漂流街 THE HAZARD CITY : 映画評論・批評
2000年11月1日更新
2000年11月11日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系にてロードショー
三池崇史の遊び心爆発、日本産多国籍映画
馳星周×三池崇史とくれば、混沌とした無国籍ワールドでフックの効いたアクションを期待するのが人情です。確かに三池らしいフックはかましてくれます。冒頭のヘリコプターの襲撃や「マトリックス」をパロっての闘鶏場のシーンなど、「やってますな」という、クスグリは十分です。しかし混沌渦巻く新宿を舞台とした、中国人マフィア、日本のヤクザ、ブラジル人コミューンの抗争話は、本当に「混沌」としたまま、どうにも求心力が生まれません。原因は素人俳優です。渋谷でスカウトしたいう主演のアンチャン、それから中国人マフィア役の及川某、彼らが三池のフェイクを安っぽくしてしまいました。
もちろん、救いはあります。吉川晃司です。彼だけが圧倒的に素晴らしい。久しぶりのスクリーン登場の吉川さんは、やはりスマートではありません。もっさりとした身の動き、籠もったセリフ回し、アイツはやっぱり田舎のロッカーです。しかし好青年、民川裕司も、今や中年のニヒルなヤクザ。虚ろな眼差しでサディスティックに子分も殴るし、カッとなれば、組長だってあっさり射殺です。彼が登場するだけで、画面全体に緊張感がサァーと波紋のように走るのです。名優・吉川の驚異の復活を見る価値は十分です。
(日下部行洋)