はなれ瞽女おりん

劇場公開日:

解説

盲目の旅芸人・おりんと、警察や憲兵隊に追われる男・平太郎との愛を美しい自然の中に描く。脚本は「忍ぶ川」の長谷部慶治と「桜の森の満開の下」の篠田正浩、監督も同作の篠田正浩、撮影は「妖婆」の宮川一夫がそれぞれ担当。

1977年製作/117分/日本
原題または英題:Melody in Grey
配給:東宝
劇場公開日:1977年11月19日

ストーリー

大正七年、春まだ浅い山間の薄暮、おりんは、破れ阿弥陀堂で一人の大男(平太郎)と出会った。翌日から、廃寺の縁の下や地蔵堂を泊り歩く二人の奇妙な旅が始まる。ある日、木賃宿の広間で、漂客や酔客相手におりんが「八百屋お七」を語っている時、大男はその客に酒を注いだり、投げ銭を拾い集めていた。またある夜には、料理屋の宴席で「口説き節」を唄うおりんの声を聞きながら、大男は勝手口で、下駄の鼻緒のすげかえをすることもあった。それからも大男は、大八車を買入れ、おりんと二人の所帯道具を積み込んで、旅を続ける。そんな時、柏崎の薬師寺で縁日が開かれた。露店が立ち並ぶ境内の一隅に、下駄を作る大男と、できあがった下駄をフクサで磨きあげるおりんの姿があった。しかし、札をもらわずに店をはったという理由で、大男は土地のヤクザに呼び出される。大男が店を留守にした間に、香具師仲間の一人である別所彦三郎に、おりんは松林で帯をとかれていた。松林の中で、すべてを見てしまった大男は逆上し、大八車の道具箱からノミを取り出すと、松原を走り去った。やがて、渚に座りこんだままのおりんの前に大男が現れ、「また一緒になるから、当分別れてくらそう。俺は若狭の方へ行く。」と言い残すと姿を消した。季節は秋に変り、おりんは黒川の六地蔵で出会ったはなれ瞽女のおたまと共に、南の若狭方面へと向っていた。そんな時、大男は別所殺しの殺人犯として、また福井県鯖江隊所局の脱走兵としても追われていた。残雪を残す若狭の山に春が訪れる。若狭の片手観音堂に来ていたおりんは、ある日、参詣人でにぎわう境内で、大男に呼びとめられた。その夜、うれしさにうちふるえながら、おりんは初めて、大男に抱かれた。翌日から二人はまた旅を始める。しかし、二人の背後に、憲兵中尉・袴田虎三の姿が迫っていた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第1回 日本アカデミー賞(1978年)

受賞

主演女優賞 岩下志麻
技術賞 宮川一夫

ノミネート

作品賞  
監督賞 篠田正浩
脚本賞 長谷部慶次 篠田正浩
助演女優賞 奈良岡朋子
音楽賞 武満徹
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映画レビュー

5.0第1回日本アカデミー賞など数多くの映画賞を獲得するのは当然の傑作中の傑作です

2022年2月22日
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瞽女(ごぜ)というのは、門付(かどづけ)巡業する盲目の女旅芸人のこと
通常は数名のグループで巡業するようです
主に正月や、お祭りなどのお祝いの日に三味線で豊作を願う歌やお祝いの歌をメインにしているので、そうでない時は合宿所のようなところに集団で暮らしています
様々な世俗的な歌も求めに応じて歌ってくれるので、そろそろ巡業してくるのではないかと村々の人達は楽しみに待っているのです
目の不自由な少女は瞽女になって生活を立てるという道もあるとは知られいるようですが、かといって伝手がなければどこに頼っていいかもわからないのです
伝手があっても、八年は厳しい修業してようやく一人前になれる世界です

三味線や歌の修業だけでなく、厳しく自分を律して巡業先などで男性と交わったりしないように指導されます
瞽女は神様の嫁だから男と寝てはいけない建て前なのですが、そうしないとすぐに売春婦のような存在に堕ちてしまう誘惑が多いからでしょう

はなれ瞽女というのは、その戒律を破った瞽女のことです
男と交わったことが発覚すると、集団生活の場から追放され、巡業にも同行できません
フリーの瞽女となり、たった一人で各地を巡業して歩きます
オフシーズンでも戻るところはなく、あてどもなく門付巡業して歩くのです
たまたま結婚式などに出くわしてお祝いの歌を歌うなどして生きていくのです
吹きさらしの祠で寝るのは当たり前の生活です
男に騙されることも数多くあるのです

物語は若狭小浜の漁村の少女おりんが、瞽女になるいきさつから始まります
そして成長して将来を期待されるまでになりながら、はなれ瞽女になってしまうのです
時代は物語の途中でシベリア出兵の直後だとわかります
地震のシーンがありますから、関東大震災のあった1923年だと思われます

テーマはあくまでも、男女の純粋な愛です
軍国主義反対だとかそんなものは関係ありません

目が見えないが故に男の本質を見抜いて、その真心を愛する女
無私の心で女を愛する男の物語です
愛しているからこそ、はなれ瞽女のおりんを抱かないでいたいのです

終盤にたった一度だけ二人は結ばれるのですが
その純粋な愛の結末は悲しいものでした

はなれ瞽女は野垂れ死ぬものだと劇中何度も話されます
そしてそれがどういうものかをラストシーンが教えてくれます

純粋な愛とはどんなものか胸を打たれる物語です

厳しい運命の人生でありながら、屈託なく明るくいきるおりん役を岩下志麻が目を見張るような好演で見せます

篠田正浩監督の演出も冴えていて、それを宮川一夫のカメラが美しい映像で撮っています

第1回日本アカデミー賞など数多くの映画賞を獲得するのは当然の傑作中の傑作です

ぜひ「津軽じょんがる節」も併せてご覧下さい

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あき240

3.5宮川一夫のカラー撮影の美しさが傑出した女優映画

2021年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まず驚いたのは、宮川一夫のカラー撮影が余りにも素晴らしいことであった。白黒映画の代表作が名高いが、カラー映像の宮川一夫で感銘をうけたのは、個人的に吉村公三郎監督の「夜の河」以来である。日本海の荒波を始め、四季折々の北国の自然が見事に映像化されている。盲目の旅芸人おりんの主人公の設定により、一層観客にとってありがたい日本の美が提供されていた。彼女が視覚以外の五感に全集中を傾けて観る者に伝える、生きることの真摯さや美しさが、この映画を理解するうえで最も重要だ。完全ではない人間が完璧を求める手探りの生き様が、生きることの本質を教えてくれる。このおりんを理解し神聖な愛情を、ついには自滅的に証明してしまう男、同時に社会の悪と不正を批判する立場にまわる人間、この立場が主人公と観客の中間に位置する。彼は脱走兵であり、逃れるためにおりんと旅を続け、尽くす男になり彼女を支える。このふたりの刹那的愛は、宮川一夫の映像美と同化して少しも嫌味を感じさせない。
ところが、この美しすぎる映像の魅力が勝り、およそ作品の責任者たる篠田監督の力量が迫ってこないのだ。突然現れる見たことのない日本の自然美に驚嘆し感動し、息を止める程なのに、物語の流れに生かされていない。現在進行の場面より、過去の”ごぜ”さんたちの生活描写が素晴らしかった。最後は、日本の軍国主義を批判する目新しさのない演出含め、篠田監督の人柄の良さが顕著になる。人間的に優しい監督と判断する。演技では、主演の岩下志麻の熱演とおかみ役の奈良岡朋子の自然な役作りが素晴らしかった。それと登場シーンは短いが、樹木希林の”ごぜ”演技が作品を救っている。上手すぎて遣り過ぎと見られるかも知れないが、ギリギリのところで抑えている。この作品は、撮影と女優の演技をみる映画である。

  1978年 2月4日  郡山東宝

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共感した! 2件)
Gustav

4.0美しくはかない

2018年6月10日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

水上勉はほんと救いのない話ばかり書く。家に全集があっていくつか読んだが、全くやりきれない。

多分ネクラだったんだろう、写真をみても神経質そう
それでも一時期は人気あったようで、いくつも映画化された。
よく知られてるのが
「飢餓海峡」
だが私は何回みてもなんか途中で飽きちゃって最後までみてない。

でもこの映画は良かった。やっぱりあまり救いがないというかまるで救いがない話だが、映像の耽美な美しさとごぜさんという悲しい境遇の女性たちに心うたれる

若い頃の西田敏行や
「あいよ。」のマスター小林薫がけっこう憎たらしい役で出てます。
岩下志麻はやっぱりこの頃はキレイですね

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守銭奴見習い

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