砂の器のレビュー・感想・評価
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ハンセン病を描いた作品
前半はサスペンス、後半は犯人の生い立ちが描かれます。らい予防法の廃止は平成になってから。患者が受けた差別は決して忘れてはならない。
芥川也寸志の本気
映画史に残っているのだから、、、
世界共通の重さ
この親子がどのような旅をしたのか、私にはただ想像するしかありません
幸せを捨てた和賀の生き様に、代えがたいほどのエンパシーを感じた。そこまでするのか、そこまでしなければいけないのか。そう、それほどのことなのだ、と。
秀夫という過去を抹殺した和賀は、もう父に会うこともできない。加藤剛のその哀しみの表現が秀逸だった。今までは、和賀が父との過去をも切り捨てたのだと思っていたが、久し振りにこの映画を観て、名前を変えても父を忘れることがない和賀の気持ちがひしひしと伝わってきた。それは、父千代吉の態度からもわかる。二人は現在のお互いの立場を慮るがゆえに、他人の前ではお互いの存在を否定するのだ。お互いがお互いに、心の中ではかけがえのない存在であるからこそに。それを今西刑事が「彼はもう、音楽の中でしか父親に会えないんだ」と台詞で補う。今西は2人をよく理解していた。けして入れ込みすぎることなく、それでいて二人の心情に寄り添うように。
映画の作りとしては、今見返すと無駄も感じる。やはり冒頭は操車場での現場検証からのほうがすっと入れる気がする。秋田の出張は回想でもいい。全国を歩き回った印象を付けたいためか。緒形拳が登場してからさらに画面が引き締まった空気になったのは、さすが名作。
心が乾いてしまったら見る映画
もっとも最近見たのはいつだったか。2・3年前のなんばだったか、それとも高槻だったか。
今の若い人にはこの親子のたどった苦難の道は解らないだろうなあ。昔の日本の四季が今よりもっと美しく、そして人々の差別意識が如何にすさまじいものであったか(今も変わらないか。いや、今のほうがSNSなどを駆使して、自分の姿を見せずに安全なところから差別するからもっと陰湿か)。
重箱の隅をつついてこの映画をつまらないと語る人は、ラストで自分の子を知らないという父の心も解らないだろうなあ。
現代ミステリーの原点
名作に時代は関係なし。
まごうことなき日本映画の傑作。現代にも作られてほしいクオリティである。
ただ、何回も観ているので、気になるところが目立ってきた。
冒頭の東北出張がなんの伏線にもなっていない。あやしい人物がいたことになっているが、関係があったのかなかったのかも示されない。
映画館に掲示されていた写真のために、2日連続で映画館に行くか? 写真ならその場でいくらでも確認できる。他の作品では(ひょっとして原作?)、ニュースフィルムだったから次の日も観に行った、というのがあったが、そちらのほうが合理的。
内藤武敏はたぶん捜査一課長、または刑事部長クラスだったと思うが、捜査の進捗状況を知らなすぎ。
今西は、本浦秀夫が和賀英良だとなぜわかったか?
ピアニストが撲殺を選ぶか?
映画の価値は揺るがないので、どうということはないのだが、少し気になる。
あらためて、加藤嘉の芝居はすごかった。
涙無くして…
観ずに死なないでよかった
盛り沢山の贅沢な映画
映画でしか表現のしようのないものを表現した小説を超越した価値と意義がある本当の名作
4Kリマスター版で観ました
鮮明な映像はレンズの味だけでなく、不思議にもスクリーンに投影される空気感までを感じました
そして昭和の映画館の匂いまでも
なにより5.1chサラウンドでの音響が明瞭で宿命の音楽の破壊力が遺憾なく発揮されています
圧倒的な感動で号泣しました
日本人の琴線に触れる映画なのだと思います
国際的にこの感動を共有できるのかというと疑問です
海外の人々には何割も割引いてにしか分かってもらえないだろうと思えます
それでも良いのです
日本に生まれたということ、日本に育って生きているということ
その者だけが理解できる、まさに宿命の映画なのです
神がかっているとしか言えない見事な構成です
冒頭の音楽から、ピアノ協奏曲「宿命」の完成に向けて旋律が徐々に完成に向かい、終盤での初演奏で完結する物語です
その音楽の中に英良の回想、捜査の進展が全て内包されているのです
主題はあくまで放浪の旅の回想シーンにあります
そのシーンの日本の四季の中にある父子の困窮の姿こそ日本人の魂を震わせるのです
劇中に様々に編曲された宿命の旋律が、クライマックスに劇的に盛り上がっていくさまは正に交響曲です
問答無用の破壊力なのです
砂の器
それは何も入れられない
直ぐに脆く崩れさる形だけのもの
冒頭と劇中の映像表現もあまりにも美しく見事でした
日本人にとって永遠の名作でしょう
映画でしか表現のしようのないものを表現した小説を超越した価値と意義がある本当の名作です
なぜ殺したのか?
国立療養所に入ってから24年間、
息子にひと目会いたいというただ1点を望んでいたという加藤嘉が、
立派に成長した息子の写真を見せられたときの慟哭、
全身を震わせ「そんな人、知らねぇ!」と言い放つシーンは、
父子の放浪シーンの美しさ、悲しさ以上に心に残った。
どんなことがあっても絶対に手放したくなかった息子と
最終的に分かれる決心をしたのは、緒形拳から言われた
「秀夫の将来はどうなるんだ?」というひと言であったと思う。
そのときの、ハッとした加藤嘉の表情。
そこには、満足のいく養育はできないという意味に加えて、
ハンセン病患者の息子という業を背負わせたままでいいのか、
という意味があったのだと想像する。それで父は息子を手放した。
息子もそれを分かっていたのではないかなぁ。
だから緒形拳の家から唇を噛み締めて逃げた。
あそこにいたら「ハンセン病患者の息子」のままだから。
父に報いるためにも、それまでの人生を絶対に絶対に
捨てる決意をしたのではないか。
で、24年後。なぜ恩人である緒形拳を殺したのか。
しらばっくれたらよかったじゃない?
単にわが身がかわいい、利己的なヤツじゃない?
いやいやいやいや、そうではなく。
自分は何が何でも別人として生きなければならない、
つまりは、
「ハンセン病患者の息子」であってはならなかったのかなと思う。
父と息子の互いへの愛、思いとともに
映像では語りきれないほど当時の社会にあった
ハンセン病への壮絶な差別を想起させる。
以上、心揺さぶられる加藤嘉の名演より想像。
残念ながら加藤剛の演技からは特に何も感じられず。
緒形拳すばらしい。
渥美清、笠智衆、菅井きん、圧倒的存在感。
夏純子のホステス、春川ますみの女中も地味に深く心に残る。
主役?の刑事2人の演技には目をつむるしかない。
あれこそが丹波哲朗の味なのかもしれないが私には合わないかな。
映画音楽
日本映画において、ここまで映画音楽を効果的に使った演出は見たことがない。
過去回想シーンで流れるあの宿命。ただのメロディでもない、音楽の中で大きい波がゆっくりと、しかし激しく動く。彼の過去や感情と完全にリンクした宿命は、セリフが全くないシーンでも役者の代わりに語るようだ。
その演出は観客の心を動かし、どんどん映画の中へ引き込んでいく。演奏シーン、回想シーン、捜査シーンをうまくカットバックで演出している。
また映画そのものについて考えるとすれば、ハンセン病という難しいテーマと真っ向から向き合う映画でもある。
ただの犯人探し映画ではないのだ。
戦後の日本の問題が映画のそこら中に散りばめてあり、現代の映画には見ることができない映画である。
見終わったあと観客に問いかけるような演出も良かった。
日本映画最高峰の映画と言えるだろう。
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