「自分が東京にいる子供の立場なのでよく分かる」東京物語 夢見る電気羊さんの映画レビュー(感想・評価)
自分が東京にいる子供の立場なのでよく分かる
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尾道から東京にやってきた両親。
すでに東京で自分たちの暮らしや家族がいる中で、両親の存在は、他人のそれに近いのかもしれない。
1953年という、戦後もそれほど経っていない時代。高度経済成長はまだない中でも、核家族化が進み、両親と暮らさない人たちが多くなる中で、両親の存在は単に手間がかかる存在として、現実問題としてあったのだろうか。現代の人にも通じる家族観でもあり、見につまされる気持ちにもなる。
しかし一方で、赤の他人にも近い存在(劇中では、戦死した次男の嫁、紀子)が、むしろ尾道からやってきた両親に親身になるということ。
それは人柄もあるのかもしれないが、独り身という家族の体裁がない人間であるから、両親がやってきた時に純粋な喜びがあっただけなのかもしれない。
いずれにしろ、血を分けたかどうかよりも、自分たちに親身になってくれる存在が、現代においてはより大事になる、そういうニュアンスがラストには感じられた。
実のところ、東京にいる兄弟たちと自分は同じ境遇ではあり、確かに共感するような部分もある。
母危篤の際に喪服を持ってくるとか、伊豆旅館に追い出すとか、そういうことは流石に極端なやり方ではあるが、
やはり子供の時とは違って、両親だけではなく家族ができるとそちらが大事になってくるのは、現代人でもよくわかる話ではないだろうか。
この映画に悪人はいない。ただ、大事にするものは年齢とともに変わるだけなのだ。
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