世界大戦争

劇場公開日:

解説

「東京夜話」の八住利雄と「大坂城物語」の木村武(1)の共同オリジナルで、「続社長道中記 女親分対決の巻」の松林宗恵が監督。撮影は「香港の夜」の西垣六郎。なお「モスラ(1961)」の円谷英二が特技部門の監督を受持っている。パースペクタ立体音響。

1961年製作/110分/日本
原題:The Last War
配給:東宝

ストーリー

世界各地に連鎖反応的に起りつつある侵略と闘争は、全人類の平和を危機に追いつめていた。核戦争の鍵を握る同盟国側と連邦国側は、一触即発の状態を続けていた。戦争が始まったら、間違って押したボタン一つからでも音速の十倍以上で飛んでくるミサイルが、全人類を灰にし、地球は取返しのつかないことになってしまう。全人類が一つになって原水爆禁止のための何かをしなければならないのだ。アメリカ・プレス・クラブの運転手田村茂吉は裸一貫からささやかな幸せを築いてきた。娘冴子と二階にいる通信技師高野とは恋人同士で原水爆のことを真剣に考えていた。貨物船笠置丸船上で、突然夜空にオレンジ色から紫紅色へと膨らむ不思議な物体を見た高野は、冴子のもとへの帰途、胃潰瘍手術で九死に一生を得た船のコック長江原を見舞った。彼は保母をやっている娘早苗や子供達に囲まれて生きる素晴しさを感じていた。連邦軍基地で核弾頭を装填したミサイルが手違いで発射されそうになった折、同盟国ICBM陣地でも作業員のミスからダイナマイトが暴発、核弾庫の誘爆の危機に襲われた。そうなれば世界は破滅だと判断した司令官は命を賭して起爆装置をはずした。皆、一兵卒に至る迄心から平和を念じているのだが……平和の願いはパリ首脳会談に託された。記者ワトキンスを車で送った茂吉はこれらの状勢は金儲けのための株の変動への期待としか考えられなかった。そして神経痛に顔を歪めるお由に代って、庭にチューリップの球根を埋めてやるのだった。バーング海上で連邦軍と同盟軍編隊機の衝突から戦闘状態に入り、くすぶり続けた各地の侵略と闘争は再開され、日本政府は徒らに平和と停戦を呼び続けるのみだった。日本国内基地から飛び立った連邦軍爆撃機への報復として、同盟国の原子爆弾はロケットを発射し、東京は混乱の巷と化し、恐怖は全ての人を捉えた。保育園では早苗がなす術もなく、逃げまどう人々の心には平和を願い続けたのになぜ殺されねばならないのだ!と一様に去来した。冴子は無電機で高野の送信をキャッチした。「コーフクダッタネ……」やがて火球が東京を包み第三次世界大戦が勃発、巨大なビルは破片となって散り、全てが数万度の熱に晒された。ニューヨークでもパリでもモスコーでも……津波の後の静かな洋上を笠置丸は再び東京へ向っていた。東京の最期を見たのは高野達乗組員だけだろう。流れくる放射能のために生きて戻ることは不可能でも高野は帰りたいと思った。全世界がもっと早く声を揃えて戦争を反対すればよかったものを……あらゆる良識を無視して世界大戦は勃発し、そして終ったのだ。

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オソレゾーン

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映画レビュー

4.0清々しいど直球

2022年12月18日
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とまちゃん

4.0今こそ本作のリメイクが必要な時だ

2020年1月20日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1961年10月公開
同年7月がモスラ公開、本作の後翌3月が妖星ゴラス、8月にはキングコング対ゴジラと東宝特撮は量産体制でフル回転していたことが伺える

クライマックスの東京を含む世界の主要都市が核攻撃を受け壊滅するシーンは余りにも有名だ
本作を観たことのない人でも使い回しされたウルトラセブンでそのシーンは観ているはず

都市の破壊シーンとだけでなく、戦闘機編隊が数機づつ別々の旋回を行うシーンなどは目を見張る出来ぱえ
ピアノ線特撮と揶揄などできない
まるで後年のモーションカメラで撮ったような滑らかな動きだ
世界のどこに当時これ以上の特撮を撮れるスタジオがあっただろうか
間違いなしに当時世界一の特撮シーンだ

米ソの原水爆開発競争と冷戦の激化がもちろん背景だ
同年8月にベルリンではベルリンの壁が突然作られ、目に見える形で冷戦が激化を始めたばかり
丁度1年後の翌年10月に発生するキューバ危機を先取りしているほどタイムリーだ

核戦争とは何かを具体的に可視化したのは本作が初めてだと思う

博士の異常な愛情、未知への飛行は共に1964年だ
しかし都市が核で破壊されるところを克明に描くシーンはどちらの作品にもない
当時は本作にしかないモチーフであり映像なのだ
本作では戦術核が38度線で使用されたシーンで炭化した人間まで見せるのだ

それに匹敵するシーンを本作以外の作品で観る事ができるのはターミネーターまで待たなければならないのだ
つまり当時は画期的かつショッキングな映像だったはずだ

海外市場への輸出も視野に入れて製作したと思えるシーンも多い
輸出サンプルの映像を観た海外の人間は腰を抜かしたことと思う

海外版の予告編もあるが、1964年に配給権が買われ1967年公開を目指して米国側で短縮版を製作したようだが劇場公開は結局なく、1985年にVHSとして発売されたにとどまるようだ

21世紀の人間が観ても古さはない
逆に本作は60年後の現代を舞台にしているのではないかと思える程だ

東西両陣営でそれぞれ起こる偶発的な核戦争の危機のお話は実は予言だ
現実でも機器の故障で敵の核攻撃と誤認して自国の核ミサイルを発射寸前にまで行ったことは、米ソ共にあるのだ

米軍は本物の水爆を誤ってスペインの陸地に落としたことすらある
幸い起爆こそしなかったが……
多分ソ連軍だって表沙汰になってないだけで同様の事故はあるのではないか

出てくる地名
南シナ海、シリア、アレッポ、38度線
60年経過しても何も変わってはいない

1秒程度の間隔で連続発射される弾道ミサイルのシーンは、実際の北朝鮮のミサイル発射映像と見がまう程だ

東京に核ミサイル飛来を探知するのは東京ミサイル防衛司令部だ
街の雑踏の音は六本木の防衛省にある雰囲気だ
当時はまだ自衛隊が発足してまだ7年
もちろんのことミサイル防衛なんて言葉すら無い時代だし、対処する組織もあるわけもない
劇中では、落下まであと124秒、落下予想地点東京中心部を探知はできるが、あとはカウトダウンしかなすすべもない

現代ならJアラートを発令して国民に呼びかけ、迎撃ミサイルを打つことはできる
なんとかそれくらいの防衛力は整備された
しかし何発もミサイルが来襲したり、特殊な弾道や欺瞞弾頭で迎撃ミサイルが外れるかも知れない

政府はパニックを承知で、核ミサイルが日本に確実に飛来する状勢ですと正直に国民にアナウンスできるだろうか?

軍事力の行使を禁じられており、唯一の被爆国である日本が出来ることは何か?
それはこのような映画を製作することだと思う
一体どうなってしまうのか
徹底的にリアルに具体的に観せて、人々をたじろがせる映像を撮ることだと思う

核戦争は絶対に防がなければならない
ならばどうすのか、軍事力を禁じられていること自体が国民の安全に取って果たして本当に正しい事なのか?
そこまで国民が徹底的に考えるきっかけになるはずだ

今こそ本作のリメイクが必要な時だ

現代の方が自主規制が強くて製作すらできないかも知れない
しかしそれは同じ、当時でも製作は困難であったはずだ
先人はそれを敢然と突破して本作を残したのだ
21世紀の映画人も奮起して頂きたいものだ

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あき240

5.0「平和を粗末にしちゃいけねぇ…」

2019年2月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

DVDで2回目の鑑賞。

「連合艦隊」などを手掛けた松林宗恵監督と“特撮の神様”円谷英二特技監督の初顔合わせで、世界核戦争による人類滅亡を市井の人々の視点から描いた人間ドラマ大作。

舞台は東西冷戦の真っ只中。ふとしたことをきっかけに両陣営の間に緊張が走り、一触即発の事態となります。核戦争による人類滅亡へのカウントダウンが迫る中、各国に平和を呼び掛けた日本の決死の働きも空しく、ついに人類滅亡のときがやって来るのでした…。

当時は、キューバ危機などに代表される東西冷戦による緊張状態が日常としてありました。すぐそこに“第三次世界大戦”の危機が転がっており、いつ戦争が始まってもおかしくない張り詰めた空気感の中で人々は暮らしていたのでしょうねぇ…。想像するだけでも恐ろしくなりました。
太平洋戦争での敗戦を経て平和国家へと歩み出して間も無い日本国民には、戦争の傷が心にも体にも生々しく刻まれていたことだと思います。戦争とは残酷で愚かしい行為である…と身に染みて理解している民族ではないでしょうか?
よって本作は日本だからこそつくり得た映画だと思いますし、核戦争による人類滅亡の危機による社会の風刺を、普通に日常を営んでいる無后の人々の視点から描いていることに意義があるように感じました。

フランキー堺演じるハイヤー運転手の一家は、贅沢はできないながらも幸せに暮らしていました。ささやかなことに嬉しみを感じ、将来への希望を胸に日々を生きる…。
そんな日常を引き裂くかのように各国で戦端が開かれました。何故、不条理にも今の幸せな生活を奪われなければいけないのか? いったい我々が何をしたというのか? …主人公は怒りに震えます。
星由里子演じる長女には宝田明演じる航海士の恋人がおり、結婚の約束をしていました。まさに幸福の絶頂…。そんなふたりが核ミサイル発射直前に交わした最後の無電通信に胸を打たれました。無常に、そして残酷に引き裂かれた愛に涙を禁じ得ませんでした…。
大国間の政治的エゴ、そして戦争…その犠牲になるのはいつでも民衆です。どこにも持って行きようのない怒りをフランキー堺らが迫真の演技で訴え掛けて来ました。そして迎える一家の最後の晩餐。日常が崩壊してもなお普通の暮らしを通そうとした一家の怒りを込めた最後の抵抗のように感じました…。

世界中で発射された核ミサイルは、日本にもその狙いを定めていました。
やがて着弾した核ミサイルで東京は一瞬の内に火の海にと化しました。衝撃で大地は裂け、紅蓮の炎に巻かれながら建物は融解し、世界は何も存在しない炎の荒野へと姿を変えました。
哀切極まり無く救いの無い壮絶なラストシーンを、熟練の円谷特撮が容赦の無い描写で見せ付け、その迫力と凄絶さに圧倒されました。

互いを滅ぼし合う自滅の道を歩んでしまった本作の人類ですが、このような愚かしい行為が実際に起こらないようにしなければなりません。
ですが昨今の世界情勢はそれを許すことのできないところにまで差し掛かっているように感じられます。日本国内でも戦争への道を歩んでいると見受けられるような動きが…。
緊迫した情勢は形を変えて、今も私たちのそばにあると思うと無性に恐ろしくなって来ました…。「平和を粗末にしちゃいけねぇ…」―主人公のこのセリフを今こそ噛み締めなければならない。

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しゅうへい

4.0観るべき

2014年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

名作ですね。
ラストのカタストロフに至る経緯はどうあれ、こんなラストを迎える可能性というのは今も無くなってるわけではなく。
救いようのないラストというのが実に強烈な印象を残します。

これがハリウッド映画だったら、「ひとりの男が立ち上がって世界を救う」のでしょうけど、そんなワケはなくて。

有名な火の海の国会議事堂シーンは、あまりに強烈です。
これを、庶民の目から見てるのが身につまされます。
庶民はどうする事も出来ずに受け入れるしかないという現実があまりにも切ない。

こうゆう映画こそもっと観るべきですね。
いい映画を観ました。

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ルチア
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