天使の恍惚

劇場公開日:

解説

「自分の身体を張って闘えるヤツ、本気で孤立できるヤツ、個的な闘いを個的に闘える奴等、孤立した精鋭こそが世界を換える、世界を創る」というテーマをもとに、八年間に七十余本の映画を製作し続けてきた若松プロダクションとATGが提携製作した。脚本を執筆した出口出は、若松プロの映画製作運動が集約され、擬人化された名前であり、誰が或は何人で書こうが、若松プロのシナリオはすべてこのペンネームで発表される。なお、作中に登場する「四季協会」とは十九世紀後半、パリ・コミューンの炎の中で激烈な闘いを展開したプランキストの結社の名から採られ、一年、四季、月、曜日に分られた軍団の組織形態も、それを下敷きにしたものである。

1972年製作/90分/日本
配給:日本ATG
劇場公開日:1972年3月11日

ストーリー

キャンドルライトが闇の中から湧き出た様に浮び、周囲の闇は深い拒絶を示している。女歌手の唄声……。人気のないナイトクラブで秘やかに祝杯があげられる。革命軍「四季協会」の秋軍団が首都総攻撃を期し、米軍基地襲撃、武器奪取作戦を敢行するのだ。/全裸の秋と十月が抱き合う。激しく秋を攻める十月。恍惚のさなかで誓い合う革命天使二人。闘いの始まり。首都をもやしつくそうとする炎が、今、その炎の手を上げようとしている。/基地への突入隊は十月組隊長以下月曜から日曜までの八名の兵士。その半数が戦死し、リーダーの十月は弾薬の爆発で目を負傷する。別動隊の九月組は姿を見せず、女指揮官秋が現われ、アジトへの待機を指令する。過大の犠牲を払い手に入れた爆弾兵器は、冬軍団二月組によってクラブの歌手である金曜日の部屋から徴収され、金曜日と月曜日はすまじいまでのリンチにたたきのめされてしまう。/全裸の冬に組み敷かれてしまう秋、あえぐ秋、冬の駆使するテクニックは凄い。冬に責め上げられて逆上してゆく秋の白い五体。/冬軍団の爆弾闘争の成果が伝えられる中で、十月は失明、傷つき果てた十月組に、組を解体、秋軍団を解散した上で、冬軍団と統一し、連合冬軍を結成せよとの協会の指令が伝えられる。上部の予定されきった指令に月曜日は怒り、一匹狼として爆弾闘争を開始する。/秋に籠絡された土曜日は、冬との統合を十月に迫るが、十月と金曜日は十月組のオトシマエは自身の手でつけるべく、決意表明としてアジトを爆破、逆に土曜日に十月の兵士として決意を迫る。化粧ケースに爆弾をつめ、やりたいことをやると出かけてゆく金曜日、爆弾闘争をあくまで個的に持続させる月曜日、街へ飛び出す土曜日、パトカーの渦の中で爆弾をふりかざし駆けめぐる土曜日を秋の車が救い出す。/金曜日の唄声が流れるクラブ。/秋軍団の解散式。十月は来ない。じれる秋の背に金曜日の歌が突きささる。/秋が絶叫する。本気で孤立出来る奴、自分の身体だけで闘える奴、個的な闘いを個的に闘える本気の奴らが十月組なんだ!孤立した精鋭こそが世界を換える。世界を創る。十月!私は今飛ぶわ、あなたと、あなた達と!秋におそいかかる数人の男たち、血か飛翔する。大爆発。月曜日が爆弾をかかえ野分けのように走る。金曜日が駆けめぐる。一本の華麗な火柱、十月の兵士の壮絶な爆死。爆弾を背負った土曜日が、そして盲目のリーダー十月が風景の中へ溶け込んでゆく。あとは、静かな戦場の風景が、風に吹かれているだけである。

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映画レビュー

今ならば撮れなくなってしまった映画

2024年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 一般劇場では掛からない尖がった映画を撮り続けて2012年、76歳で亡くなった若松孝二監督の42作品一挙特集上映が始まりました。多くは観ていない作品なのですが、全てにお付き合いはできないので、興味あるものから。

 米軍基地から盗んだ武器弾薬を用いて、東京で爆弾闘争を繰り広げようとする若者達の物語です。こんな事を断らねばならないのも妙ですが、決してパロディではなく真正面から大真面目に取り組んだ作品です。

 「よかったぁ」と感じた訳ではありませんが、虚を衝かれました。爆弾闘争の映画など今なら絶対制作出来ないでしょう。それは、配給や社会的制約があるからはなく、そこに問題意識を持って撮ろうとする人など居ないからです。50年前だって異端の映画だったでしょうが、現在の日本映画は更に遠くに来てしまいました。片田舎の民家の軒下で大昔の「ボンカレー」のホーロー看板を見つけた様な思いです。

 そして若松映画らしく、いわゆる濡れ場シーンが各所にあるのですが、今観ると全くスケベっぽく感じないのが意外でした。どこか投げ遣りな場面に見えるのです。これは撮り方のせいなのでしょうか、時代のせいなのでしょうか。

 そして驚いたのは、バリバリのトリオ時代の山下洋輔、森山威男、中村誠一の演奏がスクリーン上に現れた事です。皆さん、若いわぁ。映画も音楽もとにかく何かをぶっ壊したかったんだろうな。

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La Strada

1.0「革命派」の本性

2024年4月3日
PCから投稿

社会改良をうたう「革命派」が、フタを開けてみれば要するに女を消耗品としか扱わず、女の側も男の論理を内面化してチョロくやらせてやる…バカでだらしないだけのくせにもっともらしいことを言いたがる、そういう当時の「革命派」の実体をよく切り取っている。その意味では貴重な映画。

しかしまあセックスシーンの撮り方がどれもこれも下手だねえ。唯一ちょっと良かったのは、男女が背中合わせに座り込んでそれぞれ自慰をするシーンを俯瞰でおさえているショット。これも別に映画史に残るとかいうもんではないけれど。それ以外は退屈なだけ。模型を使った爆破シーンに至っては、あまりにチャチで思わず笑ってしまった。

脚本は足立正生だけど、彼に映画の才能など片鱗もなかったことがこの作品を見るとよくわかる。

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milou