「いい人を描いた真面目な映画の礼儀正しい演出タッチ」トキワ荘の青春 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
いい人を描いた真面目な映画の礼儀正しい演出タッチ
漫画家を目指す若者が生活を共にしながら確実に成長していく過程を静かにゆったりと描いた市川準監督の抑えた演出タッチが勝る映画。テレビ見学では作者に申し訳なく感じる程、真摯に映画を創作している。ただこの物語の語り口として、これが最も面白いやり方なのかの疑問が残る。昭和30年代の雰囲気は良く再現されているだけに、脚本と演出がもっと主張してもいいのではないか。主人公寺田ヒロオの善人性が突出しているのに対して、他の登場人物の個性が其々描き切れていない。また脇役に桃井かおり、時任三郎と出演しているが、なくてはならないシークエンスにはなっていない。
主人公を奇麗ごとだけではない視点、漫画家仲間から尊敬される人間性と違う一寸人間臭い側面も取り入れたならば深みが出たと思う。映画表現からも、食事シーン、編集者との関係、漫画創作カットと丁寧に描いて欲しかった。
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