「家族と学校の先生の影響力は多大」アメリカン・ヒストリーX Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)
家族と学校の先生の影響力は多大
兄のデレック(エドノートン)の心の動きを追うと切なくなる。ロサンジェルスのベニスビーチ高校時代は学校でNative Sonを読んで、人の痛みが理解できたようだが、父親の影響力と死でネオナチに傾倒しリーダーに。監獄の中で人生経験や再発見して、人に戻ろうとする。激動に満ちた人生を送る若者たち。果たして救われるのか?God ! What did I do. これはデレックからの呻きの言葉。
2021年の新年の抱負はネオナチ、KKK、Qアノン、レッドネックなどの右翼系の作品を鑑賞するだった。私は個人的に大変リベラルで、自分の意見を持っている。 トランプが大統領になった時、自分の意見と背反する思想を紐解く必要があると思った。 そして、この一年で、宥和外交的な思想を学ぶつもりで下記の作品を観た。
1)Son of the South(原題)(2020年製作の映画)
2)White Terror(原題)(2005年製作の映画)
3)デンマークの息子(2019年製作の映画)
4)ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印(1993年製作の映画)
5)憎しみ(1995年製作の映画)
6)ディス・イズ・イングランド(2006年製作の映画)
7)The Other Side(原題)(2015年製作の映画)
8)SKIN/スキン(2019年製作の映画)
9)SKIN 短編(2018年製作の映画)
一作として、ノートンと監督ケイとの折り合いの悪かったこの作品を見たいと思っていた。(リリースされた映画はノートンがカットした映画らしく、ノートンの移民反対演説のスピーチや父親がいたときの家族のシーンが含まれていると読んだ)ノートンバージョンの方が家族の考えがわかる大事なシーンが含まれていると思う。 ノートンが 歴史の授業でこの映画を使って討論をするうクラスがあるとか言っていたので観たかった。
1998年の映画で 1991年3月3日、ロドニー・キング殺害事件、ロサンジェルスのベニスビーチの人種や貧富の格差の変化、特に白人警察の横暴が問題になり始めていた時のようだ。
映画の簡単な歴史背景を頭に入れておくと見やすいと思う。
私はこの映画で一番の問題点は家庭と学校教育だと思う。それがよく描かれていると思った。その視点からこの映画を捉えたい。
兄弟の父親が生きていた時、家族間では会話はあった。父親がNative Son を知らないだけで母親も知っている。母親はトム・クランシーじゃないんだよという。きっと父親はこの類の本が好きに違いないと思った。父親は黒人の歴史の週間じゃないのになぜ黒人の本を読むのかと教育観が狭い。父親は積極的格差是正措置を嫌って、黒人が昇進していったり仕事をとったりするのが面白くないようだ。デレックは父親の考えになびいていく。妹も弟もそれをじっと見ている。 デレックは問題意識の強い、頭のいい生徒だったようだが、父親のデレックに対する期待感が英語の成績はBかと過小評価する。残念だ。
デレックは父親が殺されてから右翼のリーダー格になる。
大勢のネオナチの前で白人至上主義を演説する。移民難民が米国に流入するから我々が仕事を失う、どちらが国民なんだ!とトランプの演説より説得力があると思う。カリスマ性があり弁がたつだけでなく論理的だ。思想は最悪だけど上手い!
この彼も差別攻撃がエスカレートするとイタチごっこになることに気がつかない。気がついて改心した時に、その代償として以前からダニーに目をつけていた黒人の生徒(まず、最初のシーンでダニーはタバコを吹きかける、次のシーンで黒人が使っているバスケットコートを奪う。デレックに殺された仲間の中にいる)に高校の便所で銃で殺される。最近は学校に銃を持って入ることは難しくなっているが、当時は校内で殺されることがありえただろう。
ボブ・スウィーニー - (エイヴリー・ブルックス)校長先生はデレックも弟ダニー(エドワード・ファーロング)も知っている。そして、ベニスビーチコミュニティーギャング更生(?)役割をしているようだ。
スイニー校長先生はヒットラーの我が闘争を分析するダニーを諦めず、ダニーの歴史の先生になると宣言する。ダニーに監獄に入っている兄のデレックがいかに家族やダニーに影響を与えたかについてアメリカンヒストリーXとして書けと。Xは匿名でという意味で、特に監獄の中のことをと。特に米国の刑の問題(シーツを畳む作業中黒人の青年が店のテレビを盗んで壊したというが6年の刑。デレックは殺人罪。なぜ刑が彼より軽い?)にも関心があったのではないかと私は勝手に想像する。そして誰にも言わない自分が読むだけだと。ここで個人的にアプローチをして一人でも問題だと感じれば放って置かずすぐ声をかけることは素晴らしい。
一番感激したところは、監獄の中で6針縫ったが命を取りとめて打ちひしがれているデレックと話した言葉。スイニー先生は医務室で横たわるデレックを尋ねる。ここで初めてデレックは泣く。ギャングと家族のリーダーである彼がなける場所なんてどこにもなかった。自分をさらけ出すことができるこのシーンが一番大事に私は思えた。 自分がこの場に合わないし、混乱していると訴えるデレックに怒りが頭を塞いでいるから『Stay Open』という先生。この先生はデレックと似た立場にあったようで、白人(先生は黒人)の責任や、神様の責任や、みんなの責任にしていた時代があったが、これでは問題の解決の答えがなかったと。ここで大切な先生の投げかけた言葉は『今までに、いろいろなことをしてきて、自分の人生をよくするために何かしたことがあったか』。 これに、首を横に振るデレック。 もうここで、デレックは立ち直れると私は思った。そして、デレックは助けてくれとまた、泣き出す。 家族で逃げ出すと言うデレックに先生は逃げるだけでは十分じゃないと(私の理解が間違いなければ)、いつまででもついていてはあげられない、自分で考えて動けと。
デレックは出所してから、弟に刑務所での話をして、弟にどうしろとは言わない。自分で決めろと。愛しているよと言う。 デレックの凄さはここ! ギャングの仲間から出ろとは言わなく、弟に決めさせる。
人間は変われる。 批判的思考力があって、人生に気づきがある。それはスイニー先生のお陰であり、デレックは疑問や問題意識を解決に結びつけるのが早い頭のいい人だと思う。