「幕引きの寂しさ。」仁義なき戦い 完結篇 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
幕引きの寂しさ。
◯作品全体
前作の終盤で武田が「広能よりも刑期を食らうかも」と話していて結局仮釈放でバリバリ最前線にいるのは驚いたが、今まで第一線を張ってきた登場人物たちが少なくなり、松村を始めとする次世代の台頭が始まったことは武田たちの老いたビジュアルからも伝わってくる。2作目で大暴れした大友勝利が再び中枢にやってくるが、パワーバランスを理解した立ち振る舞いがあったり、村松の大人な対応に苦戦しているようにも見えた。山村や槙原は相変わらずだが、大局を動かせる力はもう無く、古参の皆は保身と去り際を気にしているよう見えた。
主人公・広能すらも旧態依然とした考えのもとで、結果的に若手の命を奪うことになる。広能からすれば自身の信念に則った行動なわけだが、収束に向かう行動ではないところがなんとも悲しい。村松にも理解を示しつつ譲れないところは頑として譲らない。
一方で同年代の市岡は攻撃的な活動をするが、同年代からも若い世代からも「時代遅れ」と見られているところに、武田たちと同じく「幕引きの寂しさ」がついて回る。
古参と若手のコントラストを、様々な立場から映すことで古参側の寂寥感の表現に繋がっているような気がした。ひとえにキャラクターの造形の巧さ、なのだと思う。
しかし、村松のキャラクターは少し潔白すぎるような気がした。トップのポジションにも執着せず、なぜそこまで幕引きに執着するのか。制作側の意図を汲んだ動きのような気がしてしまった。
虚しく寂しい幕引きはヤクザ映画の宿命だけれど、シリーズのラストカットの象徴である原爆ドームがさらにそれを強調する。一貫したキャラクターの描写力、そして一貫した演出。それが最後の最後に効いてくるのは、見事としか言えないラストだった。
◯その他
・松永は惜しいキャラだったなぁ。もっとフィクションをいれることができたら、ぜひとも再登場してほしいキャラクターだった。
・杉田の葬式のシーンはシリーズオールスター感があって良かった。大友の暴れっぷりを山守が自己流で収めるところとか、ニヤリとするシーンだったな。
・松方弘樹の芝居が坂井→藤田→市岡とシリーズを追うごとに変な方向に行ってる気がして面白い。市岡とか常時ヤバい表情してた。
・広能組の氏家、水上のコンビはもっと見てみたかった。