清作の妻

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

増村保造監督が若尾文子を主演に迎え、日露戦争下の農村を舞台に描いた異色の恋愛ドラマ。1924年に村田実監督も映画化した吉田絃二郎の同名小説を原作に、新藤兼人が脚色を手がけた。病気の父を抱える一家の生計を支えるため、隠居老人の妾となったお兼。やがて老人は他界し、遺産を手にしたお兼は故郷の村へ戻るが、事情を知る村人たちは彼女に冷たく当たる。そんな中、お兼は村一番の模範青年である清作と恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚。しかし日露戦争が勃発すると清作のもとにも召集令状が届き、愛する夫を失いたくないお兼はある行動に出る。

1965年製作/93分/日本
配給:大映
劇場公開日:1965年6月25日

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映画レビュー

3.0傑作か傑作ではないか

2025年1月30日
PCから投稿

終始 ものすごく重たい音楽が流れ、ものすごく暗く ゆっくりと物語が進む。そして そんな感じで終わる。これは一体何を描きたかったのだ?しっくりこないものが心に残った。駄作?・・ 最後に主人公の言う メッセージも口で言っちゃだめでしょう 。メッセージは心に伝わってくるものでないと。これは 私は失敗作の部類と思いますが ただ若尾文子がいつもと違う役をやってる点だけが 評価に値します
と、一回書いてみたのだが・・
この映画が作られたのが1965年ということが少し面白いと思った。 設定は 明治時代。 1965年まで田舎の村社会はこれと同じような状態だったと思う。当時はまだ村八分にされるということが、ほぼ死刑宣告 みたいな重みがあった。長老の命令は絶対で、例えば 寺を回収するとなると 「お前はいくら出せ」と命令だったそうだ。おそらく1965年当時は村のいじめ体質みたいなものがまだまだ強く、モラルやポリシーは褒められるものではなかったものと思われる。「 お前ら50年前と変わってねえぞ 」みたいな。これは そんな世の中に一石を投じたという意味では勇気ある作品であっただろう。 そして価値ある作品であったであろう。夫婦の愛とかを描いたように見せかけて実は村社会とか当時の一般人の人間性の低さ みたいなものを強烈に批判している映画かなと思った。

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タンバラライ

4.5泣き

2024年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

今明け方4時27分、見終わって急いでログインして放心状態で記録。
素晴らしい。かった。
上手くは言えないけれど、期待してみなかった分も、骨太な血の通った人間ドラマだった。
人間の描き方、チンケな人間ではない、大人の心、ストーリー。
清作も、その妻も、立派でした。
こう言う人間を描いた映画はなかなか観れない。
いつだって、どんなに立場が立派であろうと、姑息な浅い幼稚な人間が描かれる中で、
この二人は最後まで立派でした。
事件が恐ろしいことには変わりないですが。
なるほど、今の女優がタレントと呼ばれる理由がよくわかる。
上手くて賢く可愛いが、まるで羽のような軽さ。
結局は人間そのものの重さなのだ。存在感。
身体中にほと走る命を演じる若尾文子は、役者だ。
天才役者だ。

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ケシミンクリーム塗りながらオイルデル

4.0【”究極の夫婦愛。”哀しき人生を歩んできた女が、初めて自分を心から愛してくれた男の出征を阻むために行った事。今作は強烈な反戦映画でありつつも、究極の夫婦愛を描いた作品である。】

2024年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■苦しい家計を支えるため、老人の妾となっていたお兼(若尾文子)。
 老人の突然死を機に、お兼は多額の手切れ金を貰い家族の待つ村へ戻るが、村人たちの彼女を見る目は冷たかった。
 村の模範青年である清作(田村高廣)と出会い、2人は周囲の猛反対を無視して結婚した。
 初めての幸せな暮らしをするお兼。
 しかし、日露戦争が勃発し、清作に召集令状が届く。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・最近、頻繁に昭和三十年代から四十年代の邦画を見る。
 それは、令和のこの時代に配信で見れる昔の邦画は、何処か気品があり、作品としても深く、純粋に面白いからである。
ー でなかったら、配信で公開されないでしょう。-

■それにしても、今作は凄かった。
 若尾文子さんの渾身の演技に魅入られたし、(「青空娘」も面白かったが、芸風が広い方なのですね。)日露戦争開戦時の戦争に対する世相を見事に描いているからである。
 日露戦争に赴く青年たちに”死んで帰ってこい!”などと酔った高齢の村のオジサンが声を掛けたり・・。

■お兼を演じた若尾文子さんの、人々から虐げられつつ生きる姿。
 妾の地位を脱しても、村では歓迎してくれる人は誰もいない孤独な日々。
 そんな中、出会った清作は彼女を色眼鏡では観なかった。
 一人の人間として観てくれた。
 清作も同様で、彼女に心底惚れて行く。

<今作が衝撃なのは、清作が模範兵として、日露戦争に出征して行く姿と怪我をして一時的に戻って来るが再び出征する清作に対し行ったお兼の行動である。
 彼女は留置場に2年入れられるが、出所する。
 家に戻ると、お兼の行動により、盲目になった清作が待っている。
 お兼は”殺して下さい。私は一生も、二生も可愛がって貰ったから。”と清作に詫びるが、清作はお兼の首を閉めつつ、”独りぼっちの人間がどんなに悲しいか。お前が居なかったら、俺は馬鹿な模範兵、世間体を気にする阿呆だった。”と詫び、お兼を強く抱きしめるのである。
 こんな、ハイレベルな恋愛映画を見ると・・。邦画は昔から凄かったのだなあ。
 そして、若尾文子さんの渾身の演技には、素直に参りました、と思った映画である。>

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NOBU

5.0傑作。憎しみの如き男女の性愛。

2023年12月5日
iPhoneアプリから投稿

初見。傑作。必見。情念の突き抜けた先にもはや憎しみの如き男女の性愛の成就を過不足なく且つ強引に語りきる剛腕。白黒の硬質の美。こうまで演り撮られてこその大女優。先が見えぬ展開に固唾を飲む豊潤な映画体験。国家と村社会に飲まれ抗い敗れ失う力業の人間讃歌。これが映画だ。

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きねまっきい