静かな生活

劇場公開日:

解説

両親の渡航中に起こる障害者の兄と妹の、波乱に富んだ日常を描いたドラマ。原作は、94年ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎の同名の長篇。監督・脚色は「大病人」以来2年ぶりにメガホンを取った伊丹十三。主演は「毎日が夏休み」で数々の新人賞に輝いた佐伯日菜子と、「復讐の帝王」の渡部篤郎。また大江の実子・光の作曲した曲を使用したのも話題になった。

1995年製作/121分/PG12/日本
配給:東宝
劇場公開日:1995年9月23日

あらすじ

絵本作家を目指すマーちゃんの家族は、作家であるパパと優しく家族を束ねるママ、大学入試を控えた弟のオーちゃん、そして音楽の才に恵まれながら障害者である兄のイーヨーの五人。ある年、家の下水を直そうとして失敗したパパは、家長としての威厳がないというプレッシャーに耐え切れず、おりから招かれていたオーストラリアの大学へ講師としてママと出向くことになった。留守を引き受けたマーちゃんは、イーヨーたちの面倒をみるのだが、痴漢事件やポーランド大使への意見運動、イーヨーの作曲した“捨て子”という曲騒動などが起こっててんやわんや。なかでもイーヨーの水泳レッスンにまつわる事件は、忘れ難いものとなってしまう。パパたちの出発後、マーちゃんはイーヨーを連れてプールに通うことになるのだが、そこでパパの昔の知り合いだという新井君が、イーヨーのコーチを買って出てくれるのであった。新井君の指導は良く、イーヨーの水泳の腕はあがる一方。さらには、イーヨーに彼の大好きなテレビの天気予報のお姉さんまで紹介してくれ、彼にすっかり気を許す。ところがパパやパパの友人の団藤さんたちから、新井君の暗い過去を聞かされたマーちゃんは、誰もいないところで新井君に会わないよう忠告を受けた。しかし、それが新井君の気に障り、団藤さんが大怪我をさせられたばかりか、純情なマーちゃんまで暴行を受けそうになる。だが、マーちゃんの純潔を汚そうとする新井君にイーヨーが飛びかかり、決して新井君に勝ったわけではないけれど、マーちゃんを守り切るのだった。パパの精神状態も安定した頃、そんな事件の数々を綴ったマーちゃんの絵日記に、イーヨーは「静かな生活」というタイトルをつけるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第19回 日本アカデミー賞(1996年)

ノミネート

主演男優賞 渡部篤郎
助演男優賞 今井雅之
音楽賞 大江光
新人俳優賞 渡部篤郎
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映画レビュー

3.5伊丹映画異色の作品

2025年6月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

知的

ドキドキ

1995年公開作品

原作は『飼育』の大江健三郎
監督と脚本は『お葬式』『タンポポ』『あげまん』『ミンボーの女』『スーパーの女』の伊丹十三

粗筋
著名な小説家である父はスランプ克服のためオーストラリアの森の中へ旅立ち母も同行した
小説家の家に残された知的障害者の長男とその妹と弟
長男はコーチをつけて水泳を始めた
妹はそれを見守る
水泳のコーチは過去に警察沙汰のトラブルを起こした人物であり妹を狙っていた

モデルは原作者大江健三郎とその家族がモデルになっているかもしれないがそのほとんどは勿論創作だろう

佐伯日菜子演じる長女のマーちゃんの視点で話が進んでいく

原作モノという点も影響してか伊丹作品としては異色な内容といえる
宮本信子が主演でも準主演でもなく脇役に徹している
パターン的にいえばママの役が宮本信子になると思うのだが演じたのは柴田美保子
初見当時は「宮本信子?じゃない!」と感じ戸惑った記憶がある

演技が特別上手いわけではないが端正な美少女ぶりが繰り出すホラー映画向きな顔ヂカラがたまらない佐伯日菜子
清潔感あふれる純白で完全防備なショーツを履いているものの開き直った感ある豪快なM字開脚にムッシュムラムラ(でもない)

渡部篤郎もいい味を出している
なかなかプールの水に潜らないやりとり好き

そういえば伊丹作品に端役でよく出ていた当時の人気AV女優の朝岡実嶺
懐かしい

ガセビアやジャックはまめーの人もそういえば出ていた

若い男が殺してしまった若い女をネクロフィリアしている真っ最中に発見され逃走の末に首を吊って自殺する冴えない中年男をイエスに見立てるのはあまりにもキリスト教を冒涜しているような気がするのだが寛大な処置で許されたのだろうか

配役
本当の名前は茜だが鞠のような頭で生まれてきたためそう呼ばれるようになったマーちゃんに佐伯日菜子
マーちゃんの兄で知的障害者だが絶対音感を持つイーヨーに渡部篤郎
世界的に高名な小説家のパパに山﨑努
パパに同行しオーストラリアに旅立ったママに柴田美保子
水泳のコーチの新井君に今井雅之
天気予報のお姉さんに緒川たまき
パパの友人でパパやママの留守中は3人の保護者代わりになっている団藤さんに岡村喬生
団藤さんの奥さんに宮本信子
マーちゃんの弟で理系の大学を目指す浪人生のオーちゃんに大森嘉之
茂みで幼女に性的悪戯をしていた水のビンの男に渡辺哲
マーちゃんと親しい近所のおばさんの朝倉さんに左時枝
パパの実家に住んでいるお祖母ちゃんに原ひさ子
亡くなったパパの兄の妻に当たるフサ叔母さんに結城美栄子
新井君が学生時代に同行したクルーザーで夫を水難事故で亡くした黒川夫人に阿知波悟美
新井君の事件を伝えるニュースキャスターに柳生博
近所の奥さんに柴田理恵
別の奥さんに川俣しのぶ
お巡りさんに高橋長英
下水屋さんに岡本信人
ハイヒールに注いだワインを飲み干す男に小木茂光
小説の中の若い女の子に朝岡実嶺
小説の中の若い少年に高良陽一
小説の中の男に三谷昇

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野川新栄

3.5物語の中の暴力を打ち砕くために

2025年4月15日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

怖い

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ねこたま

4.0主人公イーヨーを演じ、本作で世に出た渡部篤郎氏の熱演を観るだけでも価値はありますね。

2025年4月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷さんで開催されている「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K映画祭」(監督作品を毎週1作品、計10作品上映)も残り3作品、8週目。本日は『静かな生活』(1995)。

『静かな生活』(1995/121分)
監督にとっては高校の同窓で妹の夫でもあるノーベル文学賞受賞者大江健三郎氏の原作を映画化した本作。
高尚な印象で公開当時鑑賞をスルーしておりましたが、今回の4K映画祭で初鑑賞。

生まれつき知的ハンディキャップを負いながらも「絶対音感」はじめ音楽の才能に富む天使のような佇まいの兄・イーヨー(演:渡部篤郎氏)と、兄を献身的に支える妹・マーちゃん(演:佐伯日菜子氏)を中心とした家族や周りの人々の心なごむ日常を優しく描く作品、またはバリー・レヴィンソン監督『レインマン』(1988)のサヴァン症候群の兄レイモンド(演:ダスティン・ホフマン)のようなイーヨーの特殊な才能にフィーチャーした作品かとずっと思っておりましたが、然にあらずでした。

実際はイーヨーに親切に水泳指導する新井君(演:今井雅之氏)が保険金殺人の容疑者としての疑惑を晴らすため相談したイーヨーの父(演:山崎努氏)に逆に小説の登場人物としてさらに悪く描かれたことに恨み、マーちゃんを襲うなど、かなりセクシャルでサスペンス風、娯楽大作というよりはATG(アート・シアター・ギルド)のような作品ですね。
たぶん従前の伊丹映画の娯楽性を求めて劇場に足を運んだ観客は相当面を食らったことでしょう。
公開時の1995年はバブルも完全に弾けて世の中の空気もがらりと変わった時期、前作『大病人』(1993)で死生観や宗教観を描いて作家性を強めた時期でもあるので、今となれば本作を制作した事由も何となく理解はできます。
イーヨーを演じ、本作で世に出た渡部篤郎氏の熱演を観るだけでも価値はありますね。

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矢萩久登

3.5イーヨーの成長日記

2025年4月11日
iPhoneアプリから投稿

知的

社会的な事象や関心度の高いテーマをコメディを絡めて映像化した作品が多かったように思うが、本作品は視点を変えたような感じだ。
海外で暮らす父母から離れ、日本で兄弟3人での生活をスタートさせることによって、ハンディを持った兄イーヨーの秘めたる何かが変わる。
すったもんだの騒動を経験し、ラストでは「男、イーヨー」を目にすることができた。
イーヨー役の渡部篤郎はよかったが、妹マーちゃん役の佐伯日菜子は今イチ。感情表現が乏しく、台本棒読みのようだった。
原作を読んでみたくなったので、この後、本屋へ行こうと思う。

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ちゃ坊主