「戦後史+悲劇史」日本の悲劇(1953) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
戦後史+悲劇史
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戦後に起こった事件をニュースフラッシュのように登場させドキュメンタリー風のオープニングで始まる。「湯の町エレジー」を奏でる流し(佐田啓二)。
戦後直後には闇市で働いていた春子。子供たちに米を食わせるためにどんなことでもやってやるというタイプの働き者の母親だ。清一は医学を志し、裕福な医者夫婦への養子話が魅力的なのだが、母親を蔑ろにしているのではなく、これ以上苦労かけたくないと願うだけだ。
ストーリーは冗長気味に進み、回想シーンが戦後の社会派要素満載なのに比べ、本編のほうでは、洋裁教室と英語塾に通う娘春子が塾長(上原謙)との不倫(未遂か?)や、春子が旅館の常連客にそそのかされて相場をやっていることがメインになり、養子になるために籍を抜かぬまま医者宅で住むことが手抜きになってしまった感がある。特に塾長赤沢が婿養子であることとかつてはお嬢様育ちであった嫁(高杉早苗)が憎らしくなる様子などはメロドラマの世界だ。
ラストも娘を探して駅のホームで悲惨な結末を迎えて、どうしようもない虚無感に襲われるが、そのしばらく前に回想シーンを上手く繋げた編集のおかげだろう。しかも無音の回想シーン。時折挿入される新聞記事やニュース映像が高度成長期前のギスギスした人間関係を象徴しているかもしれない。
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