「怪獣にだって夫婦があり、子供があり、家族愛がある」大巨獣ガッパ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣にだって夫婦があり、子供があり、家族愛がある
怪獣ブーム真っ只中の1967年、日活が唯一製作した怪獣映画。
東宝のゴジラに続けとばかりに、大映、東映、松竹、日活と各会社立て続けに特撮怪獣映画を作ったのだから、当時まだ影も形も無かった者としても、当時の怪獣ブームの凄まじさは分かる。はやぶさブームなど比べ物にならない。
さて本作は、これまた特撮怪獣映画の珍品の一つ。
怪獣ブームと言っても、人気があったのはやはり本家の東宝のゴジラと、ガメラという魅力的な怪獣を生み出す事に成功した大映ぐらいで、他の会社は興行的にも不発。結局各会社、怪獣映画はそれぞれ一本だけになってしまった。
が、この日活の「大巨獣ガッパ」は、不発の各会社の怪獣映画の中でも、マシな一作だと思う。
ストーリーは…
南の島の珍しい動植物の取材・採集に向かった雑誌記者や学者の一行は、島の原住民からガッパの伝説を聞く。ジャングル奥地の洞窟の中で、巨大な卵を発見。ガッパの子供が孵り、一行は日本に連れて帰る。間もなくして、両親ガッパが我が子を追い、日本に向かって飛び立った…。
ストーリーは「キング・コング」と「モスラ」を合わせたようで、怪獣映画の王道と言えるが、本作の見所は何と言っても、ガッパ家族に尽きる。
怪獣にも夫婦があって、子供が居て、当然のように家族の愛情があって、人間や自然界の動物と変わらない。
怪獣なので勿論、破壊シーンもあるが、他の怪獣のような破壊本能ではなく、子供を捜す上で障害となるものを破壊してるだけ。
日本に現れた時、母ガッパが口に蛸をくわえているのだが、これは、腹を空かせているであろう我が子を思っての母の愛情だという。
ラストは勿論再会。何だかこのガッパ家族にほっこりさせられてしまう。
誰がこの悪意の無い怪獣を非難出来よう?
やましい心があるのは、いつだって人間。主人公たちは自分たちの過ちを考え直すが、主人公たちの上司(出版社の社長)は会社の宣伝の為に子ガッパを利用しようとする。
人間の傲慢をチクリと刺すが、この社長も最後には考えを改め、怪獣にとっても人間たちにとっても善意ある終わり方になっている。
怪獣と言っても家族愛を描いたのだから、本来は松竹が作るべき怪獣映画。なのに、何を間違って「宇宙怪獣ギララ」なんて作ったのか…。
次はその「宇宙怪獣ギララ」を見ようと思っているのだけれど、近くのレンタル店に置いてないんだよね…。河崎実が手掛けた続編の方でも見ようかな??