「兎にも角にも、嶋田さん!!!」帝都物語 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
兎にも角にも、嶋田さん!!!
DVDのパッケージの写真を見るだけでも「怖っ!!!」というほど。
よくぞこんな俳優を見つけてきたものだ。
嶋田さんはこの映画で新人賞をお取りになる位、劇場で知る人ぞ知る程度の知名度だった。
けれど、相手役?の石田さんと比べても、たくさん出演されている日本が誇る超有名俳優の方々と比べても、嶋田さんしか思い出せないくらいのインパクト。
で、嶋田さんはこういう役柄だけかというと、
『くちづけ』のとっても温和な知的障害を抱えている方の演技や、
『謝罪の王様』での、国家間の信頼を取り戻す為に、ひたすら実直にまじめにバカげた動作を繰り返して相手の国への誠意を伝えようとする総理大臣、しかも自分の失敗ではなく、バカな国民・部下の尻拭いを”長”としての責任を全うするためにする誠実な方の演技
と、演技の幅もとにかく広い!!!
繰り返すけど、よくぞこんな方を見つけてきたものだ。
映画は・・・。
ウルトラQ?が始まるの? 学天則とか妖怪物?とク―リチャ―のオンパレード。可愛かったり、おかしかったり。フィギアがあったら買っちゃうぞ!(特に学天則)
特撮は、今のCGとかだともっと違う表現できたかもしれないけれど、時代を考えると、手作り感があったりして、笑いも含めて、まあ楽しめる。
これだけのシーンにこのセットを作ったかと唸るほどの贅沢。
しかも、必要なシーンも多いけど、これって必要?もっと、どうにかならなかったの?というシーンもある。
雑学の大家、もとい博学の大家として名を馳せていた荒俣さんの原作の映画化。
地脈とか将門の怨霊とか、『うしろの百太郎』を彷彿とさせるネタや、当時の七不思議みたいな特集にはよく出てきたものを、よくぞこれだけの物語にまとめてくれたというワクワク感や、
歴史や国語の授業で習った方もたくさん出てきて、どんな活躍されるのかとワクワクしながら鑑賞。
なのだけれど、途中、なんやそれ!!みたいな解決法もあるし、史実と違うし、それでも丁寧にそのくだりや心情描写がなされていたら納得したんだろうけど、う~ん・・・。
(「オン バサラ~」って、お寺でお参りする時唱える言葉として仏像の横に書いてあるけど、陰陽師???)
いろいろなものをたくさん詰め込み過ぎて、…。なんでこの人がこういうことするの?という流れをしっかり描いていない。
特に、ラストの主要な筋になる、というか、将門復活の顛末に関わる重要な部分が、あまりにも唐突で、「なんや、それ~(ノ-_-)ノ=」となる。辰宮と恵子、恵子と加藤の関係をそれとなくほのめかしておいて欲しかった。ワンショットで伏線を張る人もいるんだけどな。『ウルトラセブン』の監督、男女の関係を描くのは苦手だったのかな?
原作4冊分、明治~大正~昭和という長い年月を一気にまとめた物語だそう。(原作未読)
それならこのような脚本になるのも無理ないかなと思う反面、登場人物が、あまり年をとった様でないから2,3年の物語に見える。途中で産まれた子だけ妙に大きくなっていた。
上に嶋田さんしか印象に残らないと書いたけど、原田さん、大滝さん、西村さん、玉三郎さん…とそのシーンだけ切り取るとうまい!!!という演技をなさっているんだけど、全体を見渡すと、そこに時間を割く意義があるのか?、撮りたいシーンだけ寄せ集めた? セットや大物俳優を使った関係で削れなかった?というシーンが多くて、 緩急のつけ方が悪くて間延びしている。
これだけの才能を集めたのに、活かしきれなかった大作。
それこそ、タイムマシンがあったなら、再提出を課したいよ。
それでも、神田明神?湯島天神?と懐かしさを醸し出し、
時折、加藤を鑑賞したくなる不思議な映画です。