忍びの者

劇場公開日:

解説

村山知義原作を「真昼の罠(1962)」の高岩肇が脚色、「乳房を抱く娘たち」の山本薩夫が監督した忍者もの。撮影は「雲右衛門とその妻」の竹村康和。

1962年製作/104分/日本
原題または英題:A Band of Assassins
配給:大映
劇場公開日:1962年12月1日

ストーリー

戦国末期。伊賀の国には高技術を誇る忍者が輩出した。その中に石川村の五右衛門がいた。彼は三太夫の配下に属する下忍(最下級の忍者)だった。その頃、全国制覇の野望に燃える織田信長は宗門め掃討を続けた。そんな信長に対し、天台、新言修験僧の流れをくむ忍者の頭領、三太夫は激しい敵意を持ち下忍達に信長暗殺を命じた。一方、三太夫と対立中の藤林長門守も信長暗殺を命令していた。その頃、五右衛門は何故か信長暗殺を命ぜられず三太夫の妻、イノネと砦にいた。彼女の爛熟した体は若い五右衛門に燃え上り、彼らはもつれた。が、三太夫は女中のハタに二人を監視させていた。五右衛門はその気配を覚りハタを追ったが、その間にイノネは三太夫に殺された。が、五右衛門は三太夫に信長を暗殺すれば罪を許すとささやかれた。五右衛門は京に出て信長を狙ったが、その都度、織田信雄、木下藤吉郎らに阻まれた。信長を追って堺に来た五右衛門は一軒の妓楼でマキという遊女と知り合い、彼女の純心さに惹かれていった。ある日、五右衛門はハタにめぐり合い、イノネが三太夫に殺されたことを知り、全てが彼の策略だったことを知った。怒りにもえた五右衛門は急拠伊賀へ帰り三太夫を面罵したが、彼は逃げ去った。五右衛門はマキと一緒に山中の小屋で日々を送った。ある日、突然三太夫が現われマキを人質にした。五右衛門は愛する者のため三太夫の命に従い安土へ走った。その頃、信長は豪壮な安土城を築き得意の絶頂にあった。折りからの築城祝いに乗じ信長の寝所の上に忍び込んだ五右衛門だが、信長毒殺は失敗に帰した。信長は急拠伊賀攻めを敢行した。三太夫の砦はすぐに包囲され、建物は炎上していた。が、忍者達は必死に戦った。信雄の采配が一閃した。と、一団となって砦になだれ込む兵達--。瞬間、五右衛門も砦へとび込み三太夫を探したが、情婦と共に死んでいる三太夫を見て愕然とした。何と長門守と同一人物だったのだ。山道へ走り出た五右衛門の顔ははればれと明かるかった。

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(C)KADOKAWA 1962

映画レビュー

4.0面白い!なる程シリーズ化されるのは当然の面白さ!

2020年7月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

市川雷蔵主演で第8作まで作られている しかも主演の市川雷蔵が病死してもなお、松方弘樹を東映から借りてまでシリーズ続行させているからそれも入れれば全9作になるほどの人気シリーズ 忍者もののマスターピースともいえる内容 荒唐無稽な魔法のような忍術は本作では皆無 あくまでも特殊技能としての忍術として描かれており、リアルさのある存在として描かれる 物語は伊賀の二つの忍者集団が、織田信長の暗殺を狙うというもの 市川雷蔵は石川五右衛門という名の下忍で登場する 初めは忍者の集団の中での栄達に希望と野心に燃えている青年が、あることから、ひとりの人間として行きたいと願うようなるのだが、非情な忍者の掟にがんじがらめに縛られてしまう その過程で、自らのの名を大盗賊の名前とする事態にもなるのだ 原作は共産党の機関誌赤旗の日曜版の連載小説 だから監督も共産党員の山本薩夫であるのは当然なように思えるが、本作は大映の製作なのだ 本作を映画化しようと企画したのは、大映社長の永田雅一だ 資本家の権化ともいうべきワンマン経営者だ 多分、共産党員に前売り券が売れるから、とかというつまらない計算によるものだろう しかしこれによって、山本薩夫監督はメジャー映画で再度活躍できることになったのだ 彼は戦後レッドパージで東宝を解雇され、真空地帯を独立プロで真空地帯を撮ったりしていたりしていたが、そのあとは続かず、そのまま細々と左翼映画を撮るしかなくなり、農村とかの中に埋もれようとしていたのだ その山本薩夫を、この映画には彼を使おうと、再度映画の最前線に復帰させ、商業映画そのものの娯楽映画をスターを使って撮らせた功績は大きい 本作が無ければ、後の白い巨塔も、華麗なる一族も彼が撮ることは無かったのだ 流石に才能ある大監督だけあって内容は濃く、それ程予算はかかっていないはずなのに大作のようなシーンまである 特に安土城のシーン、伊賀攻めのシーンは黒澤明にも負けない重厚さがある 美術は溝口監督に鍛えられたスタッフが担当しているから素晴らしいセットだ 物語は、赤旗連載小説らしく、共産党風に説明すれば、戦国時代の日本において、権力者により支配され、人間性を剥奪された圧政の下に生きる人間の解放の物語だから、山本薩夫監督も喜んで撮れる題材だ しかし、本作を穿って観ていると同じ物語が、実は共産党細胞の秘密工作活動の非情さを描いているようにも自分には観えてきた 穿ち過ぎだろうか?

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あき240