素浪人罷通る
劇場公開日:1947年10月28日
解説
脚本は「龍虎伝」「壮士劇場」の八尋不二、最近「夜行列車の女」の脚本を小森靜男と共同執筆した伊藤大輔が、かつて「東海水滸傳」に稲垣浩と共同演出以来満三年ぶりにメガフォンをとり「闇を走る馬車」「田之助紅」の川崎新太郎がカメラを担当。「月の出の決闘(1947)」に次ぐ阪東妻三郎、「東京の夜」に次ぐ喜多川千鶴、松竹京都「母の灯」で映画にカムバックした片山明彦が主演し、守田勘彌が映画に初出演する。
1947年製作/81分/日本
配給:大映
劇場公開日:1947年10月28日
ストーリー
紀州平野村感応院の若い山伏宝沢は時の将軍吉宗の落胤と名乗り江戸への旅に出た。たちまち道中に噂が飛び、お世継ぎ実現を夢見る信者たちが足下に集まった。途中落雷のため気絶した宝沢は山寺に住む娘お千枝に助けられる。宝沢の素性を知った住職天忠は赤川大膳らとともに「徳川天一坊」と祭り上げて、お千枝の映像と将軍への夢を胸に刻んだ天一坊をもり立てて行列も物々しく江戸に向った。藤川の本陣を訪れた元九條関白家の浪人山内伊賀亮は、天一坊に対しかたくその暴挙をいましめたが、天一坊の本心が父にひと目会いたいだけの人の子としての純真な願望とわかり、伊賀亮は妻子と別れ命を賭して天一坊の悲願達成に一役買って出た。千代田城内では、天一坊の訴願事件をめぐって老中たちの論議がわいた。ただ一人意を決した老中松平伊豆守は南町奉行大岡越前守に天一坊めし取りの指令を発した。伊賀亮は単身奉行所に乗り込み、越前守に対し天一坊の真意を披瀝し、やがて将軍吉宗の心も動いたが「天下政道のため、公儀の権威のために」と強硬につっぱる伊豆守の反対にあいついに一切は水泡に帰す。翌日吉宗鷹狩り出門の時刻を期して、天一坊一味逮捕の大捕物陣が始った。折から来合せたお千枝の手をとって天一坊は逃げた。鷹野に急ぐ馬上の吉宗を天一坊はチラリと見た。そして一抹の安心と尽きない痛憤のうちに伊賀亮も捕われた。