劇場公開日 1975年7月5日

「最も危険なゲーム」新幹線大爆破(1975) ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0最も危険なゲーム

2025年5月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

「君が乗っているのはSLなんかじゃない、新幹線だ。今、新幹線の科学技術と管理方法が本物かどうか試されているんだ!」

国鉄本社公安本部に入った一本の脅迫電話。内容は「東京発博多行ひかり109号に爆弾を仕掛けた」というもの。爆弾には特殊発火装置が仕掛けられており、80km/h以下に減速すると爆発するという。ほどなく、同様の爆弾が仕掛けられた北海道・夕張線の貨物列車が爆発し、脅迫電話が単なるイタズラではないことが判明する。警察に突きつけられた要求は身代金500万米ドル。ひかりには乗員乗客1500人が乗っており、国鉄運転指令長・倉持(演:宇津井健)は対応に追われることになる...。
この時代特有の少々安っぽいアクション系の劇伴を除けば、アナログの面白さを存分に味わえる作品。主犯格・沖田に高倉健を、国鉄の運転指令長・倉持に宇津井健を、ひかり109号運転士に千葉真一を配し、志村喬、丹波哲郎、竜雷太、田中邦衛などが脇役から特別出演まで様々な形で登場する豪華さには驚く。本作は内容の過激さから国鉄には撮影協力を断られた。そのためミニチュアと隠し撮りによってひかり109号の映像をカバーしているが、アナログだからこその実感を持ちながら観られたのは良かった。特に序盤の浜松駅での上り新幹線との交差のシーンはCGでは絶対に出せない緊張感だったと思う。
そして各登場人物に物語があるのが本作を単なるパニック映画の枠から解き放っている。会社の命令と自分の信念との間で苦しむ倉持、社会に見放されながらも「誰も傷つけない」犯行を遂行しようとする主犯・沖田。特に沖田による「誰も傷つけない犯罪は成立し得るか」というテーマが本作を骨太にしている。今回、リバイバル上映を劇場で鑑賞したが、上映後には拍手が起こった。
しかし、犯罪である以上は「誰も傷つかない」ことはあり得ない。ドラマ「古畑任三郎」でも本作と同様、誰も傷つけない鉄道ジャックを目論んだ犯人がいた。しかしそれは「暴力を振るわない」というだけのものであり、事件によって会社の人間は処分されたり、中には責任を感じて自ら命を絶つ者もいるかもしれない。果たしてそれで「誰も傷つかない」と言えるのだろうか(因みに「古畑任三郎」では「私はね、自分の犯した罪を罪と思わない人間・・・・・・・最も憎みます」とまとめられている)。
個人的には、叶わない願いと知りながら観てみたい話がある。主犯・沖田の前日譚である。これだけの頭脳と胆力を待ち合わせながら、何故彼は社会から見放されて犯行に至ったのか?その過程を追ってみたい。

ストレンジラヴ
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