東京物語のレビュー・感想・評価
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色々な人生模様の家族と晩年の生活のあり様をさりげなく描いた心に残る名作
黒澤明の「七人の侍」と並ぶ、世界で高評価の本作であるが、慌ただしかったサラリーマン時代にはよく理解できなかった映画であった。定年退職して孫もできて、改めてこの気になる映画に向き合うこととした(山田洋次監督の「東京家族」鑑賞の予習も兼ねて)。
映画のペースに合わせてじっくりと鑑賞する(リマスター版)と、2時間半という長さも忘れるくらいに内容のある考えさせられる映画であった。少なくとも、多種多様の人生があり、また、色々な人生観があることだけは確かである。出演した俳優陣の演技が素晴らしく文句のつけようがなかった。平凡に見える個々の台詞にも重みがあって場面場面に味わいがあるように感じた。 戦争で家族を失う悲しさも伝わってきた。小津さんは室内シーンでは低位置のカメラアングルから上方に向けて撮影していたのが特徴的であった。家族問題は世界共通であろう。
繰り返される家族の風景
デジタルリマスター版放映で観ました。様式美が優った作品と勝手に想像してたら大違い。
とても今日的、いえ、綿々と繰り返される家族の風景のエッセンスみたいな作品だと思いました。あまりにリアルな日本人がそこにいて、びっくりでした。
自分が経験してきた幾つかのことと重なり、懐かしさと少し苦い後悔と。
それから、これから行く道も。
熱海の堤防の二人。あそこにたどり着きたい。まだまだ凸凹している途中ですが、別れがくる前にあそこにたどり着きたいものです。
面白かったのは、若い頃のご乱行を知ってる長男・長女と知らない末娘や嫁では、どうも父親像がだいぶ違うらしい。
うん、あるある。
今だからこそ観てよかったです
人生で最初の小津安二郎監督作品でございます。
古き良き日本の情景を描いてる、なんて勝手に思い込んで観たらとんだ大違いでした。さらっと、はんなりと、みやびに描きながら、そこには日本人特有の薄笑い的な冷たさがあります。
これを観て、それまで見えなかった「日本人」というものがよく見えるの様になりました。あくまで耽美的に、礼儀を重んじ、そして体裁を整える。でも、そういう文化風習をもったからこその怖さってあるんですね。それは「美しい日本」かもしれないが、美しさの裏で毒が満載です。いつも健気にいる原節子がちらっと見せる影が実に怖い。
1953年っていったら、敗戦から8年ですか。経済化がここまで進んでいたんですね。戦前と戦後を生きる老夫婦は、まったく異なる時代を生きながら、いつでもにこやかに、そして礼を重んじ、そして孤独になっていく。二つの時代を生きるには、年をとりすぎていた悲劇なのでしょう。
他の小津安二郎作品も観てみたいと思いました。
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