復讐するは我にあり

劇場公開日:

解説

九州、浜松、東京で五人を殺し、詐欺と女性関係を繰り返した主人公の生いたちから死刑執行までを辿る。昭和五十年下期の直木賞を受賞した佐木隆三の同名の原作の映画化で、脚本は「ギャンブル一家 チト度が過ぎる」の馬場当、監督は「にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活」の今村昌平、撮影は「野性の証明」の姫田真佐久がそれぞれ担当。

1979年製作/140分/日本
原題または英題:Vengeance is Mine
配給:松竹
劇場公開日:1979年4月21日

あらすじ

日豊本線築橋駅近くで専売公社のタバコ集金に回っていた柴田種次郎、馬場大八の惨殺死体が発見され、現金四十一万円余が奪われていた。かつてタバコ配給に従事した運転手榎津厳が容疑者として浮かんだ。榎津は駅裏のバー「麻里」のママ千代子を強姦、アパートに連れこんで関係を強要し続けるなど、捜査員の聞き込んだ評判も悪い。二ヵ月前までは、ヌードダンサー上りで「金比羅食堂」をやっていた吉里幸子と同棲、母子家庭をガタガタにもした。数日後、宇高連絡船甲板に幸子と両親宛ての榎津の遺書と、一足のクツが見つかり、投身自殺の形跡があった。偽装と疑った警官が別府市・鉄論で旅館を営む榎津の実家を訪れると、老父鎮雄、病身の母かよ、妻加津子は泣きながら捜査の協力を誓う。一家は熱心なカトリック信者だが、戦争中、厳は網元をしていた父が軍人に殴られ、無理矢理舟を軍に供出させられた屈辱の現場を目撃して、神と父への信仰を失い、預けられた神学校で盗みを働き、少年刑務所へ送られた。その後も犯罪と服役を繰り返し、その間に加津子と結婚した。結婚後、加津子も入信したが、榎津に愛想をつかし離婚、その後、尊敬する義父の懇望に従い再入籍。榎津は出所する度に父と加津子との仲を疑い、父に斧を振り上げるなど、一家の地獄は続いた。浜松に現われた榎津は貸席「あさの」に腰をすえ、大学教授と称して静岡大などに出没、警察をあざ笑うような行為を重ねる。千葉に飛んだ榎津は裁判所、弁護士会館を舞台に老婆から息子の保釈金をだまし取り、知り合った河島老弁護士を殺して金品を奪った。この頃になると警察史上、最大といわれる捜査網が張り張り巡らされていた。浜松に戻った榎津の素姓に「あさの」の女主人ハルやその母、ひさ乃も気づき始めた。しかし、榎津に抱かれるハルは「あんたの子を生みたい!」とその関係に溺れ、元殺人犯で競艇狂いのひさ乃も榎津を逃そうとする。だが、そんな母娘を榎津は絞め殺し、「あさの」の家財を売り飛ばし、電話まで入質して逃亡資金を貯え、七十八日後、九州で捕まるまで詐欺と女関係を繰り返した。絞首台に上がる直前、最後の面会に来た父に榎津は「おやじ……加津子を抱いてやれ……。人殺しをするならあんたを殺すべきだった」と毒づく。残された一家にも重い葛藤があった。死の床にある母は「私も女じゃけえ、お父さんを加津子に渡しとうなか」と言い続けた。父も地獄のような家を守ってきた嫁が心底かわいく、信仰とのはざまに悩みぬく。そんな義父を加津子は無性に好きだった。榎津の処刑後、別府湾を望む丘に、骨壷から、榎津の骨片を空に向って投げる、鎮雄と加津子の姿があった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第3回 日本アカデミー賞(1980年)

受賞

作品賞  
監督賞 今村昌平
脚本賞 馬場当
助演女優賞 小川眞由美

ノミネート

主演男優賞 緒形拳
助演男優賞 三國連太郎
助演女優賞 倍賞美津子
音楽賞 池辺晋一郎
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映画レビュー

4.0【神に見放された、倫理観の欠片も無き連続殺人鬼の男及び、彼の周囲の鬼達を描いた気持ち悪き事限りなきシーン満載の、昭和情念ドロドロ映画。神の怒りを示したラストシーンは衝撃的です。】

2025年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

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NOBU

4.5タイトルが秀逸、キャスティングが神、以上で勝ち確。

2025年5月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

難しい

1979年公開、配給・松竹。

【監督】:今村昌平
【脚本】:馬場当、池端俊策
【原作】:佐木隆三〜『復讐するは我にあり』

主な配役
【榎津巌(えのきづ いわお)】:緒形拳
【榎津鎮雄】:三國連太郎
【榎津かよ】:ミヤコ蝶々
【榎津加津子】:倍賞美津子
【浅野ハル】:小川真由美
【浅野ひさ乃】:清川虹子
ほかに、殿山泰司、菅井きん、火野正平、根岸季衣、河原崎長一郎、フランキー堺など。
※佐木隆三本人、石堂淑郎も出演している!

1.実話を下敷きに佐木隆三が執筆

「西口彰事件」をベースにして、佐木隆三が長編小説として仕上げ、直木賞を受賞した。
映画化に際しては、複数の映画人が手をあげていたが、業界に不慣れな佐木隆三の曖昧な対応もあり、かなりのトラブルになっている。
結果として、一番最後に佐木隆三にアプローチした今村昌平が権利を獲得した。

2.大ヒットしたが寅さんには敵わない

興行収入6億円の大ヒットだが、松竹においては、盆と正月の『男はつらいよ』2作に続く3位だ。

寅さんの人気ぶりが改めて分かろうというものだ。

3.タイトルが素晴らしい

佐木隆三の原作タイトルが秀逸。
新約聖書(ローマの信徒への手紙・第12章第19節)から取ったという。

「我にあり」の我は、神を示すものらしいが、本作のタイトルとしては、多様な解釈が可能。

4.キャスティングが素晴らしい上に熱い演出。

実力派をズラリと揃え、しかも、
その俳優陣がまさに「体当たり」の演技を見せた。

これは、監督としての力量や信用が大きいのだろう。

ちなみに公開当時の年齢。

◆緒形拳 41歳
◆三國連太郎 56歳
◆ミヤコ蝶々 58歳
◆倍賞美津子 32歳
◆小川真由美 39歳
◆清川虹子 66歳
◆根岸季衣 25歳
◆北村和夫 52歳
◆火野正平 29歳

◆佐木隆三 42歳
◆今村昌平 52歳

5.まとめ

何度も観たが、最初は実話ベースと知らずに見ていた。
知らず知らずのうちに、緒形拳演じる榎津巌に肩入れしている自分に驚いたものだ。

困った立場にある者や、自分より弱い者を狙い、
ときに騙し、ときに暴力で金銭を奪う。

本質は「卑怯な極悪人」にすぎないが、

・父親や妻などとの人間関係、
・神の存在(たびたび歌われる「島歌」含めて)、

それらが「見えざる手」のように、
榎津巌を犯罪に走らせるのか?などと深読みを試みたりする。
しかし、何度観ても何も分からない。

榎津巌の遺骨を投げるシーン、
何度も空中で静止させる。
なにを暗示しているか、私には分からない。

結論、
昭和が生んだ極上のクライムムービー。
☆4.5

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Haihai

3.5人間は高尚な生き物ではない

2025年5月3日
iPhoneアプリから投稿
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悲しい

怖い

難しい

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ミカ

3.5タクシー運転手さん一番ユルい訳ありの旅館に連れてって

2024年9月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

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カールⅢ世