらなく愛おしい。

こういうことはごく稀にではあるが起こることがある。この『BU・SU』には間違いなく80年代後半のあの頃の空気と風景と世界が切り取られていて、多分それが僕の心を激しくとらえ、揺さぶるんだろう。『つぐみ』もそういう映画だったが、そこに関しては東京という“都市”を舞台とした『BU・SU』のほうが個人的にはより強く感じる(僕は東京に住んでいたわけではないが、それでもなぜか)。市川準という人はそういう能力がとても高い人なんだと思う。

主演の麦子役の富田靖子はもちろん素晴らしく、彼女のベストと言ってもいいんではないだろうか。またその他の俳優陣もそれぞれに印象に残る。大楠道代、伊藤かずえ、高嶋政宏、市川の盟友とも言うべきイッセー尾形……。孤独に文庫本ばかり読み、やがて姿を消す同級生役の白島靖代も個人的に印象的だった。キャストに記載されている以外のキャストはwikipediaによると辰巳役がはやしこば、担任の中川役が中村育代、同級生の清水岩男役が星野雄史、桜子役が広岡由里子、キャップを被ったボーダーシャツの男子生徒役が山崎直樹、麦子をラブホに連れ込もうとするナンパ男役が峯のぼる、ビアガーデンで麦子たちに八百屋お七を勧める女の役は不明、東京で再会する故郷の友人ナナ(これ、すごくいいエピソードですよね)役が島崎夏美となっている。どこまでが正しいかは不明だが、広岡由里子と峯のぼるは間違いない。ビアガーデンで会う女役の女優さん、誰なんだろうなあ。この映画にあまりにのめり込んじゃってるんで気になる。

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バラージ

3.0 心の閉塞感=心のブス

2025年7月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

幸せ

1987年公開作品

2度目の鑑賞
久々
今世紀初めてかもしれない

監督は『つぐみ』『トキワ荘の青春』『東京夜曲』『竜馬の妻とその夫と愛人』『トニー滝谷』の市川準
脚本はTBSドラマ『クリスマス・イブ』NHK朝ドラ『ひらり』『私の青空』の内館牧子

粗筋
家庭の都合もあり親と離れ片田舎から東京の高校に転入してきた森下麦子
神楽坂の置屋の女将で叔母の胡蝶に住み込みで芸者見習いとして稽古に運び屋に忙しい毎日
根暗で口数少ない麦子ではあったが芸者の卵ということで文化祭の出し物を発表する立場を押し付けられてしまう
胡蝶に頼み込み歌舞伎の「八百屋お七」をやることに
黒子は桜子と清水

CMクリエイター市川準映画監督デビュー作
CM制作出身らしい映画作品
編集の繋ぎ合わせは青春のイメージ
意味がないカットも目立つ
監督なりに意味はあるんだろうけど

根暗の女子高生が心を開き明るくなる話なのだがその過程が今ひとつ

石原裕次郎ではないが映画は本来映画館で観るものだが特にこの作品はそう思う
映画は映画館で観ることを前提に作っているわけだからTVやスマホやタブレットでは充分に楽しめないのは当然
宮城県ならフォーラム仙台あたりで再上映されたものを観たいものだ

TVドラマの脚本家内館牧子の今のところ唯一の映画作品の脚本提供
内館牧子でノベライズされた講談社X文庫の小説は10代の頃読んだ

内館牧子は見た目のブスとして麦子を描いているが市川準は性格ブスとしてこの作品を撮っている
しかし広岡由里子演じるブスが出る
富田靖子がブスなら日本人女性の99%はブスだ

こういうキャラなので主演のわりに富田靖子の台詞は少なめ

教室で席に座ったままの他を寄せ付けない麦子に言い寄る男子を彼女が右手一本の裏ビンタで弾き返すシーンは初見から印象に残っている

稽古に身が入らないために罰として人力車と共にランニングするシーンも印象的

前世紀若い頃に観た強い違和感は高校生なのに制服がないこと
しかし首都圏ではさほど珍しいわけでもなさそうだ
おそらく予算の関係で制服を用意できず俳優の私服で撮影されたのだろう

「教室にいる人は死んではいけない」と酔っ払いの女がビアガーデンで話しかけてくる
無反応の麦子
死んでいけないのは学校関係者だけではないでしょう

登校拒否して千葉に行った麦子に説教する叔母役の大楠道代
「逃げて逃げて逃げまくるがいいよ。そうやって逃げてるうちに何か見つかるかもしれないね」
良いものなら良いけど見つかるものが良いものとは限らないね
探すを諦めてしばらくしたら見つかることもあるけど

八百屋お七はトラブルのため大失敗し幕引きという悲しい展開
普通大成功して明るくエンディングでしょ
『フラガール』にしろ『スウィングガールズ』にしろ
モヤモヤした感じで終わりは突然やってきた

エンディングテーマは原由子

エンドロールは様々な表情の富田靖子
あっこれはもしかして富田靖子をプッシュしたいアイドル映画なのか

配役
東京の凌雲高校の3年B組に転入してきた女の子で芸者修行しながらお茶屋のお運びさんとして先輩芸者や客の料理を配膳している心のひねくれた陰気臭い性格で口数が少ない森下麦子(鈴女)に富田靖子
置屋「蔦屋」の女将で麦子の叔母の胡蝶に大楠道代
「蔦屋」の跡取りで人気芸者胡蝶の娘で麦子とは従姉妹同士の揚羽に伊藤かずえ
3年B組の生徒でボクシング部所属の津田邦彦に髙嶋政宏
3年B組の生徒で津田の彼女で文化祭の実行委員の京子に藤代美奈子
お座敷の客で揚羽と結婚したい北崎にイッセー尾形
3年B組の生徒で登校しなくなる怜子に白島靖代
「蔦屋」の先輩芸者のぽん太に室井滋
「蔦屋」の先輩芸者の春千代に伊織祐未
「蔦屋」の先輩芸者の菜の花に香苗圭子
「蔦屋」の芸者たちの色々と世話をする専門の人の辰巳にはやしこば
3年B組の担任教師で社会科を担当する中川に中村育代
3年B組の生徒に麦子の隣の席に座っている清水岩男に星野雄史
3年B組の生徒で虐めを庇ってくれた麦子と親しくなる桜子に広岡由里子
キャップを被ったボーダーシャツの男子生徒に山崎直樹
邦彦のトレーナーに輪島功一
宴席で揚羽に着物の時にブラジャーを付けるかどうかを尋ねるお座敷の客に大塚周夫
両隣にいる芸者たちに知人の役者の話を聞かせるお座敷の客に中村伸郎
お運びをする麦子に肩を揉むよう命じるお座敷の客にすまけい
TV番組の司会者に小倉久寛
凌雲高校の文化祭にゲスト出演したピンクジャガー(浜田範子&鈴木幸恵)にピンクジャガー(本人役だが凌雲高校OGという設定)
スナック&喫茶店を営む麦子の母の森下雪乃に丘みつ子
麦子を口説いて喫茶店に連れて行ったあとラブホテルにも連れて行こうとしたサラリーマン風のナンパ男に峯のぼる
麦子の故郷での友人のナナに島崎夏美

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野川新栄

5.0 主人公麦子(演:富田靖子氏)の眼差しは素晴らしく、確実に女優へステップアップした作品でしたね。

2024年12月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

目黒シネマさんにて今年で11回目になる「~人を観るよろこび 第11回 市川準 監督特集~」開催(2024年11月24日~11月30日)。本日2本目は富田靖子氏主演『BU・SU』(1987)。

『BU・SU』(1987)
「禁煙パイポ」「金鳥タンスにゴン」「エバラ焼肉のたれ」「ヤクルトタフマン」など大ヒットCMを手掛けた市川準監督の監督デビュー作。原作は内館牧子氏、主演は富田靖子氏。『アイコ十六歳』(1983)や大林宣彦監督の名作『さびしんぼう』(1985)、『姉妹坂』(1985)の明朗快活な役柄のイメージ、主題歌の原由子氏『あじさいのうた』も明るくポップなのでキラキラした青春アイドル映画と思いきや一転、複雑な家庭環境からひねくれた根暗で陰気な少女役、ラストまでほとんど笑わず、公開当時驚愕した記憶がありますね。
久々に見直して観ると、文化祭で歌舞伎の演目「八百屋お七」に挑戦することになり、今までの鬱屈した生活から脱して、顔を上げて真剣に取り組む主人公麦子(演:富田靖子氏)の眼差しは素晴らしく、確実に女優へステップアップした作品でしたね。

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共感した! 2件)
矢萩久登

3.0 ヒロインは別に性格ブスというわけでもないし、なぜこんなタイトルにし...

2023年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ヒロインは別に性格ブスというわけでもないし、なぜこんなタイトルにしたのかよく分からない。
特に大きな事件もなく、日常生活が淡々と描かれていく様子は退屈ではあるが、悪くはなかった。

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省二