太陽の子 てだのふあ
劇場公開日:1980年9月13日
解説
神戸で大衆食堂を営む沖縄出身の夫婦と小学生の娘。そして、その店に集まる人々の暖かい交流と背後に隠された暗い戦争の傷あとを描く。灰谷健次郎の同名の小説の映画化で脚本、監督は「龍の子太郎」の浦山桐郎で、劇映画は「青春の門 自立篇(1977)」以来四年ぶり、撮影は「昭和エロチカ 薔薇の貴婦人」の安藤庄平がそれぞれ担当。
1980年製作/140分/日本
配給:共同映画全国系列会議
劇場公開日:1980年9月13日
ストーリー
小学校六年生のふうちゃんの両親は沖縄出身で“てだのふあ沖縄亭”という食堂を開いている。店には片腕のないロクさんや鋳物工のギッチョンチョンやその友達のギンちゃん、桐道さん、ゴロちゃんといった沖縄出身者が集まり、ふうちゃんは皆の人気者だ。ふうちゃんの父親は、時々、ノイローゼで発作を起す。長いこと故郷の波照間に帰ってないからだ。食堂では、沖縄出身のグレかかった少年、キヨシを連れてきたギッチョンチョンとギンちゃんの間で少年が原因で喧嘩が起った。ある夜、キヨシが沖縄亭にこっそりやってきた。ギッチョンチョンから盗んだ金を返しに来たのだ。帰ろうとするキヨシを追ったふうちゃんは足をケガしてしまう。そして、病院のベッドでふうちゃんは、お父さんが発作を起したのを知った。でも、キヨシがお店を手伝うことになってふうちゃんは一安心。そんなキヨシも暗い過去を背負っていた。幼いとき母に捨てられ、ギリギリの生活をしていたのだ。沖縄亭に集まる心優しい人たちみんな、気の遠くなるようなつらい悲しいめに会ってることを、ふうちゃんは気づきはじめた。そして、それは、みんな戦争と沖縄が原因している。「沖縄のことを勉強しよう!」ギッチョンチョンを先生に、ふうちゃんの猛勉強が始まった。ある日曜日、ふうちゃん、お母さん、ゴロちゃん、キヨシで姫路の先の室崎へ行くことになった。お父さんを誘うと、急に不気嫌な顔をする。お客さんの一人は、お父さんを室崎で見かけたことがあると云う。室崎でゴロちゃんが叫んだ「南部の海岸線に似ている!」沖縄戦にさい悩まされるお父さんは、ここへ来て何を考えるのだろうか。戦争の暗い影をいやすのは、故郷の青い海だと考えたお母さんは、波照間にいるお父さんのいとこに手紙を出し、親娘三人で行くことになった。お店はキヨシがやってくれるのだ。出発前夜みんなでパーティを開いていると、お父さんがいなくなった。みんなで八方手をつくすが、お父さんはどこにもいない。ふうちゃんはキヨシと室崎へ行った。海岸を走る二人。神戸に電話をしたキヨシが涙をためてふうちゃんのところに来た。全てを悟ってふうちゃんの目に涙が溢れでてきた。石垣島から波照間へ向う船に、ふうちゃん、お母さん、そしてお骨になったお父さんが乗っている。波照間の海はお父さんが話していたよりもずっと青い。今までの楽しいこと、悲しいことが胸にこみあげてきて涙が溢れてしようがない。波照間の、海に向う一本道をふうちゃんはお父さんと叫びながら走り続けた。