「弱点も長所にしてみせるベテラン監督の剛腕を見た」大誘拐 RAINBOW KIDS 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
弱点も長所にしてみせるベテラン監督の剛腕を見た
誘拐された地主のおばあさんが、誘拐グループを指揮して巨額の身代金を奪おうするコメディであり、それが岡本喜八がこだわり続けた反戦、反権力へと繋がっていく力技は胸がやはりすくような痛快さがある。
改めて見て感じたことは、この時代の若手俳優の下手さ(特に風間トオル)。北林谷栄や緒形拳など、とにかく盤石の俳優陣が集まっているのだが、若手だけはいささか頼りない。しかし演技が下手であってもキャラの人柄みたいなものがちゃんと表現されていれば、観客は素直に応援できるのだ。役者の頼りなさとキャラの頼りなさが絶妙にシンクロしているのも、不思議な説得力に繋がっている
そのときそのときの座組や予算といった諸条件をプラスに転じさせるテクニックと自信が監督にあれば、どんな弱点だって長所になりうることを証明している一本だと思う。
2024年の岡本喜八生誕百周年の一環で、またフィルムで観ることができたことも本当にありがたかった。
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